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連れとともに

 

 セス達一行とレナはトレソナ山を下りた。

 そこでレナは彼等と一緒には行かないと言い出した。解決すれば解放してくれると約束したはずだと主張したのである。

 セス達は倒れて寝込んだ王の容体が心配であり、一刻も早く王に報告する義務があった。


 仕方なくセスはレナにロドイルとキーロン、ジェイルを警護につけることにした。

 これでは解放じゃない!とレナが反撃するが、セスは譲らなかった。


「テミスの町で俺が迎えに行くのを待つと約束しただろう?」

「うぐぐっ」


 レナはそんな忘れていた約束を今更と思うのだが、それを言うと自分の約束も帳消しになってしまうので、うぐうぐと言葉にならない奇妙な呻き声を上げていた。

 セスはなおも続けた。


「五年、いや、三年したら必ず迎えに行くから、それまで今度こそ大人しく待っているんだよ? また人攫いに攫われたりしないように」


 セスがレナを見下ろしてきっぱりと告げる。

 だが、レナは返事をしない。ここで返事をしては。いや、しかし、すでに約束したことになっているし。

 うぐうぐ言っているレナにセスが言った。


「返事は? 嫌ならいいんだよ? 一緒に連れていくから。動く岩で俺を追い払おうとしても無駄だよ。あれは俺のことが苦手なようだから、気絶させるほどの威力は発揮されないと思う」


 その言葉にレナは目をぱちくりと見開いた。

 何度かセスにルィンを投げつけたことがあったが、軽くでもあったし、ルィンが手加減したのかと思っていた。でも、実は、ルィンにとってはものすごく臭いセスにはどっぷりのめり込んで受け止めてもらうのが嫌で浅くぶつかっていたのか。

 そのセスの説が正しいとは限らない。限らない、が、確かにそうかもしれない。


「さあ、どうする?」

「わかった。わかったよ。三年後ね。はいはい、三年後に、またっ!」

「そんなに嫌がらなくてもいいだろう」

「別に、嫌がってない」


 セスは頬を膨らませるレナを抱きしめた。レナの光はくるくると舞うように渦を巻き、それはそれで可愛らしい不貞腐れ方だった。

 それを見守るゴルタナ達は、相変わらずどうすればいいのかという変な顔をしていた。



 そうしてセス達は王宮へと去って行った。

 それを見送りながら、キーロンは浮かぬ顔で言った。


「どうして俺らがお前を警護しないといけないんだ?」

「お前、俺達に何もするなよ?」


 キーロンとジェイルは不気味なものをみるような目でレナを見る。

 レナはレナで、ロドイルはいいとしても、キーロンとジェイルが残ったのは非常に残念だった。ゴルタナは無理でも、この二人よりはインゲかべネッツがよかったなと思っていた。まあ、べネッツは打撲をおっていたので無理だっただろうが。


「おいっ。なんとか言えよ。可愛くないなぁ」


 ぶつぶつと愚痴をこぼす二人の後ろで、ロドイルは黙って立っている。

 セス達を見送ったまま、彼等に背を向けて立っているレナはこっそりとルィンを呼んだ。

 わくわくと無言でレナの足を昇り、腰で待機する。ルィンはじっと息を潜める。


 レナはくるっと振り向きざまにルィンを投げた。

 ルィンと約束した、ロドイルに向かって。


『ローードーーイーールーーーーーっ、好きだああああぁぁぁぁぁぁーーーーーっ』


 ルィンは念願のロドイルの顔面にのめり込んだ。

 キーロンとジェイルは踊っているレナを眉をひそめて見ていた。

 ドサッという音とともにロドイルが倒れ、キーロンとジェイルが振り向いた。


「ロ、ロドイルっ。どうしたんだ? おいっ」

「大丈夫か? か、完全に気を失ってるぞ」


 キーロンとジェイルはうろたえた声で喋りながらロドイルの側に駆け寄り覗きこんだ。

 この状態はとジェイルが振り向くと、レナはすたすたと歩き去ろうとしていた。


「待てっ。お前がロドイルに何かしたんだな! そうなんだなっ!?」


 レナは振り向きもせずに背後へ向かって手を振った。


「後はよろしくーーっ。私についてきたらロドイルと同じ目にあうから、ついて来ないでねーーっ」


 キーロンとジェイルは倒れたロドイルのそばで、遠ざかるレナを見送ることになった。

 あんなの警護の必要なんか全然ないじゃないか。それどころか、俺達の身が危ない。やっぱり魔女だったのかぁっ。

 ごちゃごちゃと五月蠅い彼等の言葉は次第に小さくなっていった。


 ここはカデナに近いし、あそこの肉屋に寄って行こうかな。今度は奥さんがいなくてご主人だけだと一個全部もらえるかも。

 レナはカデナの町を思い出しながら、カデナがあるだろう方へと歩いていった。


 その後を、ロドイルの受け止めを堪能して上機嫌のルィンが、左右に蛇行しながら転がりついていく。

 

 レナと連れは再び新しい旅へ出発したのだった。



~The End~

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