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はじめまして

※本作は事故の描写から始まります。苦手な方はご注意ください。

灯月ひづき、今日は父さんと母さんを独り占めしてどうだった?』

『たのしかった!またみんなで行こうよ!』

『そうね、次は桜月さつきも一緒に行こうね。』

『あ、父さん。しんごう、あおだよ』

『灯月、信号を渡るときは?』

『手をあげます!』

キィィィィィー!

『危ない!』

バンッ!


『う、ん?』

『父さん?母さん?』

あれ、なんでねてるの?

『父さん!おきてっ!母さんも、おきてよ!』

『なんで、おきてよ!』

「あぁっ!はぁ、はぁ」

またこの夢だ。なぜか見てしまう僕にとって人生最大のトラウマ。

僕の心にずっと残り続ける古傷。今もまだ覚えてる。父さんの声とともに真っ暗になった視界。目覚めるといつの間にか広がった血の海。起きない両親。鮮明な記憶が僕を壊していく。

死にたい、消えてしまいたいと何度も思った。それでも、自分の手で自分を殺すことは僕には到底できなかった。ただ時間が経つのを待つだけ。目を閉じて現実から、思い出したくない過去から逃げるだけ。そうやって過去から逃げ続ける。


いつものように教室に入り席へと向かう。高校入学の時友達を作り忘れたからあいさつを交わす人などいない。中学時代の唯一の友人はクラスが違う。だから、一番後ろの窓側の席があまり目立たなくて安心するし隣は進級した頃から空席だ。僕にとっての最強のオアシスだ。

キーキー騒ぐサルみたいな男子、ぴーちくぱーちく小鳥みたいにおしゃべりに忙しい女子。そんな動物園みたいにうるさい声なんか気にせずに準備をしてそれが終わるといつも机に突っ伏していた。

チャイムが鳴ると同時に担任が入ってきた。

「おい、お前らチャイム鳴ったぞー。早く座れ。今日からクラスメイトが増えます。」

クラス中が誰だ誰だと騒ぎはじめ、僕も気になり顔を上げる。

「入っていいぞ。」

「はい」

先生の合図に返事をした転校生がドアを開け入ってきた。入ってきたのは華奢な女子だった。

「じゃあ、自己紹介して。」

転校生がチョークを掴み、黒板に名前を書いていく。

「私の名前は、仲野なかの 晴風はるかです。よろしくお願いします。」

転校生は深々と頭を下げた。周りは口々に可愛いとか、美人だと言っていた。

「じゃあ、皆仲野が困ってたりしたら助けてやってくれ。席はえっと、窓側一番後ろの風間の隣で。」

「わかりました。」

僕は目を丸くして驚いた。確かに僕の右隣が空席なのはクラスの皆が知っている事実だ。皆の恨みがましい視線に顔を下げてしまう。僕もオアシスが壊されて戸惑っているのに。

確かに近くで見るとモテそうな感じだった。ニコニコと爽やかな笑顔をこちらに向けてくる。まるで、アニメの清楚なヒロインキャラクターのように。

「初めまして。仲野 晴風です。仲野でも、晴風でも何でも呼んで。君の名前は?」

先ほど聞いたばかりの名前をもう一度丁寧に教えてくれる。そんな彼女に応えるように僕も自己紹介をする。

風間かざま 灯月ひづきです。よろしくお願いします。」

自己紹介を終え、お互い会釈しあう。これからいつも通りの日常から少し変わるがあまり変わることはないだろう。


昼休みの教室は相変わらずうるさくてお弁当を手に持ち、抜け出すように教室を出た。その足で向かうのは来慣れた最上階。屋上には入れないからいつもここだった。階段に座ってお弁当を食べる。

「やぁ、灯月君。」

女子の声が聞こえ顔を上げた。そこに立っていたのは今日来た転校生である仲野さんだった。

「どうしたんですか?仲野さん。なんで、僕の場所知ってるの。」

「別に用はないんだけどさ。教室にいたら皆寄ってくるから逃げてきたの。あと、仲野さんじゃなくて仲野って呼び捨てにして。」

「あ、はい。」

「ありがと。じゃ。」

そういって仲野はどこかへ行ってしまった。転校初日には、クラスメイトからの質問攻めが儀式なんだろうな。人間は新しいものが好物なのだろうか。そんなことを考えていると昼休み終了の予鈴がなってしまい急いで片付け教室へ戻った。



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