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第八話 北の大地(一)         其のニ『国家の種』

力丸の構想が語られますねー

凍てついた大地に

何をもたらすのか

楽しみデス

 釜石の夜。

波の音が、変わらず続いている。

      ザァ……

    力丸の言葉が、場に残る。

「では、何故あの地に“国家”がないのか」


      沈黙。


 誰も、すぐには答えない。


    紫電が、口を開く。

「……土地はある」


    忠太

「人もおる」


    つぐ

「ならば、先程の話と矛盾するな」


    力丸、小さく頷く。

「そうですね」


      一拍。


    力丸

「では、順に」


「領土。何が問題なのか」


    守亮

「……環境、でしょう」


    紅蓮

「寒冷地」


    忠太

「住みにくい」


    つぐ

「生きるだけで精一杯」


    力丸、頷く。

「全て正解です」


「領土はある。が厳しい環境」


      沈黙。


    力丸

「では……民は、どうでしょう」


    紫電

「数、であろうな」


    紅蓮

「少ない」


    守亮

「分散している」


    つぐ

「まとまりにくい」


    力丸、頷く。

「はい。全て正解です」


「民はいる。だが、“集まらない”」


      一拍。


    力丸

「国家は、一定の規模を要する」


「それに届かない」



      沈黙。


    力丸

「では、思想はどうか」


      一瞬。

       今度は、少し間が長い。


    忠太

「……分からん」


    守亮

「統一されていない、でしょうか」


    紅蓮

「共同体としてはあっても」


    つぐ

「“国家”としての意識がない」


    力丸、静かに頷く。

「はい。全て正解です」


「思想はある。だが、“広がらない”」


      一拍。


    力丸

「集落で完結し、それ以上に、ならない」



      沈黙。


    力丸は、ゆっくりとまとめる。

「領土はある。民もいる。思想もある」


      一拍。


    力丸

「だが――」

    視線が、一同を捉える。

「“繋がっていない”」



      沈黙。



    守亮

「……なるほど」


    紅蓮

「それぞれが、独立している」


    紫電

「ゆえに、“国”にならぬか」


    力丸、頷く。

「その通り」


     波の音。

      ザァ……


    力丸

「だから」


      一拍。


    力丸

「存在しない。国家が」

    静かな断定。


 誰も、反論しない。

      “無い理由”は、理解できた。

 だが――


    忠太

「……ならば」


 次の問いが、生まれる。


    忠太

「どうする」


 力丸は、黙っている。

        ただ、わずかに笑った。


そして、

    力丸

「繋げてやれば良いのです」


    忠太

「それが分からんのだ」


    力丸

「逆に考えてみましょう」


「国家として、纏まる。

     つまり数が必要な理由とは」


    忠太

「負けない為だ」


    守亮

「防衛ですか、攻められない為の数」


    つぐ

「攻めてくる者など、おらぬな」


    紫電

「戦う為の“力”は、不要」


    力丸

「その通り、

    外敵が無ければ防衛は必要ない」


    守亮

「ただ“生きる”為ならば、

         集落ごとで完結する」


    つぐ

「…ということは!」


「ええい、ここまで出てきそうなのだ」


    紫電

「より良く“生きる”為の、

           その“力”ならば」


    忠太

「おお!それは良いな」


    力丸

「共生関係」

      

      耳慣れぬ言葉に静まる。


    力丸

「集落を“個”として、捉えた場合

   “個”が集まり、“群れ”となり、

        より生き易くなるならば」


    忠太

「群れるな」

    ニンマリ


    つぐ

「つまり、“群れるほうが良い”と、

              思わせる」

  

    忠太

「繋がる」


    守亮

「繋がる理由を与える、ですか」


    紅蓮

「国家ではなく、先に“関係”を作る」


    紫電

「ほう……面白い」


 国家のたねが見えてきた。

これまで出来ぬ事、であったが、

 この男になら、と皆が思う。


    力丸

「では――繋げる、と言いましたが」


      一拍。


    力丸

「何をもって、繋げるか」


 視線が、一同を巡る。


    紫電

「利、であろうな」


    守亮

「利益、ですか」


    紅蓮

「見返り」


    つぐ

「生きる為の“何か”」


    忠太

「腹が満たされることだな」


    力丸、僅かに笑う。

「はい」


「全て正解です」


      沈黙。


    力丸

「“利”とは、つまり」


      一拍。


    力丸

「生き易さ、です」


 波の音が、少しだけ強くなる。

      ザァ……


    力丸

「寒い。飢える。壊れる」


「この三つを、取り除く」


      一瞬。


    守亮

「……環境そのものを、変える」


    紅蓮

「生活の基盤」


    つぐ

「生きる“土台”」


    紫電

「それを与える、か」


    力丸、頷く。

「その通り」


      一拍。


    力丸

「まずは、一つ」


 全員の意識が、そこに集中する。


    力丸

「“食”です。食が安定すれば、

    人は留まる。留まれば、増える」


      一拍。


    守亮

「……逆算、か」


    紅蓮

「起点を一つに絞る」


    つぐ

「だが……あの地で、それが可能なのか」


    力丸

「可能にします」

    迷いが無い。


    紫電

「どうやって、だ」


      一瞬の静寂。


    力丸

「土を変え、風を遮り、水を制御し、

             熱を留める」


      静かに、言葉が落ちる。


    つぐ

「……囲うのか」


    紫電

「なるほど……場を作る、か」


    力丸

「“生きられる場所”を、作る」


      沈黙。


 それは――戦でも、政治でもない。

    “環境そのもの”への介入。


    守亮

「……規模は」


    力丸

「最初は、小さく一つの集落で十分です」


    紅蓮

「一点突破」


    忠太

「出来たら、どうなる」


    力丸

「広がります」

    即答。

「見れば、分かる。 

      食える場所に、人は集まる」


    つぐ

「……確かに」


    紫電

「力ではなく、引き寄せるか」


    力丸

「奪うこともせず、命じることもない」

    静かに。

「来たくなるように、するだけです」


      沈黙。


 誰も、否定できない。

それは――あまりにも、自然な理。


    守亮

「……恐ろしいですね」


    紅蓮

「支配しているようで、していない」


    つぐ

「だが、離れられぬ」


    紫電

「見事なものよ」


    忠太

「分からんが、すごいのは分かる」


一同、僅かに緩む。だが━━━


    力丸

「“食”を起点にすると言いましたが」


      一拍。


    力丸

「それだけでは、足りません」

    視線が、一同を射抜く。


    忠太

「まだあるのか」


    力丸

「“偏り”を作ります」

    静かな口調


    守亮

「……偏り?」


    紅蓮

「均一ではなく、ですか」


    力丸

「全ての集落が、同じであれば、

           “個”が潤うだけ」


      空気が、わずかに張る。


    つぐ

「……どういうことだ」


    力丸

「ある集落には、農耕を

 ある集落には、漁を

 ある集落には、採掘を」


      一拍。


    力丸

「“出来ること”を、分ける」


    守亮

「……分業」


    紅蓮

「役割を固定する」


    忠太

「不便ではないか?」


    力丸

「はい。不便になります」

    即答。


      一瞬の静寂。


    力丸

「だから――繋がるのです」


    紫電

「……ほう」


    力丸

「魚はあるが、穀物がない

 穀物はあるが、鉄がない

 鉄はあるが、塩がない」


      一拍。


    力丸

「一つでは、生きられる、だが――」

    視線が、強くなる。


「“豊かには、なれない”」


      沈黙。


    守亮

「……なるほど」


    紅蓮

「不足が、関係を生む」


    つぐ

「欲するから、求める」


    紫電

「利が、動かすか」


    力丸、頷く。

「そういう事です」


      一拍。


    力丸

「奪うより、交換させる。

   奪えば終わるが、交換すれば続く」


「関係が、維持される」

    静かに


    忠太

「……つまり」


      ゆっくりと理解が進む。


    忠太

「離れられん、ということか」


    力丸

「必要だから、繋がる。

  繋がるから、集まる」

        集まるから、“国”になる」


      波の音。

       ザァ……


    守亮

「……強制ではない」


    紅蓮

「だが、選択の余地もない」


    つぐ

「見事な“縛り”よ」


    紫電

「面白い……実に面白い」


      一同、沈黙。


 それは――戦でも、支配でもない。

だが確実に、人を縛る構造。


    守亮

「……しかし」


      一拍。


    守亮

「それを、誰が設計するのです」


    紅蓮

「役割が要る」


    つぐ

「全体を見る者が要る」


    紫電

「指揮を執る者もな」


      視線が集まる。


    力丸

「そう」


      一拍。


    力丸

「そこで――」

    言葉を、切る。一人一人を、見る。


      静寂。


 次に来るものを、全員が理解した。

これは―― “誰が何をするか”の話だと。


    力丸

「では、役割を決める」

    


      波の音。

       ザァ……


国家は、構想から――運用へと移る。





       つづく


歴史上に無い国。出来るはずもなかった。

力丸の力技でもあります。

なんでもあり、ですねー

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