表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
派遣、恋に落ちる  作者: 竹子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/96

第21話 : fire

エアビを借り切っての鍋パーティーは、最高潮に盛り上がっていた。神城は、なぜか翠に「お兄様」と呼ばせてみたり(速攻で弁慶に蹴られた)、石田が凛に淡々と具材を取り分けているのを睨んだり、と大忙しだ。

「さーて、そろそろ〆の雑炊タイムだねー!」店長が声を張り上げた。

みんなの視線が鍋に集中する。グツグツと煮立つ出汁に、それぞれご飯や卵を投入し始めた。

その時、完全に酔っぱらっていた凛が、手元にあったボトルを手に取った。

「よしよし、もっと美味しくなーれー!」

凛はそう言って、醤油と間違えて、食卓に置いてあった調理用の油を、鍋にドバドバと、惜しみなく大量に注ぎ込んだ。

ヒュンッ!ドカンッ!

鍋の中の油が一瞬で引火し、火柱が天井まで立ち上った! まるで特撮番組の爆破シーンのような、けたたましい音と熱が部屋中に広がる。


「ギャーーーッ!」

「火事だー!」

参加者10名は皆大パニック。テーブルはひっくり返り、鍋は宙を舞い、人々は蜘蛛の子を散らすように玄関へと殺到した。

「神城!早く逃げろ!」店長が叫ぶ。

神城も一瞬、その場に固まったが、すぐにハッと気づいた。

(数えろ!人数を数えるんだ!)

慌てて振り返るが、もうほとんどの人間がエアビの外へ飛び出している。

神城「ま、待て!凛ちゃんは!?」

炎と煙で視界が悪い中、彼は必死に凛の姿を探した。

神城「くそっ!凛ちゃん!翠ちゃんもいない!二人とも逃げ遅れたのか!」

炎の中で、かろうじて見える二つの影。それが凛と翠だと確信した神城は、躊躇なく、出口とは逆方向へ向かって走り出した。

「待て!神城!危ないぞ!」

店長の声が背後から飛んでくるが、彼の耳にはもう届かない。

(凛ちゃんは俺が守る!)

彼の頭の中では、3年前の屈辱と、凛がくれた優しさがフラッシュバックする。今度こそ、本当のヒーローになる時だ。

神城は、煙が充満するリビングへ飛び込んだ。炎の熱が肌を焼く。

「凛ちゃん!翠ちゃーん!」

彼は叫んだ。その時、彼の目に飛び込んできた光景は…

そこには、凛が、ぐったりと眠りこける翠をまるで俵でも担ぐかのように肩に担ぎ、冷静沈着に、煙の少ない壁際を伝って玄関へ向かっている姿だった。

凛は神城に気づくと、眉をひそめて言った。

凛「神城くん!何してるの!早く逃げなさい!」

神城「え?」

神城は、ぽかんと口を開けて、その光景を呆然と見つめた。

(え?あれ?凛ちゃんが翠ちゃんを…?俺は助けに…あれ?)

完璧なヒーローの登場シーンを思い描いていた神城は、あっけなく拍子抜けしてしまった。


しかも、凛は冷静そのもの。そして、その担がれた翠は、気持ちよさそうに爆睡している。

「神城くん!何やってんの!早く!」

凛は、逃げ遅れた神城を一瞥し、翠を担いだままエアビの玄関をくぐり抜けた。

残されたのは、コミカルなBGMが似合いそうな、呆然と立ち尽くす神城一人。

炎と煙が充満する中で、神城は取り残された。

(あれ?俺……取り残された?)

ヒーローになるはずが、まさかの人質(?)と化す。神城の、恋と勇気の物語は、思わぬ方向へと大炎上していった。


その後、神城は自力で脱出したという

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ