はじめての、、、
ネタ、、、ネタはいずこに、、、
「なぁこれ、お前がやったのか」
すまんキョウジュウロウ。俺の中のチート野郎に仲間入りしたお前だが、すぐに変わりそうだ。
真後ろから聞こえた、艶のある声。その声色とは裏腹に、世界が止まったような衝撃を受ける。左に下げた剣に手を当てながら、ゆっくりと後ろへ振り返る。
「なぁ聞いてるか?これ、お前がやったのか?」
そこにいたのは、絶世の美女だった。少し黒い肌に、黒い髪、少しキツそうな印象を受ける目、胸元が見えるような和服に近い服を着た、絶世の美女だ。
だが一番目を引いたのは、額の部分にある一本の力強い角だった。
「やった、とは?」
「どう考えても社をこの状態にしたのはお前かって意味だろ」
落ち着け、落ち着くんだ。まだ死ぬと決まったわけではない。この圧にも、殺気があるわけではない。殺意がある訳じゃあない。
相手の目を見ながら、しっかりと言うんだ。ほら、言え!
「そうだな、そこにいた男を女性のところまで連れてったのは俺だな」
「そう、か、、、」
分からん!ヤバい分からん。あれって怒ってるの?怒ってないの?怒ってなかったら今すぐにでも踊り出したい。ヤバい怖い。マジで怖い。いや怖くはないんだけどこの感じはマジで嫌だ。あれだ。特に心当たりないけど滅茶苦茶怖いと噂の先生に呼び出された時の感覚だ。その上にキョウジュウロウ以上の圧倒的な存在感がプラスされてもうヤバい。何か言って、頼むから。無言はやめて。お願いだからぁ!(心の声)
「おい」
「はい!」
思わず左手で剣を強く握る。どうする?くるか!?
「ありがとう」
「ほへっ?」
予想外の答えに思わず変な声が出た。どう言うことだ?何がありがとうなんだ?
「コイツらは友達、いわゆる戦友なんだ。かつての戦でこうなっちまったが、そりゃまぁよくいちゃつくお似合いの二人だったよ。あぁ、懐かしい、コイツら含め、よくみんなで酒を飲んだ。それなのに、こうなっちまった」
妖鬼妃・ユラは懐かしむように社の方を見た。どこか遠くを見るような目で。
「あれは私達ではどうにもならなかった。私達じゃ駄目なんだ。もうあいつは、モンスターに対して敵対しか出来なくなっていたから。雫が自分をまって死んでいったことも気付かないで何百年も社を守り続けるあいつの姿はあまりにも哀れだった。だから言っておく。ありがとう」
「、、、」
妖鬼妃・ユラからは分かりやすいほど感謝しているということが分かった。威圧感はそのままだから、若干怖いけど。
「いや、俺はあいつが刀を届けてくれとかふざけたこと言ってたから雫さん?って人の前まで抱えていっただけだよ」
手をヒラヒラさせながら新しいタバコを咥えて火をつける。タバコの減りが恐ろしく早いが無視だ無視。
「、、、」(スッ)
すいませーん。無言で煙管を出さないでくださーい、こわいでーす。こっちはあなたが動く度にビクビクしているんで~す(心の声)
「、、、」(スタスタ)
無言でこっちに来ないでくださーい。お願いしまーす。ごめんマジで来ないで。怖いから。(心の声)
「、、、」(トスッ)
横に座らないでくださーい。こわいでーす。マジで。頼むから。俺のそばに近寄るなぁぁぁ!(心の声)(迫真)
「、、、火、分けてくんね」
「、、、ほい」
こっわっ!マジこっわっ!何なのマジで何なのマジで!滅茶苦茶怖いんだけど。普段ならこんなん喜んでやるけど横の人すごい圧持ってるんでる!圧を一切消さずにこっち来るんです!
この距離多分必殺の間合いなんだ。これから殺されるんだ。ヤバい俺のリスポーン先って何処だったっけ?思い出せない、、、。
「あんまビビらないんだな」
「そうだな」
何処がだよ何がだよ!ビビってるわ怖いくらいビビってるわ!あんま顔には出さないけどかなりビビってるわ!はい!深呼吸深呼吸!タバコを深く吸って~吐いて~。やっべぇ序盤の雑魚キャラみたいになってきた。
「名前は?」
「ホオヅキ」
隣が煙管を吸い、吐く。違う種類のゲームならナンパポエムの一つや二つは簡単に出せるような、そんな、様になった、整った顔や、階段に向ける長い足、漂う甘い匂いは、今の緊張感を和らげるには、十分な効果を持っていた。
「まぁそれは別として」
煙管の灰を捨て、妖鬼妃・ユラは立ち上がった。そして、社の方へと歩いていく。嫌な予感が、緊張感を連れて戻って来たような幻覚を煙の中に見た気がした。
「私の立場から言えば、永年哀れな事になっていた友達を救ってくれたお礼と、戦友達を倒したお礼をしなくちゃならない訳だが」
どういう訳だよ!とツッコミたいところだが、意味を理解できてしまった。この考えなら、筋が通る。中学の時に捨てた感情がわかると言っている。
「要するにだ、私と戦え、ホオヅキ」
例え結果的に友達を助けた奴だとしても、友達を殺した事はチャラにはならない。それは決して、無かったことにしてはならない。
今までとは比較にならないような圧が降りかかる。放っているのは、目の前にいる絶世の鬼。頂点たる【八皇】が向ける、確かな殺意。
「、、、いいぜ」
タバコを深く吸い込み、吐く。そして、上へと投げた。ユラもこの意味が分かったようで、少し微笑む。
タバコが宙に舞う
左手に剣を持つ。剣での抜刀は得意ではないが、今の状況でやることはこれしかない。
タバコが落ちてくる
息が浅く吐き出される。足が開かれ、自然と構えをとり、力を溜める。
タバコが地面に近づいていく
対するユラは自然体だ。手を少しだけ曲げているが、その姿からは凛とした気配を感じる。目は、確かに俺を捉え、喜んでいるようにも見えた。つうか絶対テンション上がってる。
タバコが落ちた
瞬間、爆ぜたような音だけが残る。
位置が入れ替わるようにして、俺と妖鬼妃・ユラは立っていた。剣を鞘におさめる。今出来る最大限の事をした。それでも、これだ。
ステータスを見るまでもなく、HPは、0だ。足元からポリゴン状になっていく。消える前に、ユラの方を向く。
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ユラは、驚いていた。今まで、多くの旅人と戦ってきた。その度、実の所、落胆しかしていなかった。大勢でやってきて、話も聞かずに、襲いかかってくる。獣か何かと勘違いしているのかと思ったほどだ。たまに、上手いこと集団で襲いかかってくる奴らもいたが、すべて一瞬でけりがついた。
時間で表すなら、この男も似たようなものだ。正直、最初見た時、強いとは思わなかった。キョウジュウロウを倒したとは言え、それは死体だ。朽ちて、脆くなった、かつての友。全盛期の半分ほどの力も出せない、弱くなってしまった友。それを倒したかといって、そこまですごいことではない。それこそ、集団で襲いかかってくる奴らでも、頑張れば倒せるだろう。話している時も、中々に胆力が有るとは思ったが、その程度だった。
だが、立ち会えば違った。タバコが落ちる一瞬の間、確かなまでの気配、言うなれば、強者だけが出すことが出来る、確かな重み。勝てはせずとも、相手を切ると思わせる確かな決意。今までの旅人とは違う、磨かれ、研ぎ澄まされた技の圧。付け焼き刃ではない、本物の目。
「この私に、刀を抜かせたか、、、!」
思わず使ってしまった愛刀。刹那で抜かれた両者の刃。先に届いたのはユラの刀、首を切り、その先の空間をも切り裂いた(すぐに戻った)。そのあとに届いたのは、ホオヅキの剣。首を切られた時点で、このゲームは攻撃力がなくなる。よって、ユラが受けたのは首をなでる衝撃のみ。
ホオヅキの方を見る。ホオヅキは旅人特有の死に方をしている。そして、こちらを向くと、満足そうで、されど悔しそうに、笑っていた。口だけが動く。間違いでなければ、「また」、と。
ユラはそのポリゴンに向かって思いっきり愛刀を振り抜いた。とどめをさす為ではない。やっと見つけたまともに闘えそうな男に、自分が分かる目印を付けたのだ。
「ホオヅキ、ね。おぼえとこうか」
煙管に火をいれ、ユラは呟く。
その声は、誰もいない境内に、よく響いた。
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「ここかぁ」
その頃、広場の噴水にリスポーンした俺は、背もたれがないことを忘れ噴水に落下し、串焼き屋のおっちゃんことジルに大爆笑されていた。
暗い部屋で椅子に縛られ後ろから首に向かって段々とナイフが近づいてきている中闇のゲームが始まってもプランを立てられるくらいには胆力がある(ゲームの中に限る)
現実だとファミレスでヤンキーに絡まれても文句言うくらい。




