⑨三者の赴く道
―――翌朝。
疲労が抜け切れていない冒険者や騎士達を含め、タイサ達は集落の中央にある広場に関係者を集めた。
「東でそんな事が………こいつぁ隊長、かなりやばい流れだと思いますがね」
結局一度も起きなかったボーマが偉そうに腕を組んで唸る。カエデもタイサの説明を聞き、さらに周囲の雰囲気も感じ取り、表情を険しくさせている。
タイサがイリーナに視線を送る。
「イリーナ。確認するが、フォースィは何かあれば俺に合流しろと言い、彼女自身は東に向かったんだな?」
目を覚ましたイリーナは、昨日とはうって変わって真剣な表情でタイサの顔を見て頷いた。
「はい。お師匠様はいつもそうおっしゃっていました」
東に向かった事は間違いないと、冒険者達も頷いている。
「………俺の考えを伝える」
タイサが全員の顔を一瞥してから口を開く。
「予定通り、俺達はイリーナと共に東に向かう。ゲンテの街が今現在どうなっているのか分からない以上、目的地を手前のブレイダスとし、そこで情報を集めた後、さらに東に向かうかを判断する」
次にとタイサがシュベット達、銀龍騎士団の三名に目を向ける。
「シュベット達は俺達が使ってきた馬車を使って王都へ向かい、この事を王国騎士団、そして王女殿下に伝えて欲しい。『色付き』の銀龍騎士団、さらに貴族出のお前達が話せば、少しは信じてくれる者もいるだろう」
そうすれば西での事件も再度調査が行われる可能性が浮上する。タイサは自嘲気味に付け加えた。
最後に冒険者達にもやるべき事があると、タイサが続ける。
「シュベット達と共に馬車に乗り、王都の冒険者ギルドのオーナーにも同じ事を伝えてくれ。俺の名前とこの集落の事を話に出せば、必ず信じてくれるはずだ」
王国騎士団と冒険者ギルド。何より王国全体が力を結集しなければ、王国の存亡に関わる。現実を目の当たりにしてきた者達には、それが決して誇張でない事を理解していた。
「しかし隊長。我々はどうやってブレイダスまで向かいますか?」
馬車で行くにしてもまだ五日以上かかる。しかも一台しかない馬車は、王国騎士団や冒険者達に使わせるならば、我々の移動手段がなくなる。エコーはもっともな疑問を代表するかのように、タイサに尋ねた。




