教えて
いつだっただろう。人の心の中がわかったのは。わかったというより、わかってしまった。視えてただろう。人の心の中がわかったのは。わかったというより、わかってしまった。視えてしまった。
心を病んでいる人は胸の辺りにくすんだ水色や、黒。悲しい人は、灰色。何にもない人は温かなピンク色。通りすがる人の心でさえも視えてしまう。
自分自身がその能力に気づいたのは小学三年生の時だった。昼休みの教室で友達が泣いていた。慰めてあげようと思い近づくと、胸の辺りにくすんだオレンジ色のモヤがかかっていた。話を聞けば、その子が飼っていた犬が死んでしまったらしい。
最初は、知らないフリをしていたけど日に日に視える量が増えていった。自分ではどうすることもできず、思い切ってお母さんに話した。お母さんは私の話を嘘だと思わずちゃんと聞いてくれた。病院で診察を受け、医者は私に診断を下した。
「お母さん、晴風ちゃんは透視症かと思われます。」
初めて聞いたその言葉に私もお母さんも戸惑ってしまった。
「透視症とは、人の気持ちや考えていることが視覚的に視えてしまう病気です。」
「治りますよね?」
お母さんは食い入るように医者に聞いた。
「治療法はありません。この病気は症例として少ない病気です。精神疾患ともまた違う部類でしょうから。なので、どうすることも・・・」
治療法がない。それを聞いたお母さんはひどく動揺していた。
「ですが、お母さん。これを活かした職に就くことだってできます。カウンセラーだったり心療内科で働いたり。晴風ちゃんの将来が不利になったりするものではないと思います。」
そう医者は私たちを落ち着かせるように言った。
外見からではわからない病気だからと言って周りにバレないわけではなかった。親友にだけ打ち明かした話はいつの間にか広がっていた。からかわれることもあった。
お父さんとお母さんは、それも個性だと言って私を責めることはなかった。
中学も高校も少し離れた場所に進学したのに噂が回っていた。
そんなある日、お父さんの仕事の都合で神奈川に引っ越すことになった。あまり友達もいなかったし、とてもじゃないけど居心地もわるかった。だから、丁度いいと思って賛成した。
今までは、マンション住みだったけど家が一軒家になると聞いて嬉しかった。高校を転校するまでが色々大変だった。
学校見学をした日、校長先生が学校探索してきていいよと言ってくれたから放課後の校内を一人で歩いていた。どこの教室も誰もいなくて、夕焼けの眩しさだけが教室を照らしていた。そんな中、2-Aと書かれた教室に人影が見えた。気になって、少し覗いてみると一人の男子生徒が机に向かっていた。
心のモヤが視えた時私は驚いた。その人の心は今まで視たことないくらい真っ黒でぐるぐると渦巻いていた。
彼は今にもその闇に飲み込まれてしまいそうだった。言葉を選ばずに言えば、死んでしまいたいと、その渦が物語っているようだった。彼が今何を思ってうて、何に悩んで考えているのか、すごく気になった。
助けたい、救いたい、守りたい。そんな欲求にかられた。透視症になってから、人の悩み事を聞くのをどうしてか躊躇うことが多くなってしまった。
勇気を出して聞いてみれば、皆心のモヤの色が変わっていく。もしかしたら、彼を救えるかもしれない。




