密かに込められたメッセージは
サージェス視点です。
本を持って部屋に戻った。
一人で調べたかったのでアルノーには席を外させた。
書き物机の引き出しからリーリエの手紙を取り出した。
机の上に置き、その隣に本を置く。
真剣な顔で本を開いた。
手紙と見比べながらページを捲っていく。
「ん? これか?」
それっぽいものに行き当たる。
だが自信が持てない。
とりあえず栞を挟んでおく。
ページを捲っていく。
これか、と思うものには栞を挟んでまたページを捲った。
最後の一ページまで見て本を閉じた。
本には何枚か栞が挟んである。
もう一度その栞の挟んだページを見ていく。
どれも似たような花だ。
意地悪や悪戯ということは、ない、よな?
さすがにそんなことをするとは思えない。
手持ちの中でそのメッセージが込められるものがこれしかなかったのだろう。
だとしたら本当に伝わらなくてもいいと思ったのかもしれない。
だとしたら尚更ーー知りたい。
花言葉をじっくり読み込んでいく。
リーリエからのメッセージならその花言葉にこそ意味がある。
そこから読み解いていくしかなかった。
あのカードの意味がきちんと伝わっているとしたら返ってくる言葉は……。
肯定的であろうと否定的であろうと、返ってくる言葉の候補はそれほど多くはない。
……できれば否定の言葉ではないほうがいいのだが。
恐らくはそんなことはないとは思うが一抹の不安はある。
大丈夫だと言い切れるほどリーリエのことを知らないのだ。
お互いに信用を積み重ねるのはこれからだ。
そんなことを頭の片隅で考えながら花言葉を見比べる。
そして一つこれだ、というものを見つけた。
「恐らく、これだな」
ハナショウブーー東のほうにある国の花だ。
花言葉はーー"信じています"。
似たような花はあったが、この花言葉が返事としては一番しっくりとくる。
手紙自体への返事だったらアヤメという可能性もあった。
こちらもやはり東のほうの国の花で花言葉は"よい便りを待っています"だ。
何らかの返事を待っているのなら当てはまるが、今回のものでは違うだろう。
「信じています、か」
小さく呟く。
自然と微笑が溢れていた。
安堵と喜びを同時に感じていた。
まだ確実にそうと決まったわけではない。
だが恐らくは間違いない。
それにこのメッセージを託してくれたのは本当に嬉しい。
その信用を損なわないようにしないとと改めて気を引き締める。
手紙を手に取り、そっと文字を撫でる。
そうしてはっとした。
完全に無意識の行動だった。
アルノーを部屋から出しておいてよかった。
見られていたら何と言われることか。
ほっと息をつき、手紙をそっと引き出しにしまう。
やはり早めに手紙を入れる箱を用意しないと。
鍵付きのものがいいかもしれない。
そんなことを考えながら本を閉じようとした。
その手が止まる。
そういえばあの花の花言葉は何だったのだろう?
ふと気になってリーリエに贈った花のページを開く。
花の名前は庭師に聞いていた。
デージーの花言葉は""無邪気""美人"だった。
花のイメージはリーリエに合うと思う。
だが花言葉は少し、外れていたようだ。
リーリエは無邪気というより落ち着いており、美人というよりは可愛らしい。
だが今回は花言葉は関係なく、リーリエが目を留めていたから贈った花だから。
何となく言い訳じみたことを思ってしまう。
今後は花言葉にも気を遣うことにしよう。
だからといってそれにばかり固執するのはよくないだろう。
花言葉より大切なことはリーリエが気に入るかどうかだ。
それを間違えてはならない。
心に刻んでおく。
次はどのような花を贈ろうか。
そんなことを考えながらしばらくの間グレイスから借りた本を眺めていた。
読んでいただき、ありがとうございました。




