初依頼
受付カウンターに戻ると、先ほどの受付嬢が微笑んだ。
「お待たせしました」
カウンターの上に、小さな封筒が置かれる。
「換金と登録料の処理が終わりました」
受付嬢は続けた。
「ミスリルスライムのコアは非常に状態が良かったので、135万円での買取になりました」
「登録料が20万円×二人分で40万円」
「差額の95万円になります」
封筒をこちらへ滑らせる。
凛が目を丸くした。
「……あれ?」
「さっき120万って言ってませんでした?」
受付嬢が頷く。
「ええ、あれは参考相場です」
「ですが」
コアを軽く持ち上げる。
「このコア、ほとんど傷がありません」
「ミスリルスライムは破壊すると内部が欠けることが多いんですが……」
少し感心したように言った。
「とても綺麗に倒していますね」
凛がぴくっと反応した。
「そ、そうですか?」
「はい」
受付嬢は微笑む。
「かなり腕のいい探索者だと思います」
凛の顔が、ほんのり赤くなる。
「……」
何も言わない。
だが少し視線を逸らした。
褒められ慣れてないのが丸わかりだった。
俺は思う。
(意外と分かりやすいな)
「では」
受付嬢が話を戻す。
「初依頼について説明しますね」
カウンターの横の掲示板を指さすと、そこには依頼書がずらりと並んでいる。
「基本的な依頼は四種類です」
指を折る。
「討伐」「素材採取」「護衛」「探索」
「討伐はそのまま、モンスターの討伐ですね」
「素材採取は、薬草や鉱石などの回収です」
「護衛は商隊などの警護」
「探索はダンジョンのマッピングなどになります」
凛が小さく頷く。
受付嬢は一枚の依頼書を取り出した。
「初回の探索者には、素材採取をおすすめしています」
紙を見せる。
「薬草採取。ポーションの材料ですね」
「低層で採れるので危険も少ないですよ」
俺が「なるほど」と言いかけたその時。
「却下です」
凛が即答した。
受付嬢が少し驚く。
「あら?」
凛は腕を組んだ。
「薬草採取は効率が悪いです」
ちらっと俺を見る。
そして言う。
「この人のスキルと、絶望的に噛み合いません」
俺は苦笑する。
確かに、薬草は数を集める依頼だ。
レアドロップは関係ない。
「逆に」
凛は続ける。
「納品数が少なくてもいい」
「希少素材の依頼はありませんか?」
受付嬢が少し考える。
「ありますね」
掲示板から一枚抜いた。
「ストーンゴーレム討伐」
紙を見せる。
「ドロップする土属性の高純度魔石の回収依頼です」
依頼書を指でなぞる。
「初心者向けの中では、少し難しい依頼ですね」
「ストーンゴーレムは中型モンスターで、二メートルほどあります」
「防御力も高いです」
凛はちらっと俺を見る。
そして言う。
「問題ありません」
受付嬢が微笑む。
「ミスリルスライムを倒せるなら、確かにそうですね」
そして俺の方を見る。
「神谷さんは鑑定スキルでしたね」
「はい」
「それなら探索依頼も向いていますよ」
「マッピングなどは鑑定持ちが重宝されます」
俺は少し考えた。
だが、凛が先に言う。
「ありがとうございます」
「でも、今回は討伐で」
ストーンゴーレムの依頼書を取る。
俺も頷いた。
「それでいこう」
受付嬢が確認する。
「ストーンゴーレム討伐ですね」
「はい」
受付嬢が依頼書に印を押した。
「では依頼受注になります」
書類を差し出す。
「お気をつけて」
凛が依頼書を受け取る。
そして小さく笑った。
「神谷さん」
「ん?」
「初依頼です」
俺も笑った。
「だな」
ストーンゴーレム。中型モンスター。そして高純度魔石。
どうやら、俺たちの最初の依頼は少しだけ——骨のある相手になりそうだった。




