終末の裏事情
ユカリの実家を出発して、夕方になる頃には適当な場所を見つけて停車。
もらってきた食品でしっかりとした夕食を作ったからユカリも満足した様子。
「これさ、考えようによっては食品とかがいつも手に入るって思えば今の状況はラッキーだよね」
「そうだね。でも意味のわからない事象で手に入れた物って、なんか抵抗感ない?」
「気にしてたらこの世界で生きていけないよ?」
全くそのとおりなんだけど、逞しいなぁユカリは。ただ、何処でも同じように手に入る保証はないし、支払いとかの問題もある。
世界がこんな状況で払う意味があるのか?と言われたら…ね。気にしなきゃいいのかもしれないけど、そこまではまだ割り切れない。
「カオリ…」
「うん…?ちょ…ユカリ!?」
「いいでしょ?もう夜だし…」
「……わかった。先にシャワー浴びたかったけど…」
「外は雨だよ?雨で水浴びする?」
「風邪引くから。もう十一月なんだよ?…はぁ、雨が降ってるならシャワー用の水が貯められるからいいか」
「嫉妬させた分わからせるからね?」
「え…」
なにされるのあたし…。
ーーーー
ーー
雨音で目が覚めて、時計を見るとまだ5時過ぎ。
嫉妬をぶつけられたというか、思いっきりわからされたというか…。ユカリの愛は重いって身をもって実感した。今後は気をつけよう。
気だるい体をなんとか起こし、ふと思い出したことがあって後部座席のベッドから助手席へと移動。
グローブボックスを開けると、車の説明書や車検証の他に、このキャンピングカー専用の説明書もしっかりと入ってる。
その説明書のナビの項目を探して開く。
……なるほど…。この車についてるナビは、地図情報がSDカードに入っていて数年間は無料で地図の更新もしてくれると。その後は有料になるのね。世知辛い…。
ということは、別のSDカードを手に入れてどうにかこちらの地図情報を書き込むか、もしくは初めからこちらの地図情報の入ったSDカードを手に入れればこのナビでも使えるかもしれない。
「カオリ!? カオリどこ!?」
「前の席にいるよ、大丈夫」
ユカリの大きな声に少しびっくりしてしまった。
ユカリは後部座席から前へと身を乗り出してきてあたしの腕を掴む。
「…よかったぁ…。起きたら隣にいないから…」
「ごめんね、ちょっと気になったことがあって」
「一人にされたかと本気で怖かった…」
「絶対にしないよ。それだけは誓うから」
「うん…」
ユカリを宥めて、何をしていたかの説明。
「なるほどね…説明書、私にも見せて」
手渡した説明書をユカリは真剣に見ているから邪魔もできず。
今日は雨だから、ソーラーでの充電はあまり期待できないな。
タンクに水は貯まっただろうけど、濾過されるとはいえ果たして利用して大丈夫なのだろうか?
「よしっ、理解した。 ってカオリは何を難しい顔してんの?」
「…ほら、雨だから充電は期待できないなーとか、水は貯まるけど使っていいのか不安で」
「ああ。それ、新聞に書いてあったなぁ。ちょっとまってね…」
ユカリは実家から持ち込んだ新聞の中から一部を抜き出して渡してくれた。
「色々なところがチェックした結果がしっかりと書かれてたよ」
「へぇー。新聞も役に立つんだね」
「全部を鵜呑みにするのはどうかとは思うけどね。一応、こちらのきちんとした機関が調べた情報らしいから」
教えてもらったページを見てみると、雨水や川や海の水からは異常は発見されてないと。
ただ、汚水処理施設からは異常が見つかっているから、排泄物だったりからの影響が疑われてる。でも汚水の処理をした後には問題がないから処理できないものでもない…ね。
だったらなんでこんなに爆発的に広がってるのよ…。
「これ、真に受けていいのかな」
「さあ?一応そういう情報もあるよってだけだし。たださ、川はわからないけど、雨に異常があるならカオリの家いたコイが無事なのはおかしいでしょ」
…確かに。とはいえだ、魚には影響がないだけの可能性もあるからなんとも…。
「飲水はミネラルウォーター使おう。洗濯とかくらいなら大丈夫じゃない?」
「そうね…」
シャワー浴びたいのに…。
わがままも言ってられないから、先ずは街へと向かう。
「カオリ、行き先はカー用品店ね。カードのはホムセンでは無理だと思う」
「わかったよ。あるといいけど…というか使えるといいけどね」
「駄目そうならポータブルナビ貰ってきたらいいよ」
「貰うって…」
「いやー流石に財布の中もスッカラカンな上に、こちらと貨幣が同じかもわからないでしょ」
「言われたらそうね…」
「人もいないんだからもう割り切るしかないよ。私達だってもうお金を下ろすことすらできないだろうからね」
「その割にホムセンで支払いできたんだよね?」
「……」
「まさかユカリ!?」
「しようとはしたよ! でもできなかったんだから仕方ないでしょう!?」
もう…。どおりでおかしいと思ったよ!
「あたし嘘つかれるの一番嫌い」
「…そうだったね、ごめん…。今度からは正直に言うよ」
「そうして」
しばらく無言が続き、耐えかねたのかユカリは車についているオーディオに自分のスマホをつないで音楽をかけ始めた。
ユカリの好きな古い洋楽…。いつもかけているからあたしも聞き慣れてて…。
二人で口ずさみながら街へと走った。




