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幼女、寝たきりで過ごす

 気絶した後、私は村の資料置き場にある空き室に運ばれたようだ。村の中で戦ってた事に起きて気付いた…誰か助けに来てもいいじゃないかと思うが、鍛冶場はうるさいので聞こえなかったのだろう




「あのクソ鳥は強敵だったわ…危険度で言うならBぐらいあったわね」

「いえ…その、あれは危険度Eになります。ちなみにクランチバットはFです」

「………空飛ぶんだし、もっと強いと思うなー」

「飛ばなければFでしょうね」


 陸でも攻撃受けたぞ!どんだけ弱いんだ私は、というかコウモリがぶらっくうるふやスライムと同程度とか納得出来ん!噛むんだぞ、奴らは!


「お姉ちゃん、まともに装備もしてないんだし…やられても仕方ないと思うのです」

「それもそうね」


 私どころかメンバー全員まともに装備しちゃいない。マオに正論を言われたのはムカつくが


「私のピンチの元凶はマオよね」

「え゛っ!?」

「私の説明を最後まで聞かずにぶん投げたじゃない…まるで日頃の恨みを晴らしてるかの様に」

「お姉ちゃんに恨みはない……ですよ?」


 間があった。ひょっとしてあるのかよ…恨まれる様な仕打ちは割とした気がするけど…だがそれとこれとは話が別


「楽しいお仕置きタイムね」

「駄目です。絶対安静なので寝てて下さい」

「…あのね、私の怪我はぺけぴーのお陰で治ったんだけど?」

「怪我は治っても失った血までは戻りません、しばらくはご自愛下さい」


 これだもんなぁ…さすが過保護筆頭、私の大丈夫なんか信用してないと思われる。無茶したお陰で今後の単独行動も無理そうだ


「私はともかく、ユキこそ何とかしなさいよ、その話し方」

「…いえ、私は誰にでもこういう話し方なので直すのは無理です」

「せめてご主人様は止めなさい、もう貴女はお世話係じゃないの…メイド服着てるけど。服も買いなおす?」

「着なれてますので、これで大丈夫です。気に入ってますし」


 本人が良いならいいか、メイド服じゃないユキとか違和感あるだろうし…宿で寝るときはパジャマ着てるけど。


「叫んだ時みたい呼んでご覧なさいよ、お母さんって」

「…その……お母様?」

「違うっ!もっと親しい感じでお母さん!はいっ!」

「は、はぅっ!」

「…それはわたしの専売特許なのです」


 何か面白いユキになったぞ!あわあわしてるユキ何て滅多に見れない…これは弄れるだけ弄らなきゃっ!


「えー…ユキちゃん呼んでくれないのー?お母さん悲しいなー」

「えぅ?!…だ、だから………お、おおおおかおおおかあああぅぅぅ……」


 動揺が凄い…!『お姉ちゃんがセティお母様そっくりに…』とか呟いてるアホの子は無視だ。何だか応援したくなるユキだ


「頑張るのよユキっ!母は貴女の一言を待ち望んでいるわっ!」

「お、おか…」

「まさかユキさんがこんな状態になるなんて」


 全くだ、ユキの赤面シーンとか貴重だな。この先お目にかかれないかもしれないから脳内に焼き付けておこう


「ほらほら、お母さん待ちくたびれたわ」



「……お、おっかさんっ!」



………



「ぶふぅっ……そ、そうよ、私はお、おっかさんよ…!ぶっ…あっはははははは!」

「わ、笑っちゃ可哀想ですよ…プッ…フフ」


 おっかさんが出てくるとは思わなかった…誰だって笑うわあんなもんっ!


「ナ、ナイスよユキ…おお、おっかさんは予想してなかったわ…くひっ…真剣な、顔でおっかさんとか…笑って悪かったわ………ね?いやホントごめん…ごめんね?うん、ユキは頑張ったわ、えぇ!私がどうかしてたわ…ホントすいません。だから泣き止んで?ね?」

「あわわわわわわわ!ご、ごめんなさい!笑っちゃってごめんなさいいいぃぃぃぃっ!」


 ひとしきり笑ってユキの顔を見たらボロボロと涙を流していたので仰天した…何て罪悪感だ…!頑張った娘を笑うとは何たる失態!


「いえ……これは自分の不甲斐なさを嘆いているのです…せっかく、親子になれたのに…私は……!」

「貴女もアホの子ね、元々私達は母娘だったでしょうに…生まれは特殊だけど。本来のあるべき姿に戻っただけ、何を戸惑う必要があるの?実は母とは呼びたくないとか?」

「そんな事はあり得ませんっ!……ただ…きゅ、急に言われましても気恥ずかしいというか…」


 そういう事か、今まで散々ご主人様って呼んできたしな…気持ちは分からないでもない。


「まぁ…ちょっと残念だけど、慣れたらでいいか…」

「…大丈夫です、もうちゃんと言えます。…お、母さん…」


 危うくおっ母さんが出てきてまた笑うかと思った。二度も泣かすのは嫌なので絶対我慢するけど。

 それにしてもお母さんとは実に良い響きだ…心がほっこりする


「何か良いわー、お母さんって言葉」

「…はい」


 この良い雰囲気に乗じて絶対安静から解放されないだろうか?寝て過ごすのには慣れているが、病人扱いは何か嫌だ


「じゃ、母娘で散歩にでも行きましょうか」

「駄目です」

「もー…わかったわよ」


 だが眠くもないから本ぐらい読みたい。幸いにもここは資料置き場だ。興味深い資料がもしかしたら有るかもしれない


「せめて本ぐらい読ませてくれない?」

「…わかりました。ただし、私が朗読しますので…お、お母さんは休んでいて下さい」

「絵本を読みたい訳じゃないんだけど」


 やはりお母さんと呼ぶ時は若干どもるな…このぎこちなさも可愛いっちゃ可愛い…頼むから将来私をババアと呼ぶ娘にはならないで欲しいと願う




「これなんて如何でしょう?エルフの生態の本みたいです」

「お、いいじゃない。読んでちょうだい」

「では、重要箇所だけ抜粋します。…エルフは長命な種族であるが、繁殖能力は低いため少数しか存在しないとされている。

 また、生まれによって様々な呼び方をされる特殊な種族でもある。主にハイエルフ、エルフ、ハーフエルフ、ダークエルフの四種の呼び名があり、エルフは通常のエルフの事を言う。


 ハーフエルフはエルフとエルフ以外の種族が交わって生まれた存在を称し、ダークエルフは闇に属した者との子供を差す。


 よく勘違いされるのはダークエルフが褐色肌と思われる事だが、実際はエルフ同様の肌をしている者が多い」

「へぇ…私もダークエルフは褐色ばかりと思ってたわ」


 物語は創作されたものが多いのかもしれない…筆者が誰も彼もエルフに会ってる訳ないもんなぁ…ましてや魔王なんて論外だ


「ハイエルフとは人間社会で言う所の王族にあたり、純粋な魔力を保つべく代々近親婚によって血筋を維持されてきた。


 子供に恵まれない事も多々あり、さらに両親のどちらかと死別したその時は父と娘、もしくは母と息子が交わる事もあった。


 母親は寝室で親ではなく、女として息子と対面すると思うと身体が火照ってきた…。そして寝室のドアが開き、自らがお腹を痛めて産んだ息子を熱い瞳で見据え…息子もベッドに上がって母に覆い被さり」


「おかしいでしょ」


 急に官能小説が始まっとる。真面目に聞いてたらこれだ!このお馬鹿は油断させといてぶっ込んで来るから困る


「やっぱり残念な娘だったのね」

「私は本に書かれてる通り読んでいるだけなのですが…」

「嘘つけ、近親物が出てくるとか狙ってるとしか思えない」


 ユキに選ばせたのが間違いだったのだ。読みたい本は自分で選ぶ!


「だから起こしなさいお馬鹿っ!」

「駄目です。しばらくは寝ていてもらいます」


 起き上がろうとしたら肩を押さえつけられる。見ようによっては何かヤバい光景だ…

 マオは顔を赤くして真剣な目で見守っている…何考えてるんだこのアホも!


「はいはい…わかったから離れてちょうだい」

「…わかりました」


 何で残念そうな顔をする。そんなに密着していたいかこの変態はっ!

 私の家族はクズと馬鹿とアホとか救いようがないっ!





「おう!起きたか嬢ちゃん!」


 お世話になったドワーフと知らないドワーフが部屋に入ってきた。手には私達のと思われる食事を乗せたお盆を持っている


「名前も聞かずに去る予定だったけど、またお世話になってるわ」

「ハッハッハ!気にするなっ!ついでに名前を教えといてやるよ、俺はゴラスだ!改めてよろしくなっ!」


 言いながらテーブルを用意してお盆から食事を置いてくれる。メインは鳥の肉の照り焼きっぽい…もしやこの鳥は


「これ、昨日の鳥じゃない?」

「そうだぜ!メイド服の嬢さんにたんまり貰ってな、逆にこっちが礼を言いたい所だ」


 くっくっく…無惨な姿になったな、我が好敵手よ!…言ってて虚しくなる。危険度Eだもんな……

 クソ鳥としか呼んでなかったが…こいつは何て魔物なんだ?


「この鳥何て名前?」

「フライングチキンだな」

「…この料理は?」

「照り焼きだ」


 作る料理間違ってないか?ここはフライドチキンにすべきじゃなかろうか…美味しいけど


「つまり…鶏の魔物だったという事ね」

「おうっ!」


 聞かなきゃよかった…!鶏なんぞに苦戦したとか末代までの恥だっ…それよりも鶏の分際で飛行出来るとは魔物化恐るべし


「ところで、そちらは何方?」

「ワシはこの村の代表をしとるドルマじゃ」


 村長みたいなもんか。お偉いさんが何で来たんだろうか


「何か用…ですか?」

「無理に敬語を使わんでええわい」

「助かるわ」


 敬語は不断使わないし苦手なのだ。アグラダにもタメ口だったし…久々に使ったのは舞王にだったっけか、あれが多分数年ぶりぐらいだ


「ちと、聞きたい事があってな…ダメ元で聞くが、カマラというドワーフを知らないか?」

「知ってるわ」

「…え?何と知ってるとな…聞いてみるもんじゃな」


 王都にルンルンと向かったカマラで合ってるならそうだ。


「カマラから聞いてここに来たんだもの」

「…そうじゃったか。ではカマラから何か聞いてないか?昨日出ていってまだ帰ってきておらんのだ」

「王都に行くとしか聞いてないわ」


 鍛冶が嫌そうではあったし、村を出るのはしょっちゅうあったと思われる。だが、この口振りだと無断外泊は初めてなのかもしれない。


「また王都か…鍛冶をやらなくなって、カマラはすっかり芋なんぞにハマってしまっておる。ひょっとしたら焼き芋パーティーでもやって石焼き派と焚き火派で口論してる内に夜が明けたのかもしれんな」

「かもなぁ…」

「あなた達はとんでもない勘違いをしてると思うの」


 村の中でもイモいイモい言っていたみたいだが、カマラ以外のドワーフはイモい何て言葉を知らないだろうから勘違いしてるんだ


「勘違い?ひょっとして実はジャガイモパーティーだとか?」

「芋から離れなさい」

「じゃがいも…里の生活を思い出します」


 里の想いでを振り返るアホの子は無視して、まずは何でカマラが鍛冶嫌いかを知りたい。


「何でカマラは鍛冶が嫌いになったの?」

「それはだなぁ…カマラが作った武器が殺人に使われちまってな、そんな事の為に武器を作ってるんじゃないっ!て鍛冶をやめちまったって訳だ!」

「ワシらの作る武器は騎士や冒険者を魔物から守る為の武器じゃしなぁ」


 なるほど、でも武器なんだし人に向けられる事だってあると思う。カマラはあれで優しい娘なんだろう


「何でカマラさんが作った武器って分かったんです?」

「銘でも打ってあるんでしょ」

「その通りだっ!」


 ふぅむ…殺人と言っても正当防衛だったり、試合の事故とかだったなら気にする必要もなさそうだが…


「殺人ってどんな事があったの?実は身内をやられてたりする重い話系?」

「違うぜ、亜人が無差別に人を襲ったって話だ!今は取っ捕まって王都の牢屋に居るらしいが」


 ほほぅ…亜人とな。人間と小競り合いしてる連中らしいし、人を無差別に襲ってもおかしくはない。

 カマラの作った武器は冒険者でも殺して奪ったのだろう…まさか町中の武器屋で買うわけないし


「亜人ってどんな奴なの?」

「コボルト族って話だ」

「コボルトって…犬だっけ?」

「その通りです。似たような種族にワーウルフが存在しますが、こちらの方が上位の存在になります」

「犬さんと狼さんですね、違いが分かりづらいです…」


 マオの言う通りだ。犬と狼の違いが良く分からない。凶暴さが違うのか、もしくは


「お手をするのがコボルト、しないのがワーウルフって事ね」

「違います」

「何でその基準を選んだんだ?」


 思い付かないもん


「強さも全く違いますが、何より違うのは統率力です。コボルトの群れとワーウルフの群れでは危険度が段違いです」

「ワーウルフも群れるのね…ロンリーウルフ何て言葉があるくらいだから単独行動してるかと思った」

「古くさい言葉を良く知ってるな…」


 狼の話題が中心になってきたが、牢屋にいるのはコボルトだ。獣人とも呼ばれる亜人とやらを見てみたい気もする。


「私達も王都に行く予定だし、ついでにカマラに会えたら伝言でもしましょうか?」

「それは有難い事じゃな。嬢ちゃんの体調が良くなってもまだ帰ってなかったら頼むとしようかの」

「…そうだな、何日も戻らなかったら流石に心配だからなっ!今日明日にでもひょっこり戻ってくると思うが…万が一帰って来なかったら頼んだぜ嬢ちゃん!」


 …寝たきり生活を強要されているのを忘れていた。どのくらい寝たきりで過ごすか不明だが、何日も帰って来なかった場合は割とヤバいと思うが…


 あんまり時間をかけるとマズイ展開になるかもしれないし、外に居るマイちゃんとぺけぴーを心配させ続けるのも悪いから、ガッツリご飯を食べまくって早いとこ復活しようと思った。

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