1話 異世界転生
異世界に転生して、グロリア侯爵令嬢として育った。そして、私の婚約者である第一王子バッカスは、学園内で浮気していた。
「グロリアが嫌いになったってわけじゃないけどさあ。グロリアだけと恋愛していたら飽きるじゃん。だから、俺が他の女を作るのは当たり前だよなあ。俺は第一王子なんだからさあ、愛人くらいたくさん作ってもいいだろ。まあ別に、正妃はグロリアになるしさ。俺と正妃の子どもにしか王位継承権は発生しないし、それでいいじゃん。ああでも、一応は法律に則って、成人同士でしかいかがわしいことは行わねえから。だからさ、俺は女達と遊び続けてもいいだろ」
バッカスはそんなことを言っていた。悪い意味でプライドの欠片もない、自由奔放で飽き性な男性だった。まあ、バッカスにもプライドはあるのかもしれないけれど、誇り高い行動なんかしていなかった。バッカスは立場的に、舐められて困ることも少ないからかな。
というか、キスでも感染症にかかることはあるのに、バッカスが浮気しまくっていて困る。バッカスが感染症にかかったら、私にまで移されそうだ。しかも、この異世界に感染症の検査や治療なんて、ほとんどないし。
でも、バッカスは第一王子だ。そんな立場の人間に、私は下手に逆らうことができない。
「かしこまりました」
だから、私は素直に応じた振りをしていた。内心はイライラしていたけれど、必死に我慢した。
私はバッカスを怒れない代わりに、バッカスの浮気相手の女性達を恨みたくなった。でも、バッカスが無理矢理強要して、相手をさせられている女性も多かった。
だから、とりあえず自分が我慢していたらいいと思っていた。でも、そう甘くはなかった。
「おいっ。グロリアはエミリーをいじめて遊んでいたらしいなっ。グロリアがエミリーに送った手紙は、針が仕込まれていたとか。学園内でグロリアがエミリーを階段から突き落としたとか、色々聞いているぞっ」
とある日の放課後、教室でバッカスがそんなことを言ってきた。バッカスの横には伯爵令嬢エミリーが立っていて、泣き真似をしていた。
「私はバッカス第一王子様とイチャイチャしたいだけなのに。どうして、こんなことになってしまったのでしょうか」
エミリーはそんなことを言っている。バッカスに婚約者がいると知った上で、エミリーはバッカスと浮気しても問題ないと思っているのか。まずそこから意味不明だよ。
そもそも、自分はエミリーに何もしていない。私はエミリーとまともに話したことさえ、ほとんどなかった。
「私はそんなことを行っていません。冤罪です。しっかり調べてください」
私ははっきりと言った。けれど、バッカスは聞き入れてくれなかった。
「かわいいエミリーが嘘を言っているはずないだろっ。エミリーを疑うだなんて、グロリアは悪女に違いない。兵士共、グロリアを王城地下牢獄へ連れて行けっ。グロリアを幽閉したあと、公開処刑にしてやるっ」
バッカスがめちゃくちゃなことを言い出した。バッカスの発言がおかしいと、周囲のみんなも分かっているはずだ。生徒達も兵士達もそうだと思う。
でも、第一王子バッカスの命令に逆らうだなんて、兵士達にはできない。そもそも、学園内に兵士を配置していること自体、バッカスのワガママによるものだ。バッカスが入学する前の学園内に、警備員は多くいたそうだが、兵士はいなかったという。
「かしこまりました」
兵士達は返事をして、私を連れていった。そして、自分は王城地下牢獄へ放り込まれた。
ただ、私が冤罪だと明言したことにより、学園がエミリーの調査を行ったらしい。そして、エミリーが嘘をついていたと発覚したそうだ。
「グロリアッ。お前のせいでエミリーが嘘つき呼ばわれされて大変なんだっ。エミリーを庇った俺も、周囲から責められているんだぞっ。俺よりも第二王子の方が次期国王にふさわしい、なんて言われ始めて困っているんだよ。俺に迷惑をかけるグロリアが許せないっ。グロリア死ねっ」
バッカスがそう言ったことで、私の処刑は強制的に実行されたけれどね。悲しいな。もう少し生きていたかった。
でも、思いがけないことが起きた。私の次の転生先も、侯爵令嬢グロリアだったんだ。
いや、転生ではなく、タイムリープだろうか。死に戻りと呼ぶべきなのかもしれない。
「なんでこうなったんだろう。神様のイタズラかな」
分からないけれど、どうしよう。私は何をすればいいんだ。




