⑩東へ
「大丈夫だ。その点は問題ない」
ここに来た目的の残り一つがそれだと、タイサは朝から壮大な話に巻き込まれて呆れ顔になっているトリーゼに目を向ける。
ようやくかと、彼女は腰に手を当てて溜息をついた。
「集落の皆には話はつけておいたよ。まぁ、元々使う予定も入っていたから、特に大きな準備はいらなかったけどね」
エコー達には何の事だか分からなかったが、急に周囲が暗くなり、彼女達が見上げた事でその意味を理解した。
「南の国から渡り歩いてきたご先祖様が代々育ててきた飛竜達だ。こいつらはまだ若いが、三頭もいればタイサ達とちょっとした荷物程度なら運べるよ」
茶色い鱗をもった『竜』が、ゆっくりと羽ばたきを弱めながら広場へと降り立つ。タイサ以外の仲間達は絵本でしか見た事がなかった羽の生えた巨大なトカゲに呆気にとられていた。
「悪いな。謝礼は、ギュードにつけてやってくれ」と、タイサが笑う。
「もう貰ってるよ。こいつは着陸に若干癖があるけど、基本的な扱い方は馬と同じさ。ブレイダスまでなら二日半あれば着くはずだ」
自信をもってトリーゼが推薦する。
「成程。随分と先の事まで奴の掌の上らしい」
タイサは鼻で笑うしかなかった。そして、竜を連れてきた住民達が、食料や水などの必需品が詰まった荷袋を慣れた手つきで竜の横腹のベルトに取り付けていく様子を眺める。
準備が終わり、タイサは仲間達に指示を出す。
「基本二人一組だ………あぁ、ボーマ。お前さんは一人で乗るんだ」
「隊長おおぉぉぉぉぉう!」
エコー、カエデ、イリーナの誰と組めるのか楽しみにしていたボーマは、両手を握りしめて前のめりになって悔しがった。
「しょうがないだろう? 重たいんだよ。それにその背中の荷物は何だ………あれか、トリーゼから貰った武器か?」
ボーマは布に包まれている巨大な球体を背負っている。トリーゼが言うには『変態には変態を』との事らしい。
とにかく本人だけでも重たいのに、その荷物を背負うだけでも飛竜が可哀想だとタイサが目を細めた。
「よし、じゃぁ皆頼んだぞ」
タイサとイリーナ、エコーとカエデ、そしてボーマがそれぞれの飛龍にまたがり、残された者達に手を振り、声を送る。
「しっかり掴まってろよ!」
「うん。お父さん!」
イリーナは喜びながらタイサの背中にしがみつき、タイサは手綱を一度叩いて竜を羽ばたかせた。
目指すは大都市ブレイダス。




