表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/96

あとは任せて

突如彗星の如く現れたチミーに、近くにいたユウリが笑顔を見せた。


「目が覚めたんだね...!」

「後で色々、聞かせてもらうよ。.....起きてすぐこの事情を聞いて、すっ飛んできた。」


有り余るエネルギーを放出するように、チミーの周囲には激しい電流が走っていた。

ヴァルグリーズによって負傷した皆を見渡したチミーは、気合を入れるように口元を引き結ぶ。


「...あとは任せて!」


そう言い残すと、チミーは瞬間移動でもしたかのようなスピードで消え、ヴァルグリーズの元へと駆け出した。

先程までチミーがいた場所に、軽やかな土煙が舞う。


「おぉ.....らあぁっ!!」


全身から電気を放出させながら一直線に向かっていったチミーは、足を踏み込んでジャンプする。

空中で一回転したチミーは体を真横に倒し、スラリとした脚を伸ばして蹴りの構えに入っていた。


ヴァルグリーズはすぐさま防御姿勢を取るべく半身になって腕を動かし、左腕を盾のように構えることで蹴りを受ける。


激しい閃光を飛ばしながら、ヴァルグリーズが腕を振ってチミーを払い飛ばす。

勢いよく地面にぶつかったチミーは跳ねるように飛び起き、腕を伸ばしてエネルギー弾を発射。


再び受け止めた左腕はエネルギー弾が持っていた熱量によって大きく損傷し、漏電させながらだらんと腕を垂らす。

しかしすぐさま元通りになった様子を見て、ヴァルグリーズの持つ力を察したチミーが舌打ちをする。


「あー.....めんどくさいわね。」


独り言を呟いたチミーに向かって、ヴァルグリーズが突進。

攻撃を避けようと上半身を傾けたチミーだったが、近くに桜が居ることに気が付いた。

足を止めて歯を食いしばり、ヴァルグリーズの繰り出した右ストレートに向かって両腕を大きく伸ばす。


「『防護壁(バリア)』ッ!!!」


チミーを中心として、チミーと桜を包む形の透明な半球のバリアが展開される。

バリアに激突したヴァルグリーズの右ストレートから、周囲の砂を舞い上がらせる程の衝撃波が走った。


「チミーちゃん、奴は動力源を止めない限り、ずっと再生し続けるの!」


後ろにいた桜が、チミーにヴァルグリーズの仕組みを教える。

チミーは前を向いたまま、桜に問いかけた。


「動力源がどこにあるか、分かる?」

「動力源かどうかは分からないけど心臓の所に、目立つ部品があったよ。」

「...助かる。」


桜の言葉を聞き、額に汗を流しながらニィと笑みを浮かべたチミー。

左腕は伸ばしたままで、右脚と右腕を引いた。


拳を握り、目の前で留まっているヴァルグリーズの拳に狙いを定める。


「だッ!」


体を(ねじ)り、握りしめた拳を思い切り突き出した。

空気を殴り、そこから発生した衝撃波が拳の威力をそのまま乗せ、ヴァルグリーズの拳を弾き飛ばす。


ヴァルグリーズが一瞬よろめいたその隙を狙い、チミーは足を踏み込んで走り出した。


「私達も...!」


チミーの加勢をしようと前に出したユウリの体を、篭手で覆われたライカの腕が遮る。

片耳を折って不思議そうな顔を向けたユウリの気持ちを読み取り、ライカが止めた理由を説明した。


「やめておいたほうがいいと思います。両者共に、見た目よりも遥かにとんでもない威力で殴り合ってます。下手に行くと、巻き込まれますよ。それに.....」


ライカはユウリを遮っていた左手で、自身の顔を覆っていた甲冑のバイザーを持ち上げる。

綺麗な蒼の瞳は、希望に満ちた輝きでチミーを見ていた。


「勝てますから、今のチミーさんなら。」




フィギュアスケート選手のように、チミーは高速で地面を滑走しながらヴァルグリーズと殴り合う。

ヴァルグリーズの無機質な顔が、どこか焦りを帯びているように感じ始めた。

ヴァルグリーズは肩からいくつかの小さな機関銃を展開し、一斉にチミーを捕捉する。


「ッ!」


ターゲットから逃れるべく、銃口の奥が爆発したのを目視したチミーが急停止。

しかしヴァルグリーズはそれすらも読んでいたようで、既に機関銃は止まったチミーへとロックオンされていた。


停止したチミーの元に、集中砲火が浴びせられる。


しかし、その弾丸はチミーには届かなかった。

まるで弾丸の持つ時間を止められたかのように、放たれた弾丸は空中で静止している。


構えたチミーが『永遠なる供給源(エターナル・エンジン)』を使用し、弾丸の持つ運動エネルギーを奪ったのだ。

空中で静止している弾丸のうちの一つを手に取ったチミーは、弾丸をヴァルグリーズに向けて指を添える。


「返すよ!」


指を弾き、弾丸を射出。

ヴァルグリーズの機関銃が持つ弾丸は大型の50口径弾。

機関銃から放たれるそれは15000ジュール前後のエネルギーを持つとされており、これは野球選手が放つ豪速球の100倍以上とも言われている。


何発も放たれたそのエネルギーを一気に奪い、一つの弾丸に集約させて返したのだ。

弾丸は音を抜き去って空を突き破り、ヴァルグリーズの肩に大穴を開ける。


「っつ〜.....上手く当てるのってムズいわね。」


硝煙溢れる指を払いながらチミーが呟く。

命中した部分はキレイな大穴が空いたものの、すぐに再生されてしまった。


やはり桜の言う、身体の中心にある動力源を叩かねば。


肩を撃ち抜かれてダランと垂らしていたヴァルグリーズの腕が起き上がる。

金属同士が重くぶつかり合う音を立て、両手首に仕込み銃のようなものが出現した。


接近するチミーを睨みつけ、ヴァルグリーズは腰を落として銃を構える。


「ッ!!」


激しい閃光と共に、ヴァルグリーズの両手首から極太のレーザーカッターが放出された。


大地を難無く削り取るレーザーカッターを飛んで避け、滑りながら上半身を倒して避け、時には手にエネルギーを込めてレーザーカッターを弾いたり。

巧みに回避しながら、チミーは徐々にヴァルグリーズの元へと距離を詰めていく。


チミーは地を蹴り、宙に浮かんだ。

レーザーカッターが当たるギリギリの位置に密着しながら、手首から腕に沿って駆け上がっていく。


ヴァルグリーズは先ほど桜を攻撃した爆竹のような爆発を放つが、チミーはエネルギーの膜を纏うことで爆風を無効化。

着実にヴァルグリーズの胸部に接近していた。


ただでさえ体力が少ない上に、今は意識を取り戻して間もない。

以前までの自分なら、既に力尽きていただろう。


しかし『宝珠争奪戦』を経る事で、並大抵の負荷をものともしない体力を得た。

そんな状態のチミーは、無敵に等しい。


ついにヴァルグリーズの胸部へと到達したチミーは、振りかぶった右手を大きく開く。

ヴァルグリーズの胸にある装甲の繋ぎ目に、エネルギーを込めた右手を思い切り突っ込んだ。

激しい電気を撒き散らしながらも、装甲を引き剥がそうと力を込める。


「熱っ...!!」


ヴァルグリーズの装甲を歪め、脚を使って穴を広げていく。

電線をかき分けて暗い内部を覗き込むと、中はコクピットのようになっていた。


人は乗っておらず、代わりに『あるもの』が座席の部分に置いてある。


「...あれか?」


座席の下に、小さな橙色の球が置かれていた。

暗いコクピット内で一際輝きを放っていたそれは多数のケーブルに繋がれており、これが桜の言っていたものだろうと推測する。


チミーは僅かに開いた隙間に腕を突っ込み、その球に向けて手を伸ばした。


しかし、その手は届かなかった。

チミーの身体は突然急激な速度で後方に移動し、コクピットから放り出されてしまう。

ヴァルグリーズがチミーを掴み、崖に叩きつけたのだ。


「痛ぁ〜....!あとちょっとだったのに!」


背中から叩きつけられ、巨大な落石がぶつかった頭を撫でるチミー。

だが、まだ全然戦える。

チミーはヴァルグリーズを睨んで膝を曲げ、衝撃波と共に再び飛び出した。


砲弾のような速さで突撃したチミーをヴァルグリーズは左手で受け止める。

しかし、さらに加速したチミーによって彼女の纏う空気がドリルのように高速回転し、ヴァルグリーズの左手が千切れ飛んだ。


ヴァルグリーズが大きく仰け反った隙に急接近し、再び装甲に密着することに成功する。

先程と同じように隙間へ手を突っ込み、再び装甲をこじ開ける事に成功した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ