男装の麗人①
「「「「「はっ」」」」」
「「「「「てぃやぁ!!」」」」
乱れることのない動き
無駄のない動きで棒を突きだし、軽やかに動き洗練された動きに目が奪われる
軽装であるが鎧を着た者達が訓練をしていた
「なっ!!このような場所で武器を扱うなど!!」
睡蓮が声をあげる
確かに王宮の最深部に近い場所で軍事訓練をすることなどありえない
紫紋もただ呆れてその訓練に目を向けていた
そこでふと目があった
訓練の指示をしている背の高い黒い鎧を纏った方だ
表情は見えないが視線はあった
こちらに気づくとぺこりと会釈し兵に指示をしてこちらへと向かってくる
(えっ?何?こっち来るの?)
いきなり近づいてくる人影に慌てて懐から扇を出す
ぱっと開いて顔の前にかざす
ザッと土を踏む音が聞こえ鎧を着た者が目の前に着たことを知らしめた
ドッキと体を身震いして
(何で今日に限ってこんな事になるよ!!)
外に出たことを後悔しながらどうしようかと悩んでいると
「お初に目にかかります。義姉上!!」
そう呼ばれた声に紫紋は固まってしまった
「義姉上??その声???」
「ふふふっ。紹介が遅れました。璉国が一の姫瑠璃と申します。」
明らかに女性の声にかざしていた扇が下へ下へと下がり紫紋の視界を明るくした
そこには紫紋より頭一つ分大きな鎧を纏った人がいた
だが、その髪は長く後頭部で結ばれた髪は腰まであり、胸部には明らかな胸の膨らみがあり女性であることを示していた
「え??ええええええ???」
おもいっきりガン見してしまった紫紋は大声を上げてしまった
女性が鎧を着るなどあり得ない行為であり、ましてや確か先ほど訓練の指示を出していたような・・・・・
「ふふふふっ。お可愛らしい方だ。兄上が溺愛するはずだ。」
笑みを浮かべる姿はどこか竜祥に似ており心臓が音を立てる
「こちらは日差しが強い。あちらの東屋でお茶の用意をしましょう。誰か!誰かおるか!」
瑠璃の声にダダダダダッと我先に女官達が集まってくる
「お呼びでしょうか!!瑠璃様!!」
「お前じゃないわよ!!私が呼ばれたのよ!!」
「イイエ私よ!!瑠璃様!!ご用は何でございましょうか?」
押し合いへし合いをする女官達に紫紋達は呆れるものの慣れているのか瑠璃は
「ありがとうみんな。あちらの東屋で休憩を取るから義姉上の分と一緒に茶の用意をしてくれ。お願いね。」
満面の笑みで頼むと女官達は目眩を起こしたかのようにフラリと身を一瞬だけ崩したが、女官としての意地で体制を立て直し
「「「了解いたしましたわ~~~~~~」」」
叫び声を残して走り去ってしまった
「フフフッ、可愛らしい方々だ。」
笑顔を浮かべる瑠璃に紫紋は
(天然なの?それともタラシ??何ナノこの人!!無駄に垂れ流しのこの色気!!!)
同じ女人のはずなのに瑠璃から溢れる色気はまるで男のように凛々しく、雄々しく、心ときめかすものがあった
「義姉上。行きましょう」
そう言って出された手に紫紋はついに意識せずに手を差し出してしまった