⑤尋問
テーブルの上が片付き、オセが自席に戻ると、改めてシドリーから自己紹介がなされる。
「私は魔王軍のシドリー。77柱が1柱の一人、そして今回の遠征軍の司令官としての役割を与えられている。隣に座っているのが私の妹でオセという。不出来な妹だが、一応私と同じ77柱の一人だ」
「私はカエデといいます………お二人の名前は私の仲間から聞かされていました」
回復魔法や防御魔法を駆使する斧使いの猫メイド。カエデはデルから聞かされた情報を思い出す。
シドリーはそうか、と呟くと話を次へと進めた。
「カエデ。我々がお前に望むのは単純だ。知っている限りの情報の提供、それだけだ。それが済めば、自由の身にする事を約束しよう。望むのならば食料や水、それにお前達人間が使っている金銭も渡す用意がある」
「………情報、ですか」
とはいうものの、カエデは王国騎士団でもなければ政治に関わっている訳でもない。精々冒険者として、または一市民として知っている事くらいしか話ができない。
シドリーもその辺りはカエデの持ち物から予想していたらしく、知っている限りで良いと前置きしてくれた。
何も置かれていないテーブルにシドリーは肘をつく。窓からは相変わらずゴブリンやオーク達が歩いている様子が覗える異様な光景であったが、カエデはそれを背中にして両膝に手をつき、静かに相手の質問を待った。
「カエデは最後まであの街での戦いに参加していたな。それはそれで勇ましく、敵ながら尊敬に値する行いだ………我々が知りたいのは共に残ったお前の仲間達についてだ。カエデからすれば仲間を売るような思いだろうが、答えてもらえれば幸いだ」
カエデは何も反応しなかった。相手もそれなりに気を遣った言葉を用いてくれた事は感じ取れたが、だからと言って全てを語る程お人良しではない。
シドリーが意図してか、淡々と話を続けた。
「カエデの仲間………かどうかは分からないが、両手に大きな盾をもった戦士を知っているか?」
カエデの心臓が跳ね上がる。自然と膝を掴む力が強くなり、体が強張る。
即答できなかった。
「………知っているようだな」
シドリーがカエデの様子からそう判断する。
他愛無い事でもいいから何かを話すべきか。胸の鼓動に耐えながら、カエデは頭の中で何度も反芻した。
そして、震える唇で形をつくる。
「わ、私が知っているのは、彼がつい最近まで騎士団に所属していた人だったという事です。王都では街の巡回や周辺の警備くらいで、あまり大きな作戦には参加させてもらえない部隊に属していたようです」
兄のタイサが底辺の騎士団の騎士だと影で言われている事は、王都の人間なら多くが知っている。そこまで詳しくは話さなかったが、誰でも知っている事なら、とカエデの口から漏らす。




