表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
砕け散った初恋の後に、最後の恋をあなたと  作者: 燈華


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/85

庭の案内

リーリエ視点です。

「うちの庭なんて本当に大したものではないんですよ」


二人で話すための口実だとわかっているけれど、つい言い訳のように言ってしまう。


トワイト侯爵家の庭で何度もお茶をしているので、あの華やかな庭に比べてしまうとユフィニー家の庭は()ぢんまりとしている。

この屋敷の庭は長年勤めてくれている庭師が一人で面倒を見てくれているのだ。

わたしはその素朴さが好きだけれど、トワイト侯爵家の庭を見慣れているサージェス様には地味に思われるかもしれない。


サージェス様は微笑んで口を開いた。


「いいえ、楽しみです」


それはお世辞だろうか、それとも本心だろうか。

どちらにせよ余計に緊張感が高まってしまった。


「気楽にしてください」


わたしの緊張に気づいたのだろう、サージェス様が微笑んでそう言ってくださるけれど、残念ながら気を緩めることはできない。

何とか微笑み返す。

ぎこちなくなっているだろうけれど。






緊張しながら庭へと案内する。

わたしたちの後を侍女とサージェス様の従者がついてくる。


気軽に会話できるようにか、庭に出た後は少し離れてついてきてくれている。

これなら小声で話せば彼らまで声は届かないだろう。


サージェス様は一体どんな話があるのだろう?


サージェス様が微笑んで口を開く。


「遅くなりましたが、そのドレス、柔らかい雰囲気の貴女によくお似合いです」

「……ありがとうございます」


そんなふうに言われると思わなかったので返事が遅れてしまった。

誤解して気を悪くされたかもとひやりとしたけれど、サージェス様は口許に柔らかな微笑みを浮かべた。


ほっとする。

それからはっとする。

わたしも返さなければ。


「貴方はいつも素敵です」


同じように褒めようとしてこぼれた言葉だった。

内心で慌てた。

もっと違う言い方ができたはずなのに。


サージェス様が珍しく驚きを表に出している。

ますます慌てる。


「本当のことです」


よく考えないで言葉を重ねてしまった。

サージェス様が微笑んでくださって落ち着いた。


「そう見えているなら嬉しいですね。ありがとうございます」


わたしが気にしないようにしてくれたのだろう。

本当に優しい方だ。


これ以上わたしが慌てなくていいようにだろう、サージェス様が改めて庭を眺める。


「私はこの素朴さが好ましく思います」


サージェス様は目を細めて庭を見ている。

まるで慈しんでいるようで。


「私は好きですね。心が柔らかくなる」


何て優しい表現だろう。


「そう言っていただけると嬉しいです」


お世辞でも嬉しい。

だから素直に微笑む。


「このような庭が毎日見られるユフィニー家の皆さんが羨ましいです」


そう言ってくださるのもサージェス様の気遣いだろう。


「わたしはトワイト家の華やかなお庭も好きですよ」


ユフィニー家の庭が一番好きだけれど、トワイト家の庭も好きなことに変わりはない。

サージェス様が微笑む。


「ありがとうございます。庭師も喜ぶでしょう。伝えておきますね」

「はい。うちの庭師にも後で伝えておきます」


こんな優しい表現で褒めてくれたと知ればきっと喜ぶだろう。


読んでいただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ