57-追憶の旅路へと航海す
シクシクとむせび泣く声が響く中、最初の頃はおちょくるようにしていた我らの傍若無人系幼女様でしたが、僕が依然外界との接触を断つべく短くも愛らしい爬虫類系の手先で顔を覆い外交を拒絶していることに業を煮やしたのか、強制的な開国を迫るように提督幼女様が通告してきました。
「そろそろいい加減にしたらどうなのかしら?いつまでも男がメソメソしてるんじゃないわよ。聞いてるの?・・・そう、そんなに自分の殻に閉じ籠りたいなら手助けてしてあげるわね?従魔調教スキル『おいたわ・・・」
「すみませんでしたー!!」
ズシャーとお久しぶりな土下座シークエンスに入る僕、板に付き過ぎてその道のプロとして名を馳せそうです。
ちなみにですが、僕がシクシクと泣き始めて暫くは慰めるようにしてエルが揺り籠の様に僕を包み込んでくれていましたが、リーファの「これ以上コイツを甘やかさないで」の鶴の一声で解放されています。
僕の言葉以上に素直に聞いてるエルの姿を見て、少し納得がいかないというか一抹の不安を感じたのは気のせいだと良いな。
「フン!わかれば良いのよ、わかれば」
僕が従順に従う姿がお気に召したご様子で、どこかご満悦なリーファ・・・いつか反逆の狼煙をあげてみせる!
「・・・なに?本当にお仕置き受けたいわけ?『おいたわ・・・」
「だぁーもう!人の心を勝手に読むのは止めようよ?!エチケットって大事だと思う!」
ぐぬぅ、この読心術者め・・・ってかナビ、読心術の対策はどうしたの?!
《前にも一度お伝えしましたが、リーファ嬢に対して主に反抗的な考えに関しては読心を阻む事は難しいです。それに現在はリーファ嬢との回線を繋げていますので、御主人様が強く拒絶されない限りは筒抜けになっております》
ぇっ?それはどういう・・・?
「いまアンタがナビと相談してる事はこの私に筒抜けてってことよ。それにしてもいつの間にこんな便利な子を宿していたのよ?主人の私に対して少し隠し事が多くないかしら。シュセンさんたちの事もそうだし」
《それに付きましては先刻も話した通り、あまりリーファ様にご負担をお掛けしない様にと私が愚考し、御主人様にそう配慮するようにとお願いしたためです。私の愚かな考えでご不快にさせてしまい申し訳ありません》
「あらそうなの?まぁそこまで気にしてないから良いわ。それにしても本当に丁寧な子ね・・・アンタも見習ったらどうかしら?」
何だか勝手なこと言ってるけど、本当のナビは慇懃無礼な困ったさんなんだからね!
「ん?いま何か言ったかしら?・・・少しノイズがあって聞こえづらかったのだけども」
《いえ、対した発言ではありません。それに思考回線の方はまだ少し不慣れな様で稀に断線するようです。ご不便をおかけしてしまい申し訳ありません》
「それなら仕方ないわね」
ほらやっぱりいつものナビさんじゃないですかぁーやだー。
都合の悪い話の時は脱線ってなによ、ナビ!
《何を仰っているのですか、御主人様。せっかく内密に会話が出来るように誤魔化しましたのに・・・御主人様はもう少し私を尊重すべきかと思いますよ》
ぁ、そうだったの?それはごめんね・・・って待って!でもさっきの僕の発言をごまかす必要はどこにあったのさ?!
《それではリーファ様、御主人様・・・アキクン様が、気絶されたあとの事の説明を私からさせて頂いても宜しいでしょうか?アキクン様と私なら記憶を共有が出来ますから、先刻の出来事を追体験としてアキクン様にお伝えする事が出来ますので》
「そんな事も出来るの?それは便利ね。じゃお願いしようかしら」
《はい、ではお任せ下さい。それでは御主人様、追憶の航海の旅路へいってらっしゃいませ》
ぇっ、何の話?ってだからなんでそうナビは自分勝手なの?!僕がナビを尊重する前にまず、ナビこそが僕をちゃんと敬うべきじゃないかな!?
《それでは3・・・2・・・1・・・可愛らしいお茶目な愛情表現ですよ、御主人様》
そんな愛情表現なんてあるかぁあああああああああって、ぁ、意識が・・・がくっ。
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「オーホホホホホホッ・・・ッ、げごほっ、ごほっ・・・ぅ、高笑いって結構難しいのね」
高らかに笑い声をあげていた幼女さんことリーファでしたが、あまり慣れていなかったのか咽ながらもそんな愚痴を零しました。
そんな一連の光景を見ていたとあるモラァルゥの開祖様と近い将来呼ばれることになる幼女さん・・・ではなく、ナビの拘束魔法によって囚われの身となっていた片割れのおにゃんこ様が、想い人であるアキクンの哀れな姿に憤りを露わにして、その現状を作った執行役である暴君幼女さんに突っかかって行きました。
「ちょ、なにをしてるのにゃ?!何故アキクンを攻撃したのにゃ!・・・って君は確かアキクンの従魔契約者だったかにゃ?」
「ん?あなたは誰かしら?ってまたアイツの知り合いなのね・・・なんでこう私が知らないところで女の子ばかりと知り合ってるのよ」
「にゃにゃ違うのにゃ、うちはオスなのにゃ。それとただの知り合いじゃなくて婚約者なのにゃ!」
「ぇっ、アイツに婚約者!?しかもオスですって?!」
「なんやまだ言うてはるんか?さっき誤解解けたんとちゃう?あんましつこいとアキクンに嫌われるんやないの?まぁそないな方がうちにとっては都合がいいんやけどなぁ」
さらにもう片方の囚われの身となって居た痴女鬼さんも参戦と、いま一体の駄竜さんを巡った乙女達(男の娘も恋をすれば乙女さby世界の真理)の戦いが始まろうとしていた・・・ッ?!
「ぁ、ぅ・・・あ、アキクンは私の理想のオトコノコ・・・だからワタサナ・・・」
「メルは「君は「あんさんは「黙っ」てなさい!」てるのにゃ!」とき!」
「そ、そんなぁ・・・」
三者三葉に駄竜さん争奪戦の参加拒否を言い渡されたショタ狂いさんなのでした。当たり前です。
「さてメルのことは置いとくとして・・・あなた達はなんなのかしら?そちらのちじょ・・・シュセンさんは知ってるけど、そこの・・・獣人?は一体アイツのなんなのよ。こ、婚約者だとか世迷言を言ってるみたいだけど」
「世迷言じゃないのにゃ!ちゃんとした婚約者なのにゃ?!あ、アキクンとは少しお互いに見解の不一致があったにゃけど、アキクンの両親にはちゃんと話が付いているのにゃ!だから両親公認の仲なのにゃから、あとはアキクンとちゃんと話し合って直ぐにでも婚姻の議を・・・」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ、アイツの両親ですって?!そ、そんなこと聞いてないわよ!それにアイツはこの世界の生まれじゃないはずだから、別の世界のアイツの両親とどうやって連絡取るって言うのよ!私が何も知らないと思って、勝手なことばかり言ってるんじゃないでしょうね?!」
おにゃんこ様の突然の告白に、自身を謀ろうとしているのではと思ったリーファが声を荒げて詰問するようにして、おにゃんこ様に詰め寄りました。
「ほ、本当なのにゃ!ウチとアキクンの両親とは昔ながらの知り合いなのにゃ。アキクンの両親が居る世界とは気軽に連絡が取れる訳じゃにゃいけど、ウチの能力とアーティファクトを使えば半年に一度ぐらいは連絡が取れるのにゃ。まぁ今回は少し無理して連絡取ったにゃから、前回連絡取った時期より幾ばくか早いのにゃけど」
「それは本当のことなのかしら?私を騙そうとしているんじゃないでしょうね?」
「にゃんて疑い深い子にゃ?!それに見た目の幼さとは反したその鋭くも射殺さんばかりの眼はなんなのにゃ?!さっきの人間の娘もそうにゃけど、いまの人の世はどうなってるのにゃ?!ウチが昔、キョオコたちと世界を旅してた時とだいぶ違う気がするのにゃ!?」
リーファの鬼気迫る詰問にドン引きしたおにゃんこ様が世を嘆くようにそう語りますが、もう手遅れな世界なう。
「くふっ。まぁ昔よりは色々とおもろいから良いんやないの?あんな世界よか、あの子らが変えてもうた今の世界の方がうちは好きやね。それよりも、リーファでよかったよろか?そこのにゃんこが言ってはるんことは嘘やないと思うよ。うちも含めて、アキクンの両親とは旧知なんよ。まぁでも婚約云々はちと盛り過ぎな気もするんやけどな」
「にゃ、アバズレ鬼も疑うのかにゃ?!ふんなのにゃ、信じて貰わなくても結構なのにゃ!アキクンさえ分かって貰えばいいのにゃ!!」
そう言うおにゃんこ様からは、想い人ならきっとわかってくれるはずだと自分の唯一の味方であると信じ切った様子で、その妄信的な姿はまるで・・・。
「・・・なんやすとぉーかぁ言うんと同じ思考してはらへんこのにゃんこ?ほんまアキクンに迷惑かけよるとうちが黙っとらんよ」
「にゃア˝ン?誰がすとぉーかぁだにゃ?!それににゃ、アバズレ鬼こそアキクンにちょっかいを掛けるのは止めて欲しいにゃ!歩く公然猥褻が傍にいるとにゃ、アキクンも変態だと思われて可哀想なのにゃ!」
「くふっ。おぼこにはまだ早うてわからんか。こん艶姿は刺激が強過ぎよるから目に毒やったね、堪忍なぁ・・・でもな、アキクンがうちを舐め回すように見よって楽しみはるから、それに応えんといかんのよ。ほんに堪忍なぁ、アキクンの心を奪ってもうて?」
痴女鬼さんがすとぉーかぁ気質なおにゃんこ様を挑発するように、しなやかな動きでその艶めかしい身体を魅せつけるようにして、さらに際どいポージングを取りました。絵心が欲しいです。
「にゃ、にゃんだとにゃ?!もう頭来たのにゃ、表出ろにゃぁあああ!?」
「なんややるんかいな?しゃぁないね、久方ぶりに躾けたろうやないの」
「なにが躾けにゃ!昔は散々いじめられたけどにゃ、いまのウチは神の末席に連ねるまでになったのにゃ!まだ昔のウチだと思ってるにゃら、痛い目に見るにゃよ?!」
「くふっ。ほんま獣はよう吠えるわ。神やかなんやか知らんけど、いきっとらんではよしぃ。うちがその長うなった鼻っぱし折ったるさかい」
「やれるもんならやってみるのにゃぁあああああ!!」
一触即発の気配が漂い始めたこの状況で、とある傍若無人系幼女様はというと・・・。
「さて、なんだか煩くなってきたからとっと退散しようかしら。アキクンを回収してから彼の国で性転換して、娯楽の街ラスベガラでアイドル活動しないといけないし、こんなところでのんびりしてられないわね。取り合えずあのスライムの子も連れてこの町とはおさらばしましょ」
直ぐ傍で凄まじい殺気が立ち上り始め、常人ならばそれに当てられただけでも気を失うであろう中、我関せずと自身の思い描くサクセスストーリーを実現するためにと駄竜さんと快楽中毒系スライムさんらを鼻歌交じりに回収するリーファさんですが、その姿はこの状況からは酷く歪でこの幼女さんの未来が心配になります。
「ちょっと待つのじゃあああああ!!?」
とここでまたしても開け放たれた扉から逆光を浴びて現れたのは、山吹色の和装を着飾り金色の髪を尾ひれのように靡かせた鬼っ幼女さんでした。
そろそろ夕刻も差し迫り暗がりも見えて来た中、逆光とはこれ如何にと思われますが、スポットライトの整備されたこの館には何ら問題もありません。
「シュセン待つのじゃ!それにポチも落ち着くのじゃ!!汝ら二人が争っている間に、アキクンが連れ去られてしまうぞ!!」
「なんやて?」
「なんだとにゃ?!」
「「って、あ?!」」
件のアキクンこと駄竜さんと快楽中毒系スライムを小脇に抱えたリーファが、裏口から抜け出そうとしていました。
「そこの頭のイカレた娘にアキクンを渡してしまったら、彼奴が女子にされてしまうのじゃ!!?」
「「「な、なんだってぇええええ?!」」」
突如現れた金色鬼っ幼女から齎された驚愕の内容に、一同驚きの顔を隠せずにいました。
そしてこの中で最もリーファと親密な関係であった《過去形でありたいby某暴君幼女さんより》人物が口を開きました。
「ちょっと待って、リーファ!それは一体どういう事なの?アキクンを女の子に変えちゃったら、私はどうすれば良いのよ!?」
「「「ちょっと変態は黙っ」てるのにゃ!」とき!」のじゃ!」
「ヒドイ?!」
一先ず話が進まないので変態を黙らす一同。次、勝手に話し始めたら退場願いたいと思います。
「ん?なんなのかしらみんなで私をジロジロ見て・・・いまから少し忙しくなるからあとにして頂戴。それじゃ」
「いやだからなにがそれじゃなのじゃ?!汝、いい加減にせぇよマジで!今すぐアキクンを放すのじゃ!!」
はて?何をそんなに喚き散らしてるのか理解に苦しむわと言わんばかりに可愛らしく小首を傾げながら裏口へと向かう、馬耳東風系幼女様ことリーファさん。
「いや本当に待つのにゃ!ぇっと、確かリーファと言ったかにゃ?それとイバラキが言ってるのは本当なのかにゃ?」
「・・・そうよ。コイツ・・・アキクンは今から性転換してアイドルの道を行くわ。私はそのぷろでゅーすぅしないといけないの!だからいま忙しいからあとにしてよね、それじゃ」
「いやだから待てというに!吾らの話を聞かぬと言うのなら実力行使なのじゃ!アキクンは返して貰うのじゃ」
そう言ってリーファの行く手を遮り、駄竜さんを奪わんとその手を伸ばす金色鬼っ幼女だったが、不意にリーファを守らんとするように横から現れた人物によって妨げられました。
「・・・なにをしとるんじゃ、ポチ?」
「・・・ここは昔のよしみで見逃してはくれないかにゃ?」
そう言ってリーファを守るようにして前に出たのは、あのおにゃんこ様でした。
「どうしてなのじゃ!このままだ彼奴が女子にされてしまうのじゃぞ?話を聞いとらんかったのか?!」
凄むようにして味方だとばかり思っていた懐かしき友に語り掛ける金色鬼っ幼女さん。
そしてその言葉に決意に満ちた眼を向けながらも首を縦に振る事で答えるおにゃんこ様。
「ちゃんとわかってるのにゃ・・・」
「な、なら何故邪魔をするのじゃ?!まさか、アキクンが女子になっても良いというのか?!」
信じられないとばかりに言い放つ金色鬼っ幼女さんですが、本当にアキクンが女の子になって良いとはあの優しくも聡明な友人が思うはずが無いと信じていました。
ですが妄信的すとーかぁへと変わり果てたおにゃんこ様が次に放った言葉は、その想いを打ち砕くもので。
「そうなのにゃ!アキクンは女の子になるのにゃ!!そしたら、そしたら・・・
晴れてうちは女の子になったアキクンと夫婦になれるにゃ!これなら外聞も良いし、アキクンもうちを受け入れやすいはずにゃ!!」
そう言い放ち、昔ながらの友人の前に立ち塞がりました。
「そ、そんな馬鹿な、なのじゃ・・・どうしてなのじゃ、ポチ?それが決して彼奴が望んでいない事はお主ならわかろうはずじゃ。それなのに・・・」
数少ない仲の良い友人に裏切られた金色鬼っ幼女さんは、失意のあまり茫然と立ち尽くしました。
「しっかりしぃや、イバラキ!うちらがここで阻まんと、ほんまにアキクンを女子にされてまうよ」
「ハッ!そうなのじゃ?!・・・ッ、ポチ、お主の気持ちもわからなくもないが、やはりそれは間違っていると思うのじゃ!お主の友人として、誤った道を辿るお主をここで止めてみせるのじゃ!」
いま、まさに妄信の果てに堕ちてしまった友人の眼を覚ますべく、そして一体の駄竜さんを賭けた、そんなどうしようもなく微妙な戦いの火蓋が切って落とされようとしていた・・・ッ?!!
『ぇっ?これまだ続くの!!?』(by回想中の駄竜さんより)




