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「メイドさんは姫様の旅路を見送るようです」


「ふぃーー!!今日は本当に楽しい一日だったな、ファナティ!!」



 現在の時刻、午後9時05分。

 ロイヤルディッシュは無事に閉幕、ルートルインとファナティシアは自室に戻って湯浴みを済ませ、就寝前のゆるりとした時間を過ごすべく、自分のベッドに身を預ける。



「ふふ、姫様たちも、皆一様に喜んでおられましたね」

「ライラなんかおにぎりを両手に持って食べ比べしていたからな!!絶対に配信を忘れてたぞ、あの顔は!!」



 ロイヤルディッシュ・ランチタイムを終えた後も、ルートルイン達はおにぎり・ご飯料理に舌鼓を打ち続けた。

 ディベートバトルという疑似的な勝負事から解放された以上、その後に残るのは仲の良い友達とお食事会。

 みんなで同じ料理を一つ食べては、喜び。

 また一つ食べては驚き……、そうして全部の料理を笑顔で味わったのだ。



「それにしても、今日の試みは大成功だったのだ!!視聴者の反応も凄かったしな!!」

「最終推しポイントでは、2500万ポイントを上回る歴史的大勝利。流石です」


「うむ、こういうサプライズは良いな。またやりたいぞ!!」

「おっと……、その前にお聞きしたいことがありますね。ルートルイン姫様がたどり着いた日本とやらについてです」



 またやりたいという主人の言葉を肯定も否定もせず、ファナティシアは本題を切り出した。

 ルートルインの就寝時間まで、あと50分。

 それまでに、可能な限りの情報取得と異世界対策を行いたいのだ。



「それはもう、すっごい世界なのだぞ!!文化レベル、特に、機械工学は我が国とは比較にならない程に高いのだ!!」



 ルートルインが語る日本の情景は、到底、容易に信じられるものではない。

 王族が使う特上品と同等品質の製品。

 ご飯を始めとする美味な食事。

 歩いて数分の距離で営業している、凄まじい品ぞろえの店舗。


 それらは、ギオンコロニ帝国では、目指すべき未来として語られる夢物語だ。



「そのような世界が……、姫様の興奮も分かります。ただ、私としましては御身の安全を優先させたい所です。まず、それらの体験をどのようにして得たのでしょうか?」

「うむ、それはだな……」



 ルートルインの目が泳ぐ。

 それは、現在に至るまで『イナト』の存在を伏せているから。

 一人暮らしの成人男性の部屋に転がり込む、それが眉をひそめられる事態であることなど、十分に承知しているのだ。


 それでも、ルートルインはファナティシアに真っすぐな視線を向けた。

 論理観や常識なんかよりも、従者に向ける信頼の方が大切だと分かっている。



「私が辿り着いた先は、イナトという一般の成人男性の部屋だ。ざっと20~30歳の間ってところだな」

「……それは」


「それで、部屋に帰宅して私を見たイナトが、最初に何を気にしたと思う?」

「姫様を美味しく召し上がる方法でしょうか?」


「くす、それがな……、警察に捕まりたくないからと、私に出て行って欲しそうにしたのだ!!」

「こんなに可愛らしい姫様なのに!?」



 仮に、ルートルインの部屋に誰かが侵入した場合、問答無用で投獄される。

 たとえそれが転移魔法事故によるものであったとしても、懲役10年は免れない大犯罪だ。


 だが、家主が投獄されるとはどういう事なのか?

 何らかの歪な法則があるのでは?と邪推するファナティシアは、ルートルインの肩に手を置き、静かで重みのある声で告げた。



「ルートルイン姫様。有事の際には容赦してはなりません。躊躇なく全力で制圧するのです」

「くはは!!全力なんか出さずとも余裕で勝てるぞ、なにせ、日本には魔法知識がないからな!!」


「魔法知識がない……?」

「魔法の発動は出来る。試したからな。だが、魔法を使う基盤が何もない。あちらの世界では魔法こそがファンタジーなのだ」



 想定外のことを言われ、ファナティシアはさらに混乱する。

 魔法なくして、どうやってインフラを整備するというのか。

 ましてや、ギオンコロニ帝国よりも発展しているなど、にわかには信じがたい。



「電気工学という、魔力に代わる理知があるのだそうだ。ま、それも凄いが、真に恐るべきことがある」

「姫様の武力でも太刀打ちできないと?」


「違うぞ。日本は、いや違うな。イナトは優しいのだ」

「優しい?」


「日本はおそらく、個別魔法による格差のような物がない。だからこそ、誰しもが平等に法律に従い、そして、その最たるものは私のような未成年者の保護、つまり弱者救済なのだそうだ」

「弱者救済……ですか?」


「行く当てのない子供を泊めるだけで、警察から疑われるそうだ。何かやましいことは無いかー!?とな」



 ギオンコロニ帝国にも、薄暗い闇は存在する。

 貴族と市民の絶対的な力の差、一方的な命令権など、あって当たり前の文化だ。

 さらには、公に禁止されている人身販売や隷属のごとき雇用契約も、世界のどこかしらには存在するだろう。


 ルートルインは姫であり、国を背負う者。

 ロイヤルディッシュのような綺麗な世界だけを生きている訳ではない。



「だが、イナトはリスクを承知で私を受け入れてくれた。そして、徹底的に妹扱いしてくれるらしい!!」

「それは……、良識のある人という事でしょうか?」


「一人で家主の帰りを待つ間、この世界で生きる為なら……と、色々と覚悟をしたぞ。だが、イナトは私の安全を一番に考えてくれた。住居不法侵入で私を警察に突き出す事も、魔法という未知の力の悪用もしなかった」

「姫様の外見に惚れ込んでいる可能性は?」


「だと嬉しいが、そんな感じは全くしなかったぞ!とにかく、イナトは私を妹扱いし、生活環境を提供してくれるという。その優しさに……、私の方が惚れてしまいそうなのだ」



 王族に恋愛の自由などない。

 親の意向や社会の流れによって婚約者候補が決まり、そこからしか選ぶことは出来ないのだ。



「ということで、心配はいらないのだ。あっちの世界でたっぷりと遊んでくる。そして、持ち帰った知識でこっちの世界も豊かにする。もう徳しかないのだぞ!!」



 まだまだ情報不足であり、懸念を上げればキリが無い。

 だが、ルートルインが笑っている。


 確かに彼女はまだ子供だ。

 ロイヤルディッシュでやらかした失態も、明日の朝から来るであろう特大の叱責も、まだ実感できていないだろう。


 それでも、この笑顔を信じる事こそが、ファナティシアの人生。

 仕えると決めたあの日から、これが彼女の生きる道だ。



「ふふ、そうおっしゃるのであれば、特に小言はございません。もちろん、詳細な報告はしていただきますが」

「まだまだ美味そうなものがいっぱいあったからな!!信じられるか、ケーキより甘い紅茶があってだな――」



 ルートルインとファナティシアの談笑は続く。

 午後10時になって主人が眠りにつく――、夢の世界への旅を見送るまで。



「次はどんな面白い出会いが待っているのか。ワクワクが止まらないのだぞ!!」




皆さま、こんにちは!!

青色の鮫です!!


『配信姫様は日本文化を異世界でバズらせるようです!!~夢から始まる文明革命~』は、このエピローグで完結となります。

だいたい、文庫本1冊分くらいの文量となりました!!


ブックマークや評価、感想などを頂けておりますので、楽しんでくださった方も多いのではと、実は勝手に喜んでおります!!

(※姫様への推し活ポイント評価や感想もお待ちしております!!)


さて、ここでいったん完結とするのは書き溜めがなく、次の更新が未定となる為です。

そして、実は、僕が9年も書き続けている代表作『ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?』の更新を再開する為なのです!!


最後の国王会談編のような、周囲の暴走にツッコミを入れがちな主人公のユニクルフィンと、魔王のごとき戦闘力を持つ魔導師リリンサが活躍する王道冒険ファンタジー。

とある目的の為に旅をする本作ですが、とっても可愛らしいモフモフなペット枠『ウマミ・タヌキ』というマスコットキャラが登場し、主人公と熾烈な戦いを繰り広げます。

タヌキとの因縁、げふんげふん、触れ合いというサブストーリーも充実です!!


ということで、露骨な宣伝となりましたが、僕の作風が好きな方は楽しんでいただけるかと思います!!

ここまで読んでくださった皆様に特別な感謝を!!

そして、今後ともよろしくお願いします!!


追伸: この作品のプロット(今後の展開)も練っております。

皆様の反響が多ければ、連載再開もあり得るのですよ!!


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