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第六話 本当の友との別れ

 その待ち、雷太は相変わらずクーラにセクハラをし、今度は風音に手の甲にフォークを刺された。

 一連の流れで手に包帯を巻きつけ、雷太は左手で顔を支えながらこあに質問する。

「最近思ったんだがよ、急に俺に構うような感じになったよな」

「……風音さんにお礼言ってくださいね」

 拍子抜けしたような表情で風音を見た。

「ん? ああ、うちが説得したの。何たってこあちゃんのお兄さんだから!」

「それは分かった。だがよ、こあに優しくする理由も分からない」

 雷太の肩を思いっきり何度も叩く。多少痛かったが、言うべきシーンでもなかったと感じたので、とりあえず痛いのは流す。

「いいのいいの! ほら、久しぶりに妹と一緒にいるんだし、今を楽しもうよ」

 クーラがこあの元に寄って、料理を手伝い始める。太陽は携帯をいじるのをやめ、真顔のままサングラスを鈍く光らせた。

「流石姉貴と言った所だ……さて、見た所能力のパワーは僕以上だが、超能力は本体のパワーがあれば良いってもんじゃない。事情は知らないが、少なくとも体力を鍛えるべきだと思う」

 不機嫌そうな表情になる風音。さっき教えたでしょ、と言いながらフィッシュ&チップスを食べようとして、元の場所にしまう。

「忘れてたぜ。まあ、とにかく飯食ったら海に来い」

「分かった」

 こあが首だけ雷太達の方へ向ける。

「もう少しかかるので、先に行ってても良いですよ。存分に海で暴れてきてください」

「助かる。じゃ、お前の兄貴借りるぜ」

 半ば強引とも言えるが、二人は海へと繰り出した。





 時間は正午前。天気も良好で雷太と太陽はお互い向き合っていた。

 海水が砂をいたずらに引っ掻き、引き込んだり戻したりする。

「まず聞きたい事がある。運動の経歴は?」

「無い」

「……おおう、妹はしっかり鍛えてるのにな。とりあえず置いておこう、よく分かった。じゃあ今日は腕立て伏せと腹筋と……」

 ずらずらと運動メニューが口頭で並べられる。半ば居眠りしながら聞いてた雷太は鼻提灯を作る。最終的にメモを渡されて。

「消化するまで帰らせないぜ」

 どうして運動するのか分からないまま、ドクターグレーに復讐する為にも自分に鞭を打つと心に誓う。

 適当に軽く食事を取りながら、消化仕切った頃には夕暮れ。二人とも泥だらけになりながら、雷太の自宅へと帰宅する。

「遅かったですね。作りすぎたんですけど、全部食べてしまいました」

「食べたのかよ!」

 食料も無いみたいなので、仕方なく我慢する事にした。

 突然の風音の提案でお泊り会をする事に決まり、部屋割りをこあの独断と偏見で決まった。

 一組目はクーラとこあ。二組目は風音と太陽。雷太は何故かリビングのソファーへ。

「せめて布団で寝かせてくれよ!」

「だめです。クーラさんはお客さんですし、風音さんをお兄さんと寝かせる訳には……というわけで我慢です」

 一人納得しないまま、各々解散。ソファーにあぐらをかきながらテレビを黙って眺める。

 しばらくして、髪を下したクーラが雷太の隣に座る。

「どうしたんだよ。俺は機嫌が悪いから胸触るぞ」

「勝手にして。とにかく、私思いついた事あるの」

 適当にチャンネルを回し、黙って聞く。

「自分って口寄せの能力あるでしょ? だから、聖剣エクスカリバーを口寄せしたらどうなるのかなって」

 そもそも口寄せの能力がある事を知らなかったものの、それも黙っておく。

「なら今ここで口寄せしたらいい」

「じゃあ、やるわよ」

 クーラの周りを一瞬ほのかな光が包むが、すぐに消える。しかも、何も口寄せはされなかった。

「そんな物は無い、という事だな。やっぱり努力しないとダメだ」

「ううう。いい案だと思ったのに」

 雷太が追い払う仕草をして、クーラをこあの元へと返した。

 すると、いきなりテレビが壊れた。

 焦って部屋の電灯をつけると、降ってきたであろう聖剣がテレビを真っ二つに切り裂き、ただ付属されている赤い宝石がキラキラを輝く。

 急いで家の中にいる人間を全員呼び出す。得意げな表情を浮かべるクーラと、何が起こったのか分からなくて困り果ててるクーラ以外の人間。

 沈黙が包む空気を風音が切り裂く。

「聖剣なのは分かったんだけど、誰が持ち主になるの? というか、持ち主に返そう?」

「折角口寄せしたのにー」

「どんな魔法を使ったのかしらないが、僕も返すべきだと思うぜ」

 こあは聖剣に近づいて、おもむろに持ち始めた。

「これは、良い素材でできてますね!」

 とよだれを垂らしながら、目を光らせてあらゆる角度から聖剣を舐め回すように眺める。

 雷太は腰に手を当てながらそっぽを向く。

「こいつ無機物好きだもんな昔から。変わってない」

「お兄さん! この、この素晴らしいツルギ、あたしが持ってていいですよね! ね!」

 妹にすり寄られながら、黙って風音の方を見る。

「分かった。しばらくの間だけだよ!」

「ありがとうございます!」

 こあは聖剣に頬をすりすりさせながら、クーラと部屋へ戻る。風音と太陽も割り当てられた部屋に戻り、雷太は電灯を消して眠りへとつく。





 雷太が目を覚ますと、ドクターグレーが目の前にいて胸倉を掴まれていた。

「お、おい。どういう事だよ?」

「シンセラティに何をしたのですか? どう『プログラムしても』言う事を聞かない!」

 こあが聖剣でグレーを切りかかるも、すれすれで避けられる。

 周りには風音も太陽もクーラもいて、太陽は両手に炎をメラメラと燃やす。

「俺は知らない。だがよ、少なくともそこに誠の意思が宿ってるんじゃないのか?」

「なるほど『諸説ありそうです』では、まず雷太君、貴方から排除させて頂きましょう」

 グレーは何の躊躇も無く全身全霊で雷太に殴りかかるが、手でキャッチされて、強烈な電撃の魔法でダメージを受ける。

「いつの間にこんな『力』を! 一端退散するとしましょう」

 風音が目を瞑り始める。

「……クーラちゃん。今すぐ誠君を口寄せして、早く!」

 言われるがままにシンセラティのなきがらを口寄せ、クーラの目の前に現れた。

「こ、これでいいのかしら?」

 雷太がシンセラティの前へ、片膝をついてただ目をうるわせる。

「誠……」

「姉貴、何で急にコイツを口寄せさせたんだ?」

「雷太君の発言で閃いてしまったのを見たからね。とりあえず、この誠って子を死守するしかうちらが助かる手段は無い。逆に言えば、守ればこっちの勝ちは硬い」

 大体他の人は理解してないが、風音の深刻そうな表情につっかかる勇気など誰も持てない。

「……説明が足りなかったね。ドクターグレーは誠君を最強の兵器にしようとしたけど、意思が宿ってるが故に上手くプログラムできなかった。という感じ」

 こあが一歩前に出る。

「ならば、ドクターグレーを斬れば良いのですね?」

 風音は顔を横に振る。

「いや、誠君を斬ればいい」

「やめてくれよ! せめて、せめて友の体ぐらい残してやりたい!」

「お兄さん何言ってるのですか! あたし達の危機なんですよ!」

 ここでドクターグレーがとんぼ返りしてくる。その表情に余裕は無く、顔を真っ赤にしている。

「どんな姑息な魔法を使ったの『ですか!』何故ここに実験台がいるの『ですか!』」

 太陽が誠に近づいて、頭に巻いてるバンダナを取った。獣の耳には強い炎が宿っている。

「すまない、緑埜雷太!」

 シンセラティに手をかざし、なきがら爆裂させた。

 その時グレーは膝から崩れ落ち、雷太は思いっきり叫んだ。

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