④変わらぬ朝食
「………おいしい、です」
「それは良かった。味の良し悪しは共通しているようだ」
口元を白いナプキンで拭き、シドリーが静かに喜ぶ。
「姉さん、おかわりってある?」
「ない」
オセが空になった皿を持ち上げて主張したが、姉にあっさりと答えられる。
「昨日も話しただろう。しばらくは物資を節約する必要があると。部下達に我慢させておいて、我々が好き放題食べる訳にもいくまい」
「………うぅ」
斑点模様の黄色い尻尾と耳が垂れる。
シドリーは手についたパンくずを皿の上で払い、カエデに視線を向けた。
「もう分っていると思うが、お前は我々が捕虜にした。こちらの要望通りに動いている間は、安全を保障するが、先程のように勝手に抜け出されると次は地下牢等に入れざるを得ない」
「………はい、済みません」
「素直で結構。うちの妹にも見習ってもらいたいものだ」
シドリーが片目を開けてオセを見る。オセもその意味が分かっているのか、口を尖らせて拗ね始めた。
「姉さんは、いつもそう言う」
「お前が、そう言われる事しかしないからだ」
「むぅ」
まるでどこの家族でもあり得る会話。カエデは自身がもっていた認識の違いから呆気に取られていた。
「………どうかしたか?」
その表情に気付いたのか、シドリーから声をかけてくる。
「あ、いえ………あなた方が魔王軍と言っていたので、もう少し怖い世界を想像していました」
野生の動物を狩り、生のまま肉を食らう。あらゆる分野において弱肉強食が基本の世界で、仲間ですら容赦しない。そんな世界をカエデは想像していたが、具体的な思い込みを避けつつ、失礼のない程度を選びながら言葉にした。
「………まぁ、人間との交流はここ二百年もなかったからな、無理もない」
「人間達が思っている生活は、俺達の国から逃げた四等市民あたりの影響だな」
二百年、四等市民。聞きなれない単語がカエデの耳に入ってくる。
「その辺りの説明は今度に。今は食事の時間にしよう」
「は、はい」
それ以降、会話らしい会話はなかった。カエデもいつもより豪勢な朝食をとり、体に栄養を行き渡らせる。
食事が終わり、オセがテーブルを片付け始める。カエデも手伝おうと立ち上がったが、シドリーが姉妹で決めた役割だと言ってカエデの行動を止めさせた。




