第五話 危険な新メンバー
第5話〜、ヤバい。この物語、書いていて楽しい。
「では、新しい前衛を探しますか。かなりの強者がいればいいのですが。フィーナがやらかしてもなんとか出来るような。」
ギルドで報酬をもらった後、みんなでパンを食べながらセラ先生はそういった。
フィーナは強い。動きも速いし、ドラゴンキラー戦だって相手の動きを見て攻撃を避けたり、剣を使ってかわしたりしていた。不意打ちにも反応できていた。
だが、自分勝手すぎるのだ。それにドラゴンキラー戦は魔法動物に詳しいレヴァンさんがいたからこそなんとか生き残れた。彼がいなかったら全滅だったろう。
フィーナは未熟だ。だからこそ、新しい前衛が欲しいのだ。
「...やっぱりレヴァンさんは欲しい人材だったなぁ。」
俺がボソッとつぶやく。隣でフィーナは本当に話を聞いているのか不安になるくらいパンをガツガツ食べていて、セラ先生は向かい側に座ってなんだか嬉しそうに頷いている。
「ドラゴンキラー戦では本当にラク...いや、レヴァンに助けてもらいましたからね。何も知らない冒険者だったらあんなバケモノの群れに出会った時点で全滅です。レヴァンは...そういった事例を減らすために魔法動物の本を出そうと思っているのでしょう。」
セラ先生はまだレヴァンさんの余韻にひたっているようだ。
「...まぁ、この街で新しい前衛を待っていてもしょうがないでしょう。先へ進みながら探しましょうか。」
セラ先生はヒョコッと立ち上がり、服についた汚れを払う。
「フィーナ、レオン、行きますよ。」
セラ先生に連れられるように俺達は一番最初の町の冒険者ギルドから出ていった。
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「暑いー!ねぇ、ちょっと休まない?」
フィーナは疲れているようだ。無理もない。なかなかに日差しが強く、今日は気温が高い。
「フィーナ、もう少し頑張って。俺が荷物もつよ。」
俺は疲れているフィーナを気遣う。
「...二人とも、ストップです。...魔物です。」
セラ先生が片腕を広げて俺の進路を阻止する。もう片方の手で杖を構える。するとどこからとも無く数匹の狼のような魔物が現れる。
「数は6匹ほどですか。フィーナ、やっちゃってください。」
「いいの?私が全部やっちゃって!」
「はい。見せてやってください。『ドラゴンキラーキラーのフィーナ』。」
「っー!ふふーん!しょうがないわね!ドラゴンキラーキラー、フィーナが全部片付けるわ!」
フィーナは眩しいばかりの笑顔で走り出し、一気に魔獣を斬り裂いていく。相手は群れなので連携してフィーナを襲おうとするが、そこで無詠唱の初級魔法が生きてくる。魔獣がいきなり燃え上がったりする。
やはり、フィーナは強い。
「ふんっ!後一匹ね!」
返り血を拭いながら、怪我一つしていないフィーナが少し離れたところに逃げた魔物にジリジリと迫る。
「...まってください!フィーナ!その魔物、様子がおかしいです!」
セラ先生が叫ぶ。確かに、他のと比べて様子が変だ。一匹だけ戦闘に参加していなかったし、なにやら震えている。
「なによ!他のと同じじゃない!」
フィーナが剣を振った。
ガッと鈍い音が響き渡る。
「....はじ...かれた...」
「フィーナ!下がって!」
セラ先生の忠告は遅かった。最後に残った魔物はみるみる巨大化していき、フィーナを手で掴み、投げ飛ばした。
「エルトクルンプン!」
「星炎!」
俺とセラ先生が同時に魔法を発動させる。
俺は土の塊を生成し、ぶつける。セラ先生は相手を燃やし尽くす。
結果、魔物は焼け死んだ。
「...この一匹だけ強かったですね。」
セラ先生がふぅ、と息を吐く。
「フィーナ、大丈夫か?」
俺は飛ばされたフィーナに駆け寄る。フィーナは地面に体がめり込んでいた。
「んっ!えぇ!大丈夫よ!油断したわ!ちょっと、引っ張り出してくれないかしら!」
「ちょっと待ってろ、今引っこ抜く。」
俺はフィーナは頭から地面にぶっ刺さっている。12歳の子どもとは言え、どこかエロスを感じる。
「ちょっと!レオン!早く引っこ抜いてよ!ねぇ!」
フィーナは足をジタバタさせる。なんか、可愛い。
「レオン、意地悪するのはやめてあげてください。ほら、引っこ抜きますよ。」
セラ先生が駆け寄ってくる。それと、大きな影も一緒に近づいてくる。
「...ん?セラ先生!危ない!」
「え?」
遅かった。生きていたのだ、あの魔物は。ドラゴンキラーのように死んだふりをしていたのだ。セラ先生もフィーナと同じ目に...
ならなかった。
「はぁ!魔物が!」
魔物の体が、それは綺麗に真っ二つに斬れる。
次の瞬間には魔物から内蔵が吹き出していた。
「え?」
あんなに大きな魔物が、一瞬で。
そしてさっきまでのフィーナのエロさを吹っ飛ばすほどのグロさ。
「ちょっと!何が起きているの!ねぇ!出してよ!怖いんだけど!早く引っこ抜いてよ!」
ジタバタするフィーナを無視して、俺とセラ先生は魔物だったものを見つめる。
「大丈夫か?道を歩いていたらたまたまそこの少女が魔物に襲われそうになっているのを見つけてな。」
魔物だったものの後ろから紺色の狼のような耳をした、筋肉質な女性が顔を出す。
「ん?そこの少女、土に埋もれているな?助けてやろう。」
狼耳は土に埋もれていたフィーナを引っ張り出す。
「っ!プハッ!助かったわ!レオンが全然助けてくれないから見殺しにされるのかと思ったわ!」
フィーナが笑顔で助けられ、そのまま俺を睨んできた。狼耳の視線が俺に行く。その目はドスがきいており、力強い。
「...オマエがこの少女を土に埋めたのか?」
狼耳は収めていた剣を抜き、俺に向けてきた。
「え?」
「お前がやったのかときいているのだ!答えろ!」
突然すぎて脳がフリーズする。
「私は悪人は嫌いだ!こたえなければお前を悪人とみなし、ここで殺す!」
「ちょっと!待ちなさいよ!レオンは確かに私を助けるのが遅かったわ。けれど、私を土に埋めたのはあの魔物よ!レオンは悪くないわ!だから剣を収めなさい!」
「...そうか。」
狼耳はフィーナに言われて剣を収める。
イカれている。この女、イカれてやがる。
「セ、セラ先生...も、もうそろそろ、い、行きましょう?」
俺は震えながらセラ先生の方を見る。セラ先生の目元は帽子に隠れていてわからない。
「...これです...」
セラ先生が顔をパッと上げる。キラキラした笑顔だ。
「これです!こんな強い、かっこいい前衛が欲しかったんですよ!」
イカれている人間はもう一人いた。
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「それで、この娘が無茶するから新しい前衛、というかもう一人の前衛が欲しかった、と。」
隣町の冒険者ギルドで俺達はさっきの狼耳をスカウトしていた。
「そうですそうです!その、よろしければ私たちのパーティに入ってくれませんか?」
セラ先生は手をあわせて拝むようにお願いした。
「いいだろう。前のパーティが崩壊したところだったし、丁度いい。こっちもパーティを探していたところだったんだ。」
狼耳はニコっと笑った。
「それに、確かに君たち子供だけだと冒険も不安だろうしな。」
「失礼ですが、私は子供じゃありません。見た目で判断しないでください。」
「いや、でも背丈が...」
「私は歳を取らない種族なんです!それに、胸は小さくても関係ありません!ラクは...小さい方が好きだと言ってくれましたし...」
「セラ先生、胸のことは言われてないよ。てか、レヴァンさんにそんな趣味があったことが驚き。」
俺の突っ込みにセラ先生は少し顔を赤らめた。
「じゃぁ、自己紹介しようか。私の名前はネスティア。獣人の剣士だ。冒険者ランクはS級。君たちは?」
「では、私から。このパーティのリーダー、セラフィナ・クロウです。冒険者ランクS級の魔法使いです。」
「マジか!アンタ、S級だったのか!」
「自慢じゃないですけれど伝説級魔法を無詠唱で使えます。」
セラ先生のドヤ顔、かなり可愛い。
「じゃぁ、次は私!ドラゴンキラーキラーのフィーナよ!12歳!冒険者ランクはB級!剣士よ!」
フィーナもドヤ顔。正直、こっちのドヤ顔は見飽きた。
「じゃぁ、最後は俺。俺の名前はレオン。ランクはA級。魔法使いだ。」
俺はネスティアを睨みながら礼をした。
「ところで、ネスティアさん、前のパーティの解散理由は?」
相手が話す前に俺は質問を入れる。この女はヤバい。なにか、嫌な予感がする。
「私が殺したからだ。」
ネスティアはさらりとこたえた。俺はすぐに質問をかえす。
「何故?」
「私以外、男だけのパーティだったのだがな、リーダーが村で嫌がる女子に手を出した。私はそれを見て、リーダーを悪人と判断した。だから殺した。他のメンバーはリーダーをかばおうとしたから殺した。悪人を庇う者も悪人だ。死に値する。」
まるで、ネスティアは当たり前のように言った。
沈黙が続く。
「ちょっと、セラ先生。耳かして。」
俺はセラ先生の肩をチョンチョン、とつつき、耳を貸してもらう。これはリーダーに俺の意見を聞いてもらうための行動だ。一応組織のサブリーダーである俺がリーダーに助言をする、組織の継続のために必要な行動だ。
「アイツめっちゃヤバイよ!人殺しだよ!人殺し!いや、リーダーは百歩譲ってまだ分かる。殺すのはどうかと思うけれど!だけど!庇ったメンバーもはヤバすぎるだろ!同罪って!怖すぎるよ!俺は反対だからな!あんなヤツ、パーティにいれたら殺されちまう!」
大事なことだからもう一度言っておく。俺のセラ先生に伝えた言葉は組織の継続のために必要な助言だ。間違いない。
「何ビビってるんですか。人くらい殺しますよ。ラクだっていっぱい殺してきましたよ?私だって殺したことあります。」
セラ先生は平然とした様子で返事をする。しかし俺は見逃さない。膝においてあるセラ先生の手が震えていた。
「待って、レヴァンさんってそんなヤバイやつだったの?!てかセラ先生も?!じゃなくて、そうじゃなくて!だってアイツ、庇っただけで殺してるんだぞ?」
「...私は罪のない人を殺したこともあります。人の殺しにとやかく言える立場ではないので。」
セラ先生は少し下を向いた。
「じゃぁ俺が言う!」
俺はセラ先生の耳から口を離し、ネスティアの顔を見る。そして立ち上がり、念のため杖も持っておく。
「俺はお前の加入を認めない!悪いけれど、このパーティにお前は入れない!」
ネスティアは目をつむる。
「何故だ?」
「人殺しだからだ!リーダーを庇っただけで殺すのはやりすぎだ!そんな危なっかしいヤツ、願い下げだ!」
冷や汗がすごい。相手は強者。常に警戒しなければ。
「...罪人を庇った。それは罪だ。罪を犯した者は死ぬべきだ。私はそう思っている。なんだ、お前。後ろめたいことでもあるのか?」
ネスティアが剣に手をかける。
「ちょっと待って!ネスティア!レオンは私の大事な仲間よ!レオンに傷をつけたら、この私が許さないんだから!そんなことがあれば、このドラゴンキラーキラー、フィーナがアンタを殺すわ!」
フィーナが俺を庇ってくれた。ネスティアは手を引っ込める。
「...こらこら、そんなにギスギスしてたらダメですよ。同じパーティなんですから。ネスティアさん、レオン、二人とも、そこまでです。私はネスティアさんを歓迎します。ようこそ、私たち『シンケン』へ。」
セラ先生が手をパチンとならして注目を集め、この鬼畜狼女を歓迎した。
「ネスティアさん、レオンは少しエッチなところもありますが、彼は子供です。子供には未来があります。罪を犯してもやり直せます。ですから、彼が罪を犯した時、見逃してあげてください。お願いします。」
再び、沈黙に包まれる。セラ先生はニコッと笑うが、目の奥が笑っていない。相手をしっかりと睨んでいる。それに、片手には杖をしっかりと握っている。
「...わかった。だが、そのようなことがあれば私はこのパーティを抜けさせてもらう。」
ネスティアは睨み返しながらそういった。
こうして、このパーティに4人目が加わった。
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夜、今日は宿で寝れる。
二部屋借りることができ、俺とセラ先生が同じ部屋。隣の部屋がネスティアとフィーナだ。
部屋に入って、荷物を置く。
「セラ先生、本当にアイツを入れてよかったのかよ...」
俺がそう言ってセラ先生のベッドの方を見る。
驚いた。
セラ先生の目から水がポタポタと落ちてきていた。
「...怖かったです...最初は、最初はかっこいいと思ったんです。だから、スカウトしたんです。グスッ...」
セラ先生が泣いている。それも、静かに。
「セラ先生?!」
俺はセラ先生のそばに駆け寄るが、何をしたらいいのか分からずあたふたする。
「...彼女が、『悪人を庇う者も悪人だ』と言った時、怖くて仕方ありませんでした。『罪を犯した者は死ぬべきだ』と言った時、反論しそうになりました。でも、それは彼女の地雷を踏む可能性がある。だから言えなかった!」
俺はなんとなく、セラ先生の背中を擦った。セラ先生は少し落ち着いた。
「...彼女は分かってないのです...罪は『死』以外でも償えることを...それから、罪人を愛する人間もいることを...」
セラ先生は落ち着いて泣き止んだが、けれど震えは残っている。
「...ですが、彼女は私たちに必要です。あそこまで強い剣士、めったにいません。彼女がいるだけで私たちの死亡率は下がります。ドラゴンキラーなんて彼女の手にかかれば大したこと無いでしょう。彼女は私たちが冒険で生き延びるために欠かせない存在なのです。ですから、我慢しなくては。この恐怖に...」
セラ先生は俺達のことを考えていた。だから彼女をあそこで切らなかった。
セラ先生も人間なんだ。怖いんだ。俺はそれが分かってなぜか安心した。
『大丈夫、なんとかなるって!』
何故か、葵の口癖が頭の中で聞こえてきた。
樹冠祈願の方も書かなくては。第4章が楽しみなのに、第3章で詰まっていたら一生書けんぞ!いれく、セラフィナが出てくるところまでせめて書け!




