047 転校して ※鈴華視点
結局は上手くいかなかった。
箱入りお嬢様のわたしが何かできることもなく……あっという間にクラスの全員を敵に回してしまうことになる。
上手くやれると思ったのになぁ……。
「燐……」
始めはあの子と仲良くしている男の子だから奪う目的でお世話係に任命したけど、燐との暮らしは悪いものではなかった。
何かあった時にはすぐ助けてくれるし、ぶつくさ言いながらもわたしを尊重してくれる優しい人。
ずっと女学院に通っていたから異性は正直苦手だ。でも……燐は凄く話しやすくて優しかった。
でも燐はあの子を選んだ。クラスのみんなもあの子を選んだ。
わたし……何やってるんだろう。
逃げるように校舎の奥へ来てしまった。まだ転校してきた数日なのに……お父様に行って転校させてもらおう。
でもそんなことをしたら絶縁されてしまうかもしれない。それにお母様とはもう一言も喋っていない。
「なぁ……」
男性の声がする。もしかして燐が来てくれた? そう思って振り返ったらガラの悪そうな男子生徒が3人いた。
嫌らしそうな目でわたしを見つめてくる。嫌な予感がしてわたしは後ずさる。でも校舎裏の人通りの少ない所だ。後ろは壁で逃げ場がない。
「何よ……わたしに何か用?」
「いやぁ何か寂しそうにしてるからよぉ。あんた噂の転校生だろ。名家のお嬢様だって? マジで可愛いな」
「ちっこいお姫様よりも好みかも。ちょっと遊ばね?」
「遠慮するわ。わたしは忙しいから」
怖いけど気高くいなければならない。わたしは男達に横を通り過ぎようとしたが腕を捕まえられてしまう。
「ちょっと、離して!」
「そんなつれないこと言うなよ。お姫様もこうしてみたいって思ってたけど……あんたでもいいな」
「ここって結構ヤリ場なんだぜ。知らずに来たのかよ」
腕を強く捕まれてどうやっても逃げられない。
まさかこんな事態に陥るなんて最悪な状況だった。組み伏せられて、動けない状態で制服に手をかけられる。
「やめてっ、やあっ!」
「胸も大きいし言うことねぇなぁ」
「男性慣れしたくてこの学園に来たんだろ。慣れさせてやるからさ」
どうしてこんな目に遭わなきゃいけないの……。
もう嫌。家族からも見放されて……行き着いた先がこれだなんて。
もう……落ちる所まで落ちた方がいいのかな。そうすればお父様もお母様ももう一度わたしを娘だって思ってくれるんだろうか。
「写真撮っとけよ。この女はバックがやばそうだしな」
服を剥ぎ取られ、下着姿にされたわたしはもう……考えることやめた。
「おとなしくなったか? んじゃ……いっぱい楽しませてやるからよ」
男達に犯され……わたしは辱められる。その時だった。
「いや、駄目だろ。そんなことしちゃ」
「は? ごふっ!」
犯されると想い、目を瞑った矢先、男の苦痛の声が響く。
ゆっくりと目を開くと燐がそこにはいて、大の男を蹴飛ばしていた。
「なんだてめぇ!」
「こんな学校内で女の子を襲っちゃだめだろ。常識的に」
凄い蹴りだったんだろうか。燐に蹴られた男は悶絶して気を失っていた。
燐って体格もいいし、筋力もあるんだよね。顔立ちもどこか……わたしの好きなスポーツ選手と似ていて……。
「こいつっ!」
男は燐に飛びかかり、殴りかかるが燐は軽やかに避けて、その男の腕を掴みそのまま、足を引っかけて転ばせてしまう。
そしてもう一人も燐に掴んでしまうが燐の力が強く、あっという間に組み伏せられてしまった。
「なんだコイツ……つえぇ……」
「悪いけどオリンピック候補選手と同じトレーニングをしながらアイドルの護衛のつもりで武術もやってたんでな」
「く、くそっ!」
男達は気絶した男を連れて逃げ出してしまった。
「ふぅ……」
燐は制服の上着を脱いで、わたしの体にかけてくれる。
そうだ……わたし、襲われていたんだ。燐が来てくれなかったら最悪なことになっていたと思う。まだ恐怖で体が動かない。
「ここにはあまり近づくなって言っただろう。君や姫乃みたいな子は特にな」
そういえば燐に学校案内をしてもらってる時に言われた気がする。
この学園はマンモス校でいろんな人がいるからうかつにうろつくな……だっけ。
わたしこういうのをすぐ忘れちゃうから無能だって言われるんだろうな……。
でも校内でこんなことに巻き込まれるなんて思わなかった。
「大丈夫か?」
優しい声で言われて顔が真っ赤になりそうなくらい恥ずかしい。
「何でわたしを助けたの。……燐はわたしのことを嫌いなんでしょ」
助けてくれてありがとうって言わなきゃいけないのに素直に言うことができない。
だからわたしは今まで間違いの連絡だったんだ。素直になれなかったことが失敗の始まり。
「別に嫌いじゃない。俺にとって一番大切なのは姫乃だから優先したかっただけだよ」
「だったら放っておけば良かったじゃない」
「君を探しにいって欲しいと言ったのは他でもない姫乃だよ。鈴華が心配だったんだろうな」
「そんなの嘘! 心配なわけがない!」
わたしはあの子の居場所を奪おうとした。なのにあの子がわたしのことを許すはずがない。
燐が嘘を言っている……そう思っていた。すると燐の後ろの方であの子がひょこりと現れる。
何で心配そうな子でわたしを見ているの。心配じゃない……きっと哀れんでいるんだわ。
あの子がゆっくりと近づいてきた。
「鈴華さん」
あの子が声をかけてくる。わたしの人生をどん底に落としたあの子が……。
違うよね。
全部はあの子のせいにして逃げ続けてたわたしのせい。
「話をしましょう。私達、もっと早くこうするべきだったんです」
次回、1章最終話です。





