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砕け散った初恋の後に、最後の恋をあなたと  作者: 燈華


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家族の反応が少々鬱陶しいのだが

サージェス視点です。


応接室に戻った。

出迎えた皆は笑顔だった。


よい話し合いができたのだろう。

私たちの様子を見て、というだけではないはずだ。


私たちがいない間に事業提携などの具体的な話をしていたはずだ。

私たちのいないところで話し合いがしたかったわけではなく結果的にそうなってしまっただけの話だ。

後で詳しく内容は教えてもらえるだろう。


逆に私たちのことも根掘り葉掘り聞き出そうとしそうだが。

それは私がいかようにも躱せばいいだけの話だ。


リーリエを子爵の隣までエスコートする。


「ありがとうございます」


そっと礼を告げてリーリエが座る。

それを見届けてから私も父の隣に戻って座った。


「二人でゆっくり話せたかしら?」


母の声には微笑(わら)いが含まれていた。

リーリエは気づかなかったようだが、さすがに私にはわかった。


これはユフィニー家が帰った後にどんなことを話したか訊いてくるだろう。

どのみち後で家族で話し合うのだから逃げられない。


どこまで躱せるだろうか。

ほんの少し前に決心したことが揺らぐ。

少し憂鬱になったがそれを表に出さずに告げる。


「ええ、お陰様で」

「ゆっくり話すことができました。ありがとうございました」


リーリエも微笑んで言ってくれる。


「そう。ならよかったわ」


母は満足そうに微笑んでいる。

グレイスなどはからかうような色も微笑みに乗っていたがこちらは無視していいだろう。

どうせユフィニー家が帰ったら何か言ってくるのだ。

リーリエの前でわざわざ言われたくはない。


私とリーリエの前にそっとお茶が出された。


リーリエが視線だけで侍女に礼を言っている。

行き届いた配慮だ。

会話を邪魔せず、当家の侍女への配慮も見せた。

さすがだ。


侍女も一瞬だけ表情を崩して微笑を浮かべていた。

リーリエの人徳だろう。

この先この家に嫁入りしてもリーリエは馴染んでくれる。

そう確信できた。

静かに侍女は下がっていく。


父の視線がリーリエに向く。


「リーリエ嬢、サージェスはきちんとエスコートできていたかな?」


何故か父が余計なことを訊いている。

リーリエはきょとんとした後で口許に微笑みを浮かべた。


「はい。サージェス様は紳士的にエスコートしてくださいました」


父が微笑する。


「それならよかった」


後でこの真意も父に問い詰めなければ。

本当にどういうつもりなのか。

息子に恥を掻かせたいわけではないだろうが。


心配していたというのも違うだろう。

私だって令嬢をエスコートした経験はそれなりにあるのだ。

それを知らない父ではない。

心配などするはずがない。


かといってこの場で父を睨むわけにはいかない。

表面上は涼しげな顔を装った。

家族にはバレていそうだが、ユフィニー家の方々にバレなければいいのだ。


お茶を一口飲む。

この味は……。

思わず軽く目を見開いた。


これは、ユフィニー家のお茶だ。

そういえば、手土産として持ってきてくれていた。


私の表情の変化に気づいたらしい母が笑みを含んだ声で訊く。


「気づいたかしら? せっかくいただいたのだからお出ししてみたのよ」


恐らく飲みながら商談していたのだろう。


「そうでしたか」


ユフィニー家の方々に微笑みかける。


「美味しいです」

「ありがとうございます」


ユフィニー家の方々の顔が綻ぶ。

本心だと伝わったのだとわかってほっとする。


お世辞だと取られたくなかった。

本当に好みなのだ。


先日飲んだものと少し味が違うがこちらも美味しかった。

この味の揺れがユフィニー家が過小評価する所以(ゆえん)なのだろう。


ある程度は仕方ないことだ。

だが技術者を多く抱えるユフィニー家では納得できないのだろう。

改善できるところはできるだけ改善したいと思うのは無理もないことかもしれない。


だとすると販路の他は加工技術かお茶の木の育成の専門家の手配か。

うちの領にはいないので伝手を辿るしかない。

それができれば味も安定していくだろう。

ユフィニー家も領民も納得することだろう。


ただ。

この優しい味が消えてしまわないことを祈りながらもう一口お茶を飲んだ。


読んでいただき、ありがとうございました。


次回は3/27(金)です。

また金曜日更新に戻ります。

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