第1話 私ね。ずっと嘘をついていたんだ。ごめんね。
龍と花。りゅうとはな。
私ね。ずっと嘘をついていたんだ。ごめんね。
高校二年生の十七歳の女の子の龍がその不思議な手紙を見つけたのは、担任の先生とのお話のあとで教室に戻ってきて、部室に行こうとして自分の机の上を見たときだった。
いつのまにかにその手紙は龍の机の上に置いてあった。(なんだか誰かの忘れものみたいだった)
その不思議な手紙には、簡単に言うと『ずっと前から好きでした。私と付き合ってください』ってことが独特の文章の手書きのかわいい文字で書いてあった。(はじめてみる知らない女の子の手書きの文字だった)
手紙も可愛い手紙で、なんだか、小学生の女の子が使っているみたいな(動物の顔とか描かれていた)手紙だった。
でも、『その手紙には名前がどこにもなくて』、だから誰の手紙なのかも、誰に書いた手紙なのかもわからなかった。
龍はその不思議な手紙をもってなんだかその手紙をなんどか読みながらゆっくりと歩いて部室に行った。
あなたに捨てられてしまったとき、きっと私は一度、いなくなってしまったんだと思います。
手紙に書いてあるその言葉がなぜかとても龍の心に残っていた。
誰が誰に書いた手紙なんだろう?
なんでこの手紙は私の机の上に置いてあったんだろう?
そんなことを難しい顔をしている龍は思った。
「おはようございます」
古い看板に『文学部』と書いてある部室の中に入るといつものメンバーがいた。
三つ葉先輩に小鳥にそれから花がいる。
三つ葉先輩と小鳥は机の上でずっとノートに文字を書いていた。
花は部室の中に一つだけある古いコンピュータでキーを叩いて文字を書いていた。
コンピュータは交代制で、今は花が使っている時間みたいだった。
「おはようございます」
「おはよう。龍。今日は遅かったね」
「おはよう」
小鳥と三つ葉先輩と花が顔をあげてあいさつをしてくれた。
龍は自分の机のところにいくと、みんなと同じようにノートを取り出して文字を書きはじめる。
今、自分が書いている小説の続きを書き始めたのだった。
文学部ではみんなが自分の作品をこんなふうにして毎日書いている。
そして休憩時間に物語について語り合ったりしながら、作品を完成させて、みんなに読んでもらったり、文化祭の日には同人誌として販売をしたり、いろいろな小説の賞に応募をしてみたりしていた。
花はわからないけど、龍も三つ葉先輩も小鳥も、みんな小説家になることが夢だった。
みんなあんまりおしゃべりをしないで、もくもくも文字を書いている。(それはいつものことだった)
花が時間になってコンピュータのある机から離れて、代わりに三つ葉先輩がその机の席に座った。
花は龍の前にある自分の机のところにある椅子に座る。
そんな花のことを龍はじっと見つめた。
「なに? 龍。なにか話でもあるの?」
じっと自分のことを見ている龍をみて花は言った。
四人が所属している今は少し落ちぶれてしまったけど、伝統ある県内でも有数の名門の進学校の文学部には龍と三つ葉先輩と小鳥の女の子が三人いて花だけが一人男の子だった。
龍が花を誘ったのだ。
龍と花は小学校のときからの幼馴染の友達だった。
中学生のときにすごく背が高くなって、もともと顔も良くてすごく女の子たちから人気があった。(龍の自慢の幼馴染だった)
龍も背が高くて、綺麗な顔をしていたから、二人はよくお似合いの恋人だと思われていたのだけど、実際にはそんなことはなかった。
龍は別に花のことは友達としては大好きだけど、恋人としては全然好きではなかったのだ。
龍と花はそのまま少しの間、お互いの顔を見つめあっていた。
すると小鳥が、そんな二人の顔をきょろきょろと見てから「あの、やっぱりお二人はお付き合いをなされているんですか?」とそんなことを恥ずかしそうに顔をすこし赤くしながら(でもとっても楽しそうな顔で)言った。
その小鳥の言葉を聞いて、三つ葉先輩が思わず吹き出すようにして、大きな声を出して笑った。




