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異世界のカフェ

更新滞っておりまして申し訳ありません。後一ヶ月はグダグダ言っているかもです

肉屋のおじさんが紹介してくれた定食屋は朝からがっつり系のメニューが多かった。どうしようか…悩んで野菜の煮込みスープがメインの定食を頼んでみた。


気のせいかな?食堂にいる、人達からジロジロ見られている気がする。あ…もしかしたら私ってば、高貴な人っぽい?雰囲気を醸し出しているのかも…姿勢が良いのはダンスレッスンのお陰です。


「おまちどう!」


運ばれて来た定食は、野菜スープの他に肉団子と果物…それと揚げ物?と丸パンがついていた。


この世界に来て、街の定食屋さんで食事なんて初めてだ…匙を手に取り、スープを掬って飲んだ。


「…っおいし…」


ホッとする味だ、根野菜の味が口の中に沁み込む。肉団子も隠し味に複数の香辛料の味がして、癖になる辛味だ。揚げ物はモモガ(豚っぽい生き物)のトンカツだね!


量が多いかな…と思って心配していたがなんとか完食出来た。


今日はやることが多いから朝からエネルギーを補給しておかなくちゃね。


予想通り、定食の値段は木貨7枚だった。銀貨を出して銅貨9枚と木貨3枚のお釣りをもらった。


さて…まずは商業ギルドに行こうかな


商業ギルドとは、職業斡旋所〈職業安定所〉みたいな公共施設だ。ギルドが仲介して依頼を受けて仕事を斡旋して手数料を取る。仕事は、多種多様。自分に見合った職業をここから選んで見付けるのだが、まずは私の第一希望の“図書館司書”これを探したい!


定食屋を出て、商店街の中心部に向かう公所〈区役所〉の横に隣接している商業ギルドを見付けると中に入って見た。


「わあ…」


ギルドに入ったすぐ横の壁に貼ってある掲示板には〈緊急〉と書かれている魔獣の討伐要請の依頼が張り出されている。これは腕に自身のある剣士や魔術師用の依頼だね。え~と…私が見たいのは…販売員とか事務員とかの募集になるのかな?…ギルドの奥に入り、明らかに地味ぃ~な閲覧掲示板の方へ移動し、ゆっくりと見ていく。


「衣服…あぁアパレルショップの店員なんて駄目駄目っ…え~と雑貨屋も派手そう…あっ、あった…え?」


やっと図書館の館員募集の依頼を見付けたが、清掃員と…後は司書は紹介状が無いと駄目だと書いてあった。


「そんなぁ紹介状……無理だよ」


誰に紹介状を書いてもらえるのか…お父様も兄達には絶対頼めないし…


「本に囲まれていたかった…そうだ、本屋さん!」


慌てて、他の販売員募集の依頼を舐めるように見たが本屋の店員の募集はなかった。


「はあぁ……」


職安で目当ての職種が見付からない時に似てるな…あちらでも異世界でも同じような虚無感を味わうとは…


掲示板を前にして溜め息をついていると、私の横に誰かが立った。


横を見ると…割と厳つめのお兄さんだった。あの…この辺りはデスクワーク職が多いのですが?お兄さんぐらいの恰幅なら〈緊急〉の掲示板辺りが宜しいのでは?


すると、厳ついお兄さんは掲示板の空いているスペースに依頼書を貼り付けていた。


なんだ…依頼主の方なのか、どんなお店なんだろう?この恰幅の良いお兄さんは居酒屋みたいな飲み屋のマスターっぽい気がしたので、そんなお店かな~と、その依頼書を覗き込んでしまった。


「マリリカの夢?」


ん?スナックみたいな名前だね?この世界にスナックがあるのかが謎だけど、一杯飲み屋か、ショットバーかな?


私が思わず呟いたので、その厳ついお兄さんが私の方を見た。お兄さんは私と目が合うと、あからさまにギョッとしたような顔をした。


「お嬢さん……もしかして働き口を探しているのか?」


「あ…いえ、その…」


も、もしかそのマリリカの夢のホステスの勧誘!?無理無理っ!!接客業だよ?


オロオロしている間にお兄さんにガシッと手を掴まれた。


「一度うちの店に来てよ!ねっ?」


ひええええっ!?


そうしてオロオロしたまま連れて行かれたのは、商店街の大通りから一つ中へ入った所謂、裏路地に面する一軒のお店だった。


お店の外見はお洒落なショットバーみたいだけど、店先に置かれている看板を見て気が付いた。


「カフェ……茶菓子屋さんですか?」


「そう、うちはお菓子とお茶を提供するお店だよ!」


すみません、お兄さん。お兄さんが厳ついので、てっきり夜の店だとばかり思っていました。


お兄さんに促されて店内に入った。入った途端、お茶の香りと甘い菓子の匂いに包まれる。ふわ~っずっと深呼吸していられるわ!


店内はゆったりとしたスペースで二人掛けテーブル二席と四人掛けテーブル二席とカウンターがある、落ち着いた雰囲気のカフェだった。


「菓子類は俺が作ってる、飲み物は奥さんの担当なんだ!」


「えっ!?」


このお兄さんがパティシエ!?これまた意外な感じだ。シェイカーを振ってる方が似合いそうだ。


カウンターの横にはテイクアウト用のケーキ類の販売もしているのか、ショーケースが置いてあって、中にケーキ類が飾ってある。あっ果肉の乗ったタルト美味しそうぅぅ!苺っぽいね?苺味?


「まずは…菓子を食べてみるか?」


「あ…今は…」


さっき朝定食を食べたばかりでお腹は満腹だ…


するとお店の奥から、女性が出て来た。


「あら?おかえり~その子は?」


「ああっうちで働いてくれる子!」


ひえええっ!?いつのまに!?違う違う!


「名前は?」


「ローズべ……」


「ローズかっ!宜しくな」


お兄さん!?話を聞いてぇぇ!


「あ…の…む…」


「ええっ本当!?やったぁ!」


奥さん?が私の否定の言葉に被せる様に声をあげてしまった。


「ねえねえ座って!うちは厳しいことは言わないし、女の子には働きやすい環境だと思うのよ。それに今はちょーーーーっと表通りの〈ラクラの木〉にお客を取られてるっぽいけどあなたが働いてくれたら盛り返すのは時間の問題だと思うのね!あなたの美貌でやってやるぜ!と思ってしまうのは〈ラクラの木〉みたいで気が引けるけど、味はうちの方が断然美味しいし、バードの作るお菓子は一級品だし、絶対勝ち目はあると思うのね!」


く……口を挟む隙が無かった。奥さんの怒涛の話術に押されて、椅子に座らされて目の前に苺?タルトとお茶を出されてしまって、目の前にご夫婦が笑顔で座ってしまってて…逃げ場無しだった。


今更ここで、バイトはしません、接客業は苦手です。と言い出せるほど根性がある訳で無いし、元々口喧嘩とか言い合いでは絶対に争えないし…つまりはご夫婦の話に頷いてしまった訳だった。


「あの…さきほどから話に出ている〈ラクラの木〉というのは?」


私が奥様に尋ねるとご夫婦はキョトンとした顔をしてから同じような角度で顔を傾けた。


「あら?知らない?今、結構有名なお店なのよ?表通りに店を出していてね…あ、見に行く?」


見に行った方がいいのかな?すでに腰を浮かせた奥さんが、私を手招きしたので旦那さんのパティシエのバードさんに見送られて、奥さんと表通りに出た。


「こっちよ、ほらすでに行列が出来ているでしょ?」


奥さんが指差す方向を見ると…まだ商店街の開店時間が少し経ったくらいなのに、確かに表通りの一角に行列が出来ている。


奥さんと二人でその行列に近付いて行って…違和感に気が付いた。


「あの……その〈ラクラの木〉というお店はどういう職種のお店なのでしょうか?」


「ん~うちと同じ茶菓子店よ」


私は行列に並ぶ面子を見て…やはり違和感が増してきた。


「茶菓子店に…男の人ばかりが並ぶものでしょうか?」


私が聞くと、奥さんは目を光らせた…ように見えた。


「そうよっそうなのよ…それには秘密があって…見て!」


奥さんが再び行列の先を指差したので、指差した先を見るとどこからか現れた女性が行列の先頭に立って声を上げていた。


「お待たせしましたあぁ~今からラクラの木を開店しまぁ~す」


並んでいる男性達から何故か、歓声が沸き起こっている?


声を上げた女性はラクラの木の店員なのだろうか、城のメイド達が着ているような露出の少ないロングドレスを着ていた。


はは~んこれアレだ、異世界の〈メイドカフェ〉なんだね?それにしちゃ、メイドの格好が地味地味だけど…


動き出した行列を横目に奥さんと私は〈ラクラの木〉の店内が見える路地裏に入ると窓からコッソリと覗き見てみた。


ラクラの木の店内は可愛らしい内装だった。そして給仕をしているのは、全員若い女性。お茶やケーキ類を運び、二言三言、男性客と会話をしてから席を離れている。


ふーーーん、益々メイドカフェっぽいけど、


「〇〇くんのケーキに〇〇の愛をいれちゃうぞ♡美味しくな~れLOVE注入!」


とかはしないんだな?


「ねえ、見たでしょ?ああやって女性が如何わしい給仕して男性に媚びを売って客を呼び込んでるのよっ!」


あれで媚びっていうか、エロイサービスだと思うの?


あ……そうか異世界じゃ貞操観念が固いものね。ホステス、キャバ嬢という職種は無いのかも…そこを飛び越えて娼館があるから、あれは違うもんね。


なるほどなぁ、如何わしいけどギリギリ風営法に引っ掛からない程度のお色気で男性客を取り込んでいるのか。


あんなのをお色気サービスのカテゴリーに入れてしまうのは、元異世界人としては鼻で笑ってしまうけれど。


「だから、うちもあなたという即戦力を手に入れたので、是非とも巻き返しを図りたいのよ!」


「えぇ!?」


私にアレと同じことをさせようというの?


あんなので、男性客がよろめくのが全然理解出来ないけど…う~ん。


「別に私じゃなくても、ドレス丈を短くして…来てくれてありがとう♡とか言って笑顔で接客すれば大丈夫じゃないでしょうか?」


「…ドレス丈?」


奥さんが怪訝な顔をして私を見ている。


この世界でドレス丈を短くしているのは娼館のお姉さん達だけだ。だが、あんな煽情的な衣装にしなくても、いくらでもやりようがある。


本当は〈メイドカフェ〉に対抗して〈執事喫茶〉をしたほうが良いのだとは思うけど…


私は奥さんとマリリカの夢に戻り、メイドカフェを思い出しながらドレス丈と接客の仕方を説明した。


「まあぁ!!いいわねっ是非それでローズちゃんもお店に出てよね~ねっ?ねっ?」


アレ……?いつのまにか私がお店に出ることになってるの?


「あっえっと、私…帰ります!失礼します!」


何とかそれだけを叫ぶとマリリカの夢を飛び出して、急いで逃げた。


陰キャの精一杯の抵抗だった…

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[一言] 本日もさいこーでした お疲れ様です(`・ω・´)ゞ
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