表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
504/515

佇む人達4

近くの石材所の横を抜ける時、ガラスに三人の人影がくっきり映った。

顔までは分からない。

それでも、笑っているように見えた。

ただ、そこに立っているのが分かるだけだった。

「これはまずいことになったな」

そう思い、歩く速度をさらに上げる。

寺まではもう少しだ。

裏門が見えた時、ちょうどお坊さんが門を閉めようとしていた。

電車の駆け込み乗車みたいに、門扉の隙間から滑り込むように入る。


「うわっ」


驚いた声が聞こえた。

入った瞬間、背後でバタンと門が閉まる音が響く。

「そんな入り方をされては危ないですよ」

怒気を含んだ声に、素直に「すみません」と頭を下げる。

その声を聞いたのか、本堂の方からご住職がこちらを見ていた。

静かな声で、


「こちらにご案内なさい」


そうお坊さんに伝え、本堂の扉を開けてくれた。

案内されるまま本堂へ上がると、ご住職は落ち着いた目でこちらを見て、

「本日はお墓参りに?」

と尋ねた。

「そうです」

荒い息を整えながら答えると、ご住職は「なるほど」と小さく頷き、

「そちらにおかけください」

と近くの椅子を指した。

言われるまま腰を下ろすと、読経が始まった。

低く落ち着いた声が、胸の奥にゆっくりと染み込んでいくようで、さっきまでの焦りが少しずつ薄れていく。

一通り読経を終えると、ご住職はこちらを見て静かに言った。

「表門にタクシーを呼んでおりますので、そちらからお帰りください」

本堂を出て、表門まで見送ってもらう。

タクシーに乗り込む直前、ご住職はふとこちらを見て、


「もし、夜に何かあれば、明日お越しください」


そう言った。

何かとは教えてくれなかった。

タクシーに行き先を告げると、運転手は何も聞かず、静かにホテルへ向かった。

窓の外を流れる街灯の光を眺めながら、ふと考える。


あの三人は、一体なんだったのだろうか…

ご住職は何か知っているのだろうか…


不意に運転手がミラー越しにこちらを見た。

「……お墓参りでしたか」

その声は、確認ではなく、決めつけだった。


「たまにあるんですよ、この辺りは」


ぞっとした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ