静寂の破壊者
人の願いは、かみさまが叶えてくれるんだよ──
人間の世界を眺める名前のない世界には「hope」と呼ばれる人の形をした願いを叶える「かみさま」が存在した。
彼らは超常なる力を使って、人の願いを感知し、叶えていくけれど、それはたったの一部分だ。叶わない願いがあるのは、彼らはあくまで「hope」という生き物であり、本当に「かみさま」というわけではないからだ。例えば「死んでしまった人を蘇らせる」ということはhopeにはできない。どんな超常の力を使っても叶わないのだ。それに近いことをするのは可能だけれど。
何の見返りも求めることなく、hopeが人のために人の願いを叶えるのは、hopeがhopeとして存在を許されるための義務だった。けれど彼らが役目を果たすのは義務感からではない。というか、人の形をしているだけで、彼らは人ではないし、感情はない。だから義務感なんてものはないし、やる気もない。ただそうあるようにそこにいるだけだ。
だから、存在証明である歌も、彼らの胸を打つことはない。
……人の世界に、グレイの目をした少年が佇んでいた。世界の中に佇むことが望みであるかのように、灰色のその要望は空気に溶け込んでいた。
彼は雨と、朝日が好きな少年、グレイ。
ティアと共に暮らすグレイが、抱える秘密と、hopeが危険視する存在「静寂の破壊者」が一つの線で結ばれたとき、世界の平穏は、音を立てて壊れていくだろう。




