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勝負は、始まったばかりだぜ?

褐色の男性は手を広げ、高らかに笑う。


「さぁ、初陣だ!まず一人、狩らせてもらおう!」


褐色の男性がそう宣言すると同時に、髑髏顔の周囲を取り囲んでいた『人ではないもの』が動き出した。

粘土細工のように醜悪な姿をした『人ではないもの』の体には、ところどころ他の生物らしき要素があり、まるで合成獣(キメラ)である。


そんな合成獣(キメラ)が髑髏顔に狙いを付けるが、髑髏顔には動揺する気配は無い。


「...フン。」


くだらない、とでも言いたげな息を吐いた後、背中に装備していた漆黒の大槍を掴む。

豪風の如く突き出された大槍の穂先が、先陣を切って突っ込んできた合成獣(キメラ)の胸部を無慈悲に貫いた。

泥を突いたかのようにあっさりと貫通した合成獣(キメラ)の背中から、噴水のように鮮血が吹き出す。


素早く槍を振って突き刺さった合成獣(キメラ)を落としつつ、次から次へと襲い来る合成獣(キメラ)を軽々と蹴散らしていく。

髑髏顔の動いた距離はたったの数歩。

合成獣(キメラ)の動きが単調なのもあるが、この髑髏顔がかなりの達人である事を物語っていた。


「こんなものか?貴様も、俺を殺すことはできなさそうだ.....」


明らかに囲まれた状態から戦況が一転し、有利な立ち位置になっているにも関わらず悲しげな様子の髑髏顔。


「まぁそう言うなよ。勝負は、始まったばかりだぜ?」


対して白衣の男は、合成獣(キメラ)達を蹴散らされたにも関わらず余裕の笑顔を保っていた。


彼にもまだまだ、手札がありそうだ。

先の見えない状況の中、両者の横方向から突如大きな声が響き渡る。


大きな声に反応して髑髏顔と白衣の男性、そして傍観者であるチミーが振り向くと、そこには1人の男性が立っていた。


金髪でオールバック、鋭い赤目が光るアメリカンなスタイルの男性だ。

不意打ちをするわけでもなく、大声で自身の存在を宣言するその様子。

単なるバカなのか、それともかなりの自信があるのか。


「へえ!新たな『参加者』か!」

「俺の名前はジョージ、『鉄の嵐』ジョージ・ガタストン。貴様らを葬る男の名だ!!!」


大声でそう名乗ったジョージの背後にある空間から、まるで虚空から召喚でもされたかのように無数の銃が出現する。

空を埋め尽くすほどの量だ。

それらの銃口が、一斉に白衣の男と髑髏顔を狙う。


気付けば、ジョージは右手を高々と掲げていた。


()ぇーーーーーい!!!!」


ジョージがその手を振り下ろすと、空を埋め尽くしている銃が一斉に火を噴いた。

辺りの草や瓦礫は跡も残さず燃え飛び、銃弾が雨のように地面へ降り注ぐ。

滅茶苦茶だ。

まさに『鉄の嵐』である。


「なんだとぉっ....!?」


余裕の笑みを浮かべていた白衣の男性の表情が一変。

危険を察知した彼が何やら術式を唱えると、自身の目の前に、巨大な亀の甲羅のようなものを携えた合成獣(キメラ)が出現した。

合成獣(キメラ)がその甲羅で銃弾を防いでいる間に、白衣の男は退散。


一方、髑髏顔は全身に銃弾を浴びまくっているにも関わらず、不動。

まるで効いていない様子だ。


「へぇ、お前、面白いな。」


ジョージは逃げた白衣の男など気にする様子もなく、その興味は髑髏顔に向いていた。

髑髏顔は彼からの視線に、感情無き双眸で返す。


「...お前も、俺を殺せないのか?」


純粋な問いかけか、それとも挑発のつもりか。

絶妙な声色で発せられた髑髏顔の言葉に対し、ジョージはニヤリと笑みを見せる。

しかし先程とは違い、少し苛立ちを孕んだ表情だった。


「いいじゃねぇか...やってやるよ。テメーがスポンジみてーに穴だらけになるまでなァ!!!」


そう言ったジョージが再び右腕を高く掲げる。

先ほどよりも遥かに多い量の銃が髑髏顔を狙うが、髑髏顔は依然として無反応。


「さあて、この量ならどうなるかな?」


ジョージはニヤリと笑い、合図を放つため息を大きく吸った。

その瞬間。


ジョージの腹部を、『何か』が貫いた。


「がっ......!?」


ジョージが浮かべていた笑みは、一瞬で消え失せていた。

下ろした視線の先、彼の腹部には、大きな赤色の染みができていた。


「カカッ!カカカカカカッ!!!!」


笑い声。

人の笑い声とは似ても似つかない、まるでからくり人形のような不気味な笑い声が鳴った。


ジョージの腹を貫いていたのは、1本の腕。

そこから伸びる腕の持ち主が、ジョージの背後で笑っていた。


白塗りの肌に、赤く大きな鼻。

派手な衣装を纏ったその姿は、まさにサーカスのピエロのそれである。


突如現れ、ジョージの腹部を腕一本で貫いたピエロ。

呆然とした顔で腹部を眺めていたジョージは振り向くと、怒りを顕にした表情へと変化させた。


「チッ.....クショウがぁっ!!!」


ジョージの怒りの声に反応し、周囲で一斉に銃が出現。

背後に立っている、ピエロを狙っていた。

ジョージは口から血が溢れそうになるのを抑えながら、大きく息を吸う。


()ぇーーーーーい!!!!!!」


ジョージによる血混じりの号令と共に、銃の大群が火を噴いた。

銃弾は空を切り、四方八方からピエロへ殺到する。


しかしジョージは忘れてしまっていた。

自身の身体には、ピエロの腕が突き刺さっているという事を。


ピエロは身を翻し、ジョージの腹部を貫く腕を動かす。

連動して動いたジョージの身体が、襲い来る銃弾を全身で受け止めた。

何度も何度も撃ち込まれる銃弾に、ジョージの身体が痙攣のように小刻みに揺れる。


「オマエ、ヨワイ。」


銃声が鳴り止んだ後、ピエロは笑い声を混ぜながらそう呟く。

ジョージの身体を貫いている右腕を勢いよく振りかぶり、彼の肉体を真っ二つに切り裂いた。


赤い鮮血が噴き出し、ジョージが絶命する。


「キキ!キキ!キッキキ...ケケッ!!」


あっという間に絶命したジョージ。

そんな光景が可笑しかったのか、ピエロは腹を抱えて引き笑いを起こした。


これが.....『宝珠争奪戦』。


ギルガンが死ぬ光景を見るよりも、遥かに凄まじい。

他人を殺す事など何の躊躇もない奴らが、平気な顔をして互いの命を奪い合っている。


平和な世界で生きてきたチミーにとって、そんな『宝珠争奪戦』の参加者達は『異常』であり、『恐怖』だった。


白衣の男が去り、ジョージは死亡した。

チミーを除いて残っているのは、髑髏顔とピエロの2人。

しかし髑髏顔が槍を構えると、ピエロはもう満足したとでも言いたげに笑い声を上げ、とんでもないスピードでどこかへ走り去ってしまった。


ただ一人の髑髏顔が残っただけとなり、煉瓦の道に静寂が戻る。


チミーは髑髏顔に気付かれないよう、ゆっくりとその場を離れることにした。

煉瓦の道を歩いている最中、先ほどの光景が掘り返される。


あんな簡単に、人が死ぬなんて。


チミーは少しパニックになっていた。

しかし直後、自身の顔を叩いて首を勢いよく横に振る。


こんなんじゃダメだ。

私は桜を助けるために、この場にいる。

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