第三話 冒険者ギルド
第3話!
セラフィナ魔法教室は順調だった。俺は土属性に適正があり、土属性の上級魔法を詠唱有りだが覚えることが出来た。伝説級は...ちょっと俺には難しすぎた。まぁ、中級までなら無詠唱でだいたい行けるし、セラ先生もその実力があれば大丈夫と言ってくれているから覚えて無くてもいいだろう。
フィーナの方は無詠唱で初級魔法、詠唱有りで中級魔法まで使えるようになった。セラ先生曰く、剣術とあわせて使うと強力だそうだ。
「さて、レオン。土属性の上級魔法を使ってみてください。」
その日はセラ先生はまず、そういった。俺も言われたとおりに土属性の上級魔法を使う。
「...大地の神々よ、我に力を与え給え。大地の恵みは生命に恵みをもたらす希望となる。アースショック!」
我ながら上出来だ。吸い込まれるように地面の土が宙に浮き、一箇所に集まっていく。さらにそれが圧縮され、一つの巨大な塊になる。そして、落ちる。もし下に動物が入れば、ひとたまりもないだろう。
「上出来です!そこまでいけたらこの世界でも通用します!」
セラ先生は飛び跳ねて褒めてくれた。
「すごいじゃない!私もいつか使ってみたいわ!」
フィーナも目をキラキラさせながら褒めてくれた。我ながら照れくさい。
「そうですね、レオン。もう10歳ですし、冒険者ギルドに入会できます。」
セラ先生はそこで声を少し低くする。フィーナに聞こえないようにするためだろう。
「...そろそろ、旅立ちの時ですね。」
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面と向かって10歳の俺が「冒険者になります!」といっても両親はOKしてくれないだろう。
だから、俺はセラ先生と一緒に夜、抜け出す。早く葵を助けたい。
それだけ、それだけだ。勿論、この世界の両親には感謝している。だが、悪いけれど俺にとって最も優先するべきは葵。本物の家族ではない人たちに大して用事はない。
「...いいのですか?あんな最後で。」
夜、抜け出す前にセラ先生の部屋に行くと、すでに旅の準備が終わっていた。彼女は魔道具の手入れをしていて、魔道具から目を離さずにきいてきた。
「...あぁ、あんまり普段と違うことをすると怪しまれるし、それに、本当の親じゃないから。」
「本当の親ですよ、間違いなく。」
セラ先生は俺が予想していなかったことを当たり前のように言った。
「あなたにとって二人目の親でしょうけれど。前世の親が本物の親で、こっちの二人目の親を親として見れないのは分かります。ですが、あの二人から見ればあなたは自分たちの子供です。それは間違いない。あの二人はあなたを愛していましたから。」
セラ先生は手をとめなかった。淡々と、事実の羅列のようにそう言った。
「まぁ、まだわからないでしょう。いずれ分かる時が来ます。」
セラ先生は魔道具を収める。
「さて、そろそろ出発しましょう。」
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思い返すと家族との最後の夜は何気ない夜だった。いつも通り夕方に帰ってきて、飯を食い、どうでもいい話をして。そして、風呂に入って寝る。それだけ。特に大した思い入れもない家族だ。実際、コレが最後だと思っても涙は出なかった。
「...セラ先生、バレないように静かに。」
「こっちのセリフですよ!」
みなが寝静まった後、セラ先生の部屋から二人でこっそり出ていく。手紙をリビングに置き、抜き足差し足で玄関まで。そしてゆっくり扉を開け、そっと出る。荷物がそれなりにあるので音が出るのではないかと不安になっていたが、なんとか切り抜けた。
夜の村は真っ暗で、なんだか不気味でもあるし、同時にこれから始まる冒険を表しているようでワクワクもする。
家から出た。だから油断したんだ。もう大丈夫だろう、と。
「これでこの家ともさよならですか。5年も世話になったので、考え深いです。」
セラ先生はボソッと呟く。
「この村とも最後になるのでしょうか。エレナさんのお手伝いをするうちに色んな人と仲良くなったので、少しさみしいです。」
俺なんかよりセラ先生のほうがなんだか寂しそうだった。
「それじゃ、セラ先生。行きましょうか。」
「えぇ。」
二人で夜の村に一歩足を踏み入れた。その時だった。
「おい、レオン。」
後ろから声がした。聞き覚えのある声。ギクッとしてゆっくりセラ先生と共に振り向く。
予想通りの声の主だった。
父親、ヴィクトル・アルトがそこに立っていた。
「レオン、セラフィナ。どこに行くつもりだ。」
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終わった。そう思った。バレた。一番バレたくない人間にバレた。言い訳はできないだろう。大荷物で外に行こうとしているのだ。怪しい以外のなんでも無い。
「え、ええ、えっとですね、これは...」
セラ先生が少し震えながらなにか言い訳を探している。
「ちょ、ちょっと星の観察をしようと思って!そう!星って魔法の勉強にも役立つんだよ!」
俺はそれっぽい言い訳を考えてセラ先生のかわりに言う。最後の方少し裏返ったけれど、大丈夫であってくれ!
「...そうか。大陸は危険な魔物や魔獣がたくさんいる。気をつけろ。それから、魔法使い二人だとちょいとばかり厳しい。前衛はどこかで雇っておけ。で、魔法に行き詰まったら俺に連絡しろ。魔法大学に行くくらいの金なら1人分用意できる。」
ヴィクトルの答えは意外なものだった。明らかに俺達が今から冒険しに行くことが、もう家に帰ってこないつもりであることが分かっている口ぶりだ。
もっと意外なことは、反対するのではなく、肯定したことだ。
「...ど、どうして...」
「俺もそうだったんだ。若いころな。冒険したくて、ウズウズしていた。それで、9歳?10歳?のころに剣を片手に家を飛び出したんだ。そして俺は一流の冒険者となり、妻も手に入れ、見ての通り子供も出来て。いい人生をおくらせてもらった。だがな、後悔していることが一つだけあるんだ。」
ヴィクトルは少し下を見て、ちょっと笑った。
「親父に、挨拶しなかったことだ。俺はなんとも思ってなかったが、俺が冒険している最中に親父が死んだ、らしい。冒険が一通り終わって18で家に一回帰ってきた時に知った。死因が死因でな。抜け出した俺が心配で、森の中に探しに行って魔獣にパクリ。それ聞いた時は流石にこたえたよ。俺の人生いちばんの後悔だ。だから、俺はオマエが冒険に行くことはなにも悪いとは言わない。だが、挨拶くらいしていけよ、とは言う。」
ヴィクトルの目は真剣だった。俺は、そんなヴィクトルの目を見つめた。見なければいけないと思った。
「...何か、言うことあるんじゃないか、レオン。」
「...父さん、行ってきます。」
「死ぬなよ、レオン。」
ヴィクトルはそう言って俺の頭を撫でた。
「セラフィナ、レオンのことは頼んだぞ。」
ヴィクトルは隣のセラ先生にそれだけ言って家に戻っていった。その背中が、俺には大きく見えた。
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夜道を歩きながら俺はいろんな事を考えていた。正直、ヴィクトルに撫でられた時は泣くんじゃないかと思った。だけど泣かなかった。結局は俺にとってはヴィクトルは親として認識できていないのかも知れない。
「このペースで歩いて、ライヒ村とはさよなら。隣町に行きましょう。そこの冒険者ギルドで入会手続きをします。それで冒険者ギルドに入会します。そこで誰か前衛をスカウトして、路銀を稼ぎつつ、大陸の北のはてにある魔王城を目指します。北部大陸までの道のりは険しいですが、私という偉大な魔法使いがいるので大丈夫でしょう。自慢じゃないですけれど、私はS級冒険者です。それなりの冒険者任務は受けることが出来ますよ。路銀稼ぎの方法では困らないでしょう。」
セラ先生は淡々とこれからのことを説明した。
「セラ先生がいて頼もしいです。」
「ふふーん、そうでしょ、しょうでしょ。」
褒めると自慢げになるセラ先生もやっぱり可愛い。
しばらく歩いて街明かりが見えてきた。
「あそこです。」
セラ先生が指さす先に他の建物と比べて少し大きな建物がある。看板にはこの世界の言葉で『冒険者ギルド』と書いてある。こういうのを見るのは初めてだ。冒険者ギルド、それだけで異世界に来たことを実感できる名前。ワクワクする!
「すみませーん、夜遅く、いえ、朝早く申し訳ございません。」
セラ先生はゆっくり扉を開ける。冒険者ギルドの中では酒に酔いつぶれた冒険者たちが束になっていた。
「...とまぁ、だいたいの冒険者ギルドはこんな感じなので普通にここで寝泊まりしても大丈夫です。」
セラ先生は俺にちょと気まずそうにそういった。
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「...っと....ぇ........ねぇってば!......ちょっと、聞こえてるの?」
聞き覚えのある声で目が覚める。聞き馴染んだ声。だけどセラ先生の声ではない。
「ねぇ!起きなさいよ!ねぇ!」
青い髪がぼやけて見える。
...青い髪?セラ先生の髪は緑色。おかしい。
「...誰だ?!」
「私よ、私!フィーナ・ルナールよ!」
そうか、フィーナか。なら納得...とはならない。
「なんでいるの?!」
俺は目が飛び出るかと思った。予想外のせいですっかり目が覚めてしまう。あたりを見渡してみる。セラ先生は?と思ったら隣で眠そうにまぶたを半開きにしてパンを食べていた。
「なぜ私がここにいるのかって?アンタ達が冒険に行くって知ったからに決まってるじゃない!アンタ達、確かに二人とも、魔法の腕は確かだわ!だけど、前衛がいないと厳しいんじゃない?そこで!私が前衛になってあげよう!そういう話よ!私はそれなりに腕もたつし、ちょっとした魔法も使える剣士!悪くないでしょ?」
なるほど、フィーナは俺達とパーティになるためにやって来たらしい。
「はぁ...親御さんの許可は取ったのですか?」
「その点は心配ないのよ!ルナール家は元々剣士の家系!一人前の剣士になるために私の家は必ずどこかのタイミングで旅に出させられるのよ!」
何故かドヤ顔のフィーナは腰に手を当てて、目をキラキラさせている。
「まぁ、フィーナほどの実力者であれば安心できます。私が見た感じ、B級冒険者くらいの実力はフィーナにありますので、問題ないでしょう。」
「よく分かったわね!さっき私が冒険者ギルドに入会した時、B級冒険者の称号を手に入れたわ!」
セラ先生はパンを食いちぎり、ゆっくりとミルクを飲みながらフィーナのパーティ加入を許可した。
「じゃぁ、レオン。あなたの冒険者ギルド入会手続きをしましょうか。ついてきてください。」
セラ先生はヒョコッと立ち上がりテトテトと歩いていった。俺はその後ろをそっとついていく。
「では、この玉に手をかざしてください。そして隣りにあるカードを取ると、あなたの冒険者カードが出来上がります。それは免許証みたいなもので、それを持っていると冒険者ギルド公認の冒険者です。」
セラ先生に言われた通り、玉に手をかざす。そして隣りにあるカードを一枚取る。するとみるみるカードに文字が現れてきた。
「そのカードは依頼をこなしたり強い魔獣を倒すと勝手に更新されていきます。あなたの実力は...やっぱり。A級冒険者です。」
「私が一番下じゃない!なんで?私は剣士なのに!」
「あなたほどの実力があればいずれS級になれますよ、フィーナ。」
セラ先生はフィーナにそう言う。
「それじゃ、私たち3人のパーティ名をきめましょうか。そうですね、私が勝手に決めていいですか?」
セラ先生が俺とフィーナに尋ねる。俺は特に反対するつもりもないので、頷く。
「良いわ!どんな名前にするの?」
「私の想い人が、見て、一発で私だと気付けるような名前にします。」
セラ先生はそう言ってなにやら紙に書いた。
「『シンケン』。私たちのパーティ名は『シンケン』です。」
セラ先生はドヤ顔だ。
「どういう意味なの?ねぇ、どういう意味なの?」
フィーナが俺の尋ねたかったことを聞いてくれる。
「私が昔所属していた組織から名前を取りました。これならあの人も一発でこの名前を見て気づくはずです。」
セラ先生は自信満々。そして、少し目に水が溜まっていた。よほど思い入れがある名前なのだろう。
「では、早速何か依頼を受けますか。依頼はあっちの掲示にはってあります。私たちのランクは平均してA級なので、A級の依頼まで受けられます。」
「ねぇ!この依頼見て!ブルードラゴンの住む洞窟で行方不明になった少年の身柄を探すってのがあるわ!ドラゴン、ドラゴンよ!ドラゴンと戦えるのよ!」
フィーナは飛び跳ねてはしゃいでいる。
「ドラゴンですか。私ほどの実力があれば討伐も可能でしょう。ドラゴンのウロコは高く売れます。良いでしょう、その依頼、受けましょう!」
セラ先生の承諾にフィーナは飛び跳ねて溢れんばかりの笑顔で喜んだ。
次回、第4話!




