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修羅場を越えたら現実世界の隠れ属性がカンストした件 〜お人好しのダメ男の元に、なぜかワケありな人が集まってくるんです(泣)〜  作者: 黒潮かんしゃ


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朱田波美編・第6話:お家ハロウィン当日

お家ハロウィン当日。待ち合わせは、いつもの19時ごろだ。


その少し前には、私と舞ちゃんの仮装はもう仕上がっていた。私の衣装は、頭にサメの被り物、青色のタートルネックのシャツ、濃い色のジーンズに青い靴下。イメージは「デブなヨシキリザメ」である。


ヨシキリザメ(葦切鮫)は、メジロザメ科に属するサメで、その鮮やかな藍青色の背中と美しいフォルムから「世界で最も美しいサメ」や「ブルーシャーク」と称されている。日本国内で最も漁獲量の多いサメであり、気仙沼などで水揚げされ、フカヒレや練り製品の原料として日本の食文化を深く支えている存在だ。


自動車で例えるなら、ジャガーEタイプといったところだろう。皆詳しくは知らないだろうが、かまぼこを食べたことのある人なら、絶対にお世話になっているはずである。


舞ちゃんには、サメのぬいぐるみを背中に背負ってもらうことにした。イメージはコバンザメである。コバンザメは、サメやクジラ、ウミガメ、ジンベエザメ、マンタといった大型生物にヒッチハイクして暮らしている。


まぁ、そんな感じの二人だった。


ソフトドリンクとお菓子は、事前に購入して冷蔵庫に入れておいた。


予定の時間を少し過ぎた頃、マンション玄関のピンポンが鳴った。


ピンポンの音に反応してしまうパブロフの犬、舞ちゃん。火が付いたように吠えるので、デブなヨシキリザメは舞を片手に抱きかかえ、ドアの鍵を解除した。


目が合う二人。ちょっと引き気味の朱田さん。


気合を入れて挨拶をする私。「ト、トリックアトリート、、泣く子はいねがー!」——なまはげの決まり文句を繰り出してしまった。


かなり引く朱田さん。すごすごと、いつもの小さなテーブルがある部屋へ戻る私。鳴き止む舞ちゃん。いつもの静かな部屋に、「お邪魔しまーす」と朱田さんが入ってきてくれた。


「まっ!お掛けになってお菓子とドリンクをどうぞ」


私と舞の気合に押されていた朱田さんだったが、「ちょっとびっくりしただけだよ」と言ってくれた。


談笑している最中、さりげなくネームプレートを一枚差し出し、「朱田」と名前を書いてもらった。


魂の制服コスプレには、実はちょっとした小物を仕込んである。全部で2つあるのだが、今はまだ一つしか明かせない。シャツに安全ピンで留める、あのネームプレートである。これだけで、リアリティが爆上がりするのだ。


しばし談笑し、いよいよ本題。朱田さんが隣の部屋で、あの制服に着替えることになった。


隣の部屋から出てきた朱田さん。私の目には、彼女から光がほとばしっているように映った。水族館のマグロ水槽で見た横顔よりも、ずっとキラキラしている。


(オスミウムクローの呪いが重くのしかかる、本格的な重い頭痛だ)


なんで今日に限ってオレンジの眼鏡なんだろう、と思ったが、よく考えたら、あの出会った夜も同じオレンジの眼鏡が曇っていたのを思い出した。そのダサさが逆に良かった。私のマンションにJKが存在しているみたいで、頭が混乱していた。


「写真、撮ってもいいですか?」と、携帯を取り出しながら尋ねてみる。


「ダメでーす」


ちょっとだけ、シュンとする私。(脳のズキズキは、まだ続いている)


テーブルに置いていたノンアルコールビールを一口飲み、気持ちを落ち着かせる。不思議なことに、アルコールが入っていないはずなのに、なぜか酔っているような感覚があった。


雑談を続けながら、私は言ってみる。「朱田さん、イケるイケる。そのまま学校に行って授業を受けられるレベルですよ(笑)」


「ちょっと、照れくさいですょぉー」


もう、すっかりキャバクラごっこのようなお家ハロウィン会だった。何を話していても、まるでキャバクラにいるような感覚が続いていく。


酔っているような感覚を覚えつつ、頭痛と格闘していた、その時。何かのスキルが立ち上がった。「パラレル思考(きわめて高度なごっこ遊び)」の演算が、静かに始まった。


だが、演算が発動しようと、業には勝てない。緊張も、頭痛も、酔ったような感覚も、鎮まるどころか、じわじわと負荷を増していく。


朱田さんのネームプレートを、目を細めて見つめる。なんとなく、「朱田」の字が違う漢字に見えている気がした。


演算が加速する。さらに加速する演算。


メガネのフレームが、なぜかピンク色に見えてきた。


さらに演算に負荷をかける。


もうその頃には、朱田さんが何かを話しているのだけれど、空返事しか返せない状態だった。


はっきりと像を結んだ演算の向こうに——「香織」という漢字が、読めた。


登り詰めた、絶高階層に到達した。


その時、朱田さんがプリーツスカートのポケットから、何かを取り出した。


「なんかポッケに入ってましたよ」


差し出されたのは、もう一つの仕込み——紅白のはちまき。


バチコーンッ!!!


脳内で、何かがはじけ飛んだ。


雪が降る少し前の季節、2stエンジン・チャンバー仕様のバイクで、長い下り坂を全開で駆け抜けていく感覚。ニューロンが踊り狂い、シナプスがミスファイヤしている感じだった。


もう耐えられないほどに頭が痛い。クローが、こめかみを突き抜けている状態だった。


朱田さんに、ニコッと笑いながら、うんうんと頷くことしかできなかった。


何かを察したように、朱田さんは紅白の鉢巻きを、サメの被り物の上から結んでくれた。


限界を超えた。越えてしまった。負荷がかかりすぎた。私はその場で、テーブルに突っ伏してしまった。


「大丈夫?」と声を掛けてくれるのだが、あまり聞こえない。私は、「うんうん、大丈夫だから、、」としか言えなかった。


意識を失った。


というか、しばらく眠っていたらしい。目を覚ますと、テーブルは綺麗に片付けられていて、隣の部屋には畳まれたコスプレ衣装。PCデスクの上、レシートの裏に、綺麗な字でこう書かれていた。


「帰ります」


(続く)


【ステータス更新】

限界まで抗って、それでも倒れてしまうのは、恥ずかしいことじゃないよ。

隠れ属性「まじ限界キャパ超えして脳みそ溶けそう」耐性、上昇。とりあえず充電しときなー。復活したらまた進んじゃお!

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