050 甘々な日々
「り〜んくん」
ここ最近の姫乃の甘え具合がやばい。
家事をしていない時は四六時中俺にハグをしてくる。
あの時の大立ち回りがやはり姫乃の感情を強く揺さぶったのかもしれない。
「ん〜〜〜ん、にゃあにゃあ」
当然、俺も男である。
姫乃のような超絶美少女に抱きつかれて嬉しくないわけなく、さらに言えば大きな胸を押しつけられるがたまらなく気持ちがいい。
俺に抱きついてくる前に着替えてきて、さらに胸元が大きく空いた服で迫ってくるからわざとの可能性が高い。
ま、指摘しないんだけどな。
猫の真似でじゃれてくるので顎のあたりをくすぐってやると気持ち良さそうな顔をする。
くっそ可愛くてたまらん。
左手で顎をなでなでして右手で姫乃の頭を撫で撫でする。
「今日は随分と甘えてくるなぁ」
「おばかな姉に疲れたのにゃん」
「ま、大変だよなぁ」
「……でも仲直りできてよかったです。鈴華さんとあんな風に話せるようになったのは燐くんのおかげです」
「俺は大したことしてないよ。それに姫乃が俺の家族に対して怒ってくれた時、すごく嬉しかったから。俺も姫乃ために何かしたかったんだ」
「……それがとても嬉しい。燐くん、ずっと側にいてくださいね」
「ああ、もちろん」
姫乃が俺に甘えてくる以上に俺は姫乃を守りたいと思っている。
彼女に危害を加える者がいたらどんな手を使っても排除したい。
もし片桐家が姫乃を連れ戻そうとするなら俺は……。
「燐くん、怖い顔をしたらめっですよ」
「そうだな。やっぱり笑顔が一番だよなぁ」
そんなわけで姫乃のお腹周りに指を走らせる。
指に力を入れるだけで姫乃の小さな口から可愛い声が漏れた。
「きゃははははっ! だめだめっ、燐くん……もうっ! 私はいつも笑顔なのにっ!」
「えー。もっと笑った方が可愛いと思うぞ。ほれほれ」
「ああっ! もう燐くんったら」
俺の体の中で姫乃が暴れまくって可愛い。
揺れる胸の谷間を見てるだけで元気になれる気がする。
これからもずっとこういう時間が続いてほしい。
そんな時だった。
姫乃のスマホからピリリと音が鳴る。
姫乃が手を伸ばそうとするのでその方に脇腹を揉み揉みすると崩れ落ちる。
「ひゃはは、こらー、邪魔しちゃだめです〜」
姫乃はスマホを取り、通話のボタンを押した。
相手は平原さんか鈴華のどちらかだろう。
前、平原さんと電話で話してる時に姫乃にちょっかいかけてる時がすごく楽しかった。
耳たぶに触ったり、背中に文字描いたりしてあげたんだよな。
あとでちょっと怒られ、平原さんからも姫乃との時間を邪魔するなって怒られたけど。
「なんでですか鈴華さん。今日はご機嫌なので何でも許してあげましょう。にゃあ〜〜」
今日の姫乃にゃんにゃんはとても穏やかだ。
俺がいっぱい甘やかしたからな。
俺は姫乃を抱きしめて、頭を撫でてあげたら猫撫で声をあげた。
だけどその表情が一変するとは思わなかった。
「は?」
再びドスのある声が響き、俺もびくっとしてしまう。
「ちょっと待ってください。いきなりそんなこと言われても困ります!」
何があったんだ。嫌な予感がする。その時だった。
突然リビングの扉が開いて、鈴華が入ってきたのだ。
「サプライ〜〜ズ。今日から姫乃の家にお世話になるね!」
そう。鈴華が大きな旅行鞄と一緒に侵入してきたのだ。
それを見て俺が抱きしめたままの姫乃は大きな声を上げた。
「おい! そこに直りなさいっ!」
「ぴえんっ!」
猫ではなく虎になっていた。
波乱の予感……





