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呪い師の少女は、ゴブリンの毛を抜きたい

荒野を、灰色のマントをまとった二人の少女が歩いていた。


一人は青い髪に大きな黒い瞳。背丈ほどもある杖を手にしている。


名前はランカ。十六歳。


もう一人は、漆黒の長い髪に少し垂れた目をしていた。胸には、大切そうに藁人形を抱えている。


名前はリリー。同じく十六歳だった。


「あれ!」


ランカが丘の先を指差した。


少し後ろを歩いていたリリーが、小走りで隣へ並ぶ。


丘の向こうには、巨大な城がそびえ立っていた。



二人は城下町へ入ると、門兵に教えられたギルドへ向かった。


建物の中には、大勢の冒険者が集まっていた。


戦士、魔法使い、僧侶。


見たこともない装備に身を包んだ者たちを前に、ランカとリリーは目を丸くする。


自分たちの村人を全員集めても、まだ足りないほどの人数だった。


二人がカウンターに紹介状を渡すと、受付の女性が奥の部屋へ案内してくれた。



部屋にいたのは、麻の服を着た中年の男だった。


「待っていたよ。どうぞ座って」


ギルド長は紹介状へ軽く目を通した。


「青い髪の君が、魔法使いのランカだね。見習いは卒業したのかな?」


ランカが緊張した様子で頷く。


「もう一人は……呪い師か。珍しいな。うちのギルドでは初めてだよ」


リリーは、照れくさそうに藁人形を抱き締めた。


「さっそく、君たちの教育を担当するパーティーを紹介しよう」


ギルド長が受付の女性へ合図を送る。


数分後、三人の冒険者が部屋へ入ってきた。


「戦士のガイルだ。よろしくな」


赤い鎧をまとった金髪の男が笑う。


「僧侶のマリアよ。よろしくね」


その隣には、白いローブを着た金髪の女性。


最後に、青い鎧の黒髪の男が前へ出た。


「勇者のアルスだ。君たちの教育係になる」


「勇者?」


ランカとリリーが同時に声を上げる。


ガイルが自慢げに答えた。


「アルスは、一人でドラゴンを倒したことがある。それで勇者の称号を与えられたんだ」


二人は目を輝かせ、ぱちぱちと拍手した。


アルスは困ったように手を振る。


「話はそのくらいにしよう。さっそく、君たちの実力を見せてもらう」



城を出て、小一時間ほど歩いた。


たどり着いたのは、深い森の入口だった。


「ここから先はモンスターが出る。二人とも、俺たちから離れるなよ」


アルスを先頭に、一行は獣道を進んでいく。


しばらくすると、甲高い雄叫びが森に響いた。


「来たぞ!固まれ!」


ガイルが盾を構える。


草むらから、一メートルほどの緑色のモンスターが飛び出してきた。


ゴブリンだ。


鋭い爪を振り回しながらアルスへ襲いかかる。


アルスは剣で爪を受け流し、その体を地面へ叩きつけた。


さらに草むらの奥から、三匹のゴブリンが姿を現す。


「俺とアルスが押さえる! 二人は隙を見て攻撃しろ!」


ガイルが一匹を盾で受け止め、もう一匹を剣の腹で殴り倒した。


マリアがランカとリリーへ声をかける。


「落ち着いて。傷は私が治すから、怖がらなくていいわ」


ランカは杖を握り締めた。


目の前に倒れたゴブリンへ向け、杖を振る。


「ファイアー!」


杖の先から放たれた火球は、ゴブリンの横にある岩へぶつかった。


「外した!」


ゴブリンがランカへ飛びかかる。


アルスが咄嗟に割って入り、その胸を剣で貫いた。


「落ち着くんだ!」


だが、ランカはすでに次の魔法を唱えていた。


「ファイアー!」


先ほどより大きな火球が放たれる。


炎は二匹のゴブリンを同時にのみ込み、黒焦げにした。


「やるじゃない!」


マリアが声を上げる。


アルスも驚いた様子で笑った。


「残りは一匹だ! 次はリリーがやれ!」


「はい!」


リリーが元気よく前へ出る。


アルスとガイルは、最後のゴブリンを左右から挟み込んだ。


逃げ場を失ったゴブリンの背後へ、リリーがそろりそろりと近づいていく。


「何をする気かしら?」


マリアが首を傾げた。


リリーは突然、ゴブリンの頭へしがみついた。


そして髪を握り、力いっぱい引っ張り始める。


ゴブリンは驚き、リリーを振り落とそうと暴れ回った。


アルスたちは、いつでも助けられるよう武器を構えながら、その奇妙な光景を見守る。


「ううう……!」


リリーは必死にしがみついていたが、ついに振り払われた。


そのまま木の幹へ頭をぶつけ、気を失う。


ゴブリンは一目散に森の奥へ逃げていった。


ガイルが倒れたリリーを担ぎ上げる。


アルスは呆れた顔で呟いた。


「こいつ、何がしたかったんだ?」


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