春名:やだ、やだぁっ!
「なに──んっ!?」
文句を言おうと口を開いた途端、ぐいっとタオルを噛まされる。
口を閉じようとしてもちゃんと閉じられない。
両腕はつかまれてるから、動かせない。
何するのって言おうとしても、言葉にならない。
「いいねー。何するのって聞きたいの? 喜多さん」
にやっと笑われて、寒気がする。
──まだ、足は動く。
とにかくどこでもいいから、蹴ってやる。
左足を軸にして、右足をひたすら動かす。
何回か、ガッ、と壁に当たる音と、人に当たる感触。
気持ちいいものじゃないけど、そうも言っていられない。
とにかく何とかしなくちゃ──
「あ、痛い、痛い。喜多さんお行儀悪いよ?」
「んっ」
「お行儀悪い子にはお仕置きって、よく言うよね」
「んゃっ……んー!」
つかまれた手首を締め上げられる。
「喜多さんくらいなら、片手でもいけるかな……」
「んー!!」
「──お、いけるいける」
手首をつかまれたまま持ち上げられて、 カタン、とゲタが床に落ちた。
両腕を上げられて苦しいし、タオルを噛まされて苦しい。
怖い、やだ、怖い……!
「前からさー、喜多さんいいなと思ってたんだよね」
あたしが必死で足をばたつかせるのを見て、にやっと笑う。
やめてよ、って声を出そうとするけれど、まともな言葉にならない。
「あめえよ、って聞こえるよ。喜多さんってば口悪いなー?」
そんな事、言ってない。
やめてよ、って言ってる。
なんで? なんで学校で、こんなことされてるの……?
「さーて」
背中に固い感触。
降ろされたのは、机の上だ。
キレイに結んでもらった帯で、背中が反り返る。
さっきあたしが置いた荷物は下に落とされて、今は荷物のかわりにあたしが置かれてる。
もう一度蹴ってやろうとして、足を振り上げる──けど、あっさりつかまれた。
「足首も細いんだね」
もう片方の足で蹴ろうとして、──ズキッと痛みが走った。
「ケガしてるって言ったもんね。無理しないほうがいいよ?」
「んんっ、んん!」
「あはは、何言ってんのかわかんないって。下手に動かさないように固定してあげるから。」
そう言って、あたしの足を縛る。
体をよじって逃げようとすると、肩を机に押し付けられた。
「あ、これじゃキスできないな」
「んっ!?」
まじまじとあたしの顔を覗き込んで、そんな事を言う。
何で?
何でこんな事になってるの?
吉成君ってそういう人だったの?
「喜多さんも残念? だよねえ。でも、声出されると困るし、仕方ないね」
残念な訳ないでしょ!?
反射的に怒鳴りそうになって、体が強張る。
すぐ目の前に、吉成君の顔が近づいてきた。




