第20話 : grocery
時は12月の初め。凛がファミレスのバイトに入ってから、早くも2ヶ月が経とうとしていた。神城と翠の間の小競り合いは続いていたが、店内の雰囲気はすっかりクリスマスムードで賑やかだ。
そんな中、店長が興奮気味に発表した。
「みんなー!今日は店長の奢りで、エアビ借りて鍋パーティーするぞー!日頃の感謝だ!」
凛の瞳がキラキラ輝く。
凛「店長、エアビとか借りるんだ…面白そー!」
その直後、凛は神城の横にいた石田を振り返り、満面の笑みを見せた。
凛「石田くんも来るよね?」
石田は無表情ながらも、小さく頷く。
凛「やったー!」
神城は、そのやり取りを内心イライラしながら見ていた。そして、いつものように虚勢を張る。
神城「まあ、行ってやってもいいか」
参加者は総勢10名。そして、今日の買い出しメンバーは、凛と翠、店長、神城、そして石田の5名に決まった。まさに、恋の戦場と化したスーパーマーケットへ向かうことになった。
スーパーの生鮮食品売り場。
「鍋の具材は、鶏肉がいいですか?豚肉がいいですか?」凛が神城と石田に尋ねた。
神城は凛の笑顔に照れながらも、カッコつけようとする。
神城「当然、強いのは鶏肉だろ! みんなもタンパク質はとれよ!(謎のカメラ目線)」
石田「どちらでも構いません」
「うーん、じゃあ鶏肉で!神城くん、強いのは鶏肉だよね!」凛は神城の方を見て笑い、鶏肉をカゴに入れた。
(っしゃあ!)神城は心の中でガッツポーズをした。
すると、その横から翠の冷たい声が飛ぶ。
翠「お姉ちゃん、なんでこのヤンキーの意見採用したの?豚肉の方が安くて量が多い。経済的じゃない」
神城「おい!ヤンキーって言うな!それに、鶏肉の方が体にいいだろ!」
翠「あ、そう。じゃあ自分でカゴ持ちなよ、ヤンキー」
翠は神城に自分の買い物カゴを押し付け、さっさと離れていった。
神城「おい、こら!人の弁慶の泣き所に蹴り入れる女が何言ってんだ!」
凛は、そんな二人のやり取りを見て、コロコロと楽しそうに笑っている。
凛「あー、もう、本当に神城くんと翠は仲良しで助かりますねぇ。」
店長「ああ、神城はああ見えて面倒見がいいからな。妹さんも、あれが甘えてる証拠だよ」
凛は目を細めて、優しい笑みを浮かべた。
凛「そうですよね。翠もあんなに心開く相手、初めてかもしれない。本当に神城くんがいてくれて良かった」




