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砕け散った初恋の後に、最後の恋をあなたと  作者: 燈華


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エゴだとしても

サージェス視点です。

あとはもう寝るだけだ。

明かりも落とした部屋の中。


だが何故か寝る気も起きなくて寝台に腰かけている。

あえて少しだけカーテンを開けてある。


その隙間から月明かりが差し込み、室内を青く浮かび上がらせる。

自分で言うのもなんだが、シンプルな室内だ。

寝室だからそうなのではなく、私室も必要なものしか置いていない。

見ていて何も楽しいものはないが、心を揺らすものがないので落ち着く。


今も心が静まっているのを感じる。

このまま静かな心に向き合っていればそのうち眠気も湧いてくるだろう。


そうしているとふわりと思い浮かぶ事柄があったりするが思考することなく流す。

そうやって心を整理することはたまにあるのだ。


浮かんでは消えるものをただ流しているとーー

ふと、リーリエ嬢のことが浮かんだ。


今頃、泣いているのだろうか?


泣かないでほしい、と思うのはただのエゴだ。

むしろ傷ついたのならしっかりと泣いておいたほうがいい。


溜め込んではいずれ牙を剥く。

そうなれば彼女を深く傷つけるだろう。

癒えない傷になるかもしれない。


それは望ましくない。

それなら思いっきり泣いたほうがいい。


泣いたところで早々(そうそう)心の傷は治らないだろうが。

それでも溜め込むよりはずっといいだろう。


傷が痛いと泣かなければ、そのうち痛いということすらわからなくなり自分が傷ついていることすら気づかなくなってしまう。

だから今だけでもきちんと泣いたほうがいい。



そう、わかっていても。

エゴだとしても。




本当はどうか泣かないでほしいーー。




思い浮かぶのは昼間に見た涙を(たた)えた瞳だ。

(こぼ)れたのは(しずく)一つ。


どんな宝石よりも綺麗だった。

その涙をぬぐいたいと手が動きかけたのも事実だ。

だが泣いてほしいわけではない。




柄にもなく。

彼女が心の底から微笑(わら)える日が来ることをそっと月に祈った。


読んでいただき、ありがとうございました。

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