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イケメン女と男の娘  作者: いっくらどーん
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「はい!こちら紅茶のロールケーキセットになります!」


「あ、ありがとう…」


結局先ほどの少女に強引に引きずり込まれ、こうしてお菓子の並んだショーケースの横にあるちんまりとしたテーブルに着いている。


目の前に運ばれてきたロールケーキにはたっぷりと生クリームが詰まっていて、とても美味しそうだ。一緒に付いてきた紅茶も良い匂いである。


こうなったら存分にケーキを堪能しようと思い、目の前のケーキに集中する。


一口食べると紅茶の香りがふわっと広がり、甘すぎない絶妙な甘さが感じられる。ふわ〜と迷宮帰りの疲れた身体に染み渡り、なんとも言えない幸福感に包まれた。


「美味しいでしょ。あたしが焼いたのよ!」


そう言ってリモニカの目の前に座って頬杖をついてにこにこしながら見ているのは先ほどの少女である。


「奢ってあげるからミオカ様の話してよね!」


「…メリーナ、やっぱそれが目的なんだ…」


きらきらと期待を込めた瞳を向けられたリモニカは、はあ、とため息をつく。この少女、メリーナはミオカのファンなのである。


ここパティスリーめろむには前にミオカと二人で来たことがある。その時も甘い匂いに誘われ、店に入りたそうにしているリモニカを見て、遠慮するリモニカを引き連れ、ミオカが店に入ったのである。


そしてその時初めてここの看板娘であるメリーナに出会った。メリーナは初めてミオカを見た時、一目惚れしてしまったそうなのだ。


そのあとリモニカは友達になりましょ!と言われ、また店に来ないかと誘われ、なんだかんだでケーキの誘惑に勝てずに店に来てしまっている。今では気兼ねなく話せる数少ない友人である。


そして毎回ミオカのことについて色々聞いてくるのだ。


「はあ、ミオカ様って本当すてきよね。まるで王子様みたい、、あなた達を初めて見た時カップルかと思ったけどまさかリモニカが男の子だなんて思わなかったわよ。こーんなに可愛いのに。美男美女って感じなのに。」


「…。」


「でもリモニカが男の子で良かったわ!同性なら一緒に住んでても問題ないものね!ミオカ様に彼女でもできたらあたしどうにかなっちゃいそうだわ。」


しかし、メリーナには悪いがミオカが女だという事は言っていない。そこはミオカに口止めされている。


あれ、でもよく考えたら異性の人と一つ屋根の下って問題あるのか…?


「まあ、男のあなたにはミオカ様の魅力はわからないでしょうけど。」


ミオカの魅力。家に着くと魔法を解いて女に戻ったミオカはとても魅力的だ。そして自分だけ女のミオカを知っているという優越感もあるかもしれない。女の、本当のミオカは男に扮している時よりももっと美しい。今朝見た体だって、、


「…あんたなに赤くなってんのよ。具合でも悪いの?」


「っえ!あはは、は」


「まさか…リモニカもミオカ様が好きなの!?」


「ち、ちがうよ!第一男同士じゃないか!あ、そろそろミオカも帰ってくるかもしれないから僕行くよ、ケーキごちそうさま!じゃあ、また!」


「なによ急に慌てちゃって、冗談よ。今度はミオカ様も連れてきてね!!」


本当に結構時間が経っていたのでリモニカは急いで家に帰った。



…そのリモニカの様子を上空で見つめる者があった。


上空に浮いているその人物は胸元が大きく開いた白のドレスを纏い、ウェーブがかった薄紫の髪をたなびかせ、つり目がちの紫の瞳を遠くのリモニカに向け、


「ああ、なんて、なんて可愛いこなのかしらあ、食べちゃいたいくらい!…でも、ミオカにふさわしいかは別だわ。」


真っ赤な唇は弧を描いてニヤッと笑うとフッと姿を消した。




一方、魔女テルミラの薬屋。入り口には本日閉店の看板がさがっている。薄暗い店内の壁は棚になっていて所狭しと並べられたビンには怪しい色の液体や謎の生物が入っている。


その閉店後の店内に二つの影が。テルミラとミオカである。テルミラは真っ黒いローブを羽織り、ボサボサの長い髪、目にはくまが酷く、いかにも怪しい魔女という風貌である。


「くっくっくっ、おまえさんまだそんな格好しているのかね。ここには他に誰もいないんだから変身を解けばよいのに。」


「うるさいな、いいだろ。テルミラこそ髪とかもっと手入れしたらどうだ。せっかくの美人が台無しだ。魔法も質が落ちるぞ。」


「男のおまえさんに美人と言われると気恥ずかしいの。くくっ。」


「…で、何かあったのか?」


「災厄の魔女がこの街に来たようじゃ。お前さんに会いに来たんでないか。」


「っ!!」


…あの人が、ここに来た。今度はどんな気まぐれなんだ。もしかしたらリモニカに危険が及ぶかもしれない、気をつけないとな。何も起こらないといいけど、、



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