024 妹襲来
「夜華!?」
「お兄ちゃん!」
本当に俺の妹の葛西夜華がそこにはいた。血のつながった実の妹だ。
「なんでこんなところに」
「もうどれだけ待たせるのよ!」
妹はテレビ出演してるので顔は売れている。変装してもよく見れば分かるだろう。
気づかれる前に脱出するしかない。
夜華の手を引っ張って……人通りの少ない場所へと向かった。
俺が家出してから会っていないため1ヶ月以上ぶりだ。最近芸能活動が忙しかったのでそれ以上かもしれない。
でもまぁ変わってないよな。
「綺麗な子……」
姫乃がボソリと呟く。
俺の妹は世界一可愛い。それは変わらない。
「いつもはすぐに返信くれるのに何でヨルカのメッセ返してくれないの! 家帰ってもずっといないし意味わかんない」
「仕方ないだろ。でもだからって高校までくるなよ。夜華は芸能人だろ。大騒ぎになったらどうするんだ。スキャンダルになるだろ」
「家族に会いにいくのにスキャンダルとか関係ないし」
今、人気絶頂中の夜華にそんな男の影なんて出すわけにはいかない。あの短い時間なら気づかれてないと思うが。
「学校終わってすぐ来たのか。仕事は」
「今日と明日は久しぶりのオフなの。朝くんは合宿あって抜け出せないからヨルカが見にいくって決めたの」
双子のチビ達に心配かけちまったようだ。
二人とも忙しいから暇ないと思ってたのにまさかこんなことになるなんて。
「でも元気そうで良かった。この前、音楽番組を見てたけど頑張ってるな」
「うん、ヨルカ、いっぱいお兄ちゃんにお話したいことあるの! あのね、あのね!」
まったく話を始めると止まらないのは変わらないな。
妹ゆえに可愛がって甘やかしてしまった弊害だろうか。
「話は私の家に戻ってからにしましょうか。誰に見られるか分かりませんから」
「ああ、ありがとう」
姫乃の配慮をありがたく感じる。
そしてその代わり夜華が怪しげな目で姫乃を睨んでいた。
「あんた……誰よ。お兄ちゃんの何? まさか彼女!? あ、お母さんが言ってたお兄ちゃんを誘拐した女!」
あっと言う間に標的を姫乃に変え、矢継ぎに言葉をぶつける。
しかし姫乃はいつも通り飄々としていた。
「違います。私は燐くんの彼女ではありません」
はっきり断言としたその言葉に少し寂しくなるが俺達の関係はそうなのだから仕方ない。
そして姫乃はゆっくりと甘えるように俺の腕にしがみ付く。
そのままぎゅっとしてくることによって腕に姫乃の柔らかい身体の感触が伝わってきた。
「私は片桐姫乃と言います。燐くんとは家族で……新妹という立場です。ねーお兄ちゃん!」
いきなりニュー言語が現れた件について。
こんなにドキドキできる妹がいたら大歓迎だわ。しかし先日は姉って言ってなかったっけ。
いや、もう妹でもいいわ。
「はぁ? 新妹って何よ!」
「初めまして、夜華さん。燐くんと私のお家に招待しますのでど~ぞ~」
姫乃さんの煽りに夜華は激しい剣幕となる。
夜華は気が強いから激情するだろうな。
「お兄ちゃんどういうこと! 妹って、ヨルカがいるじゃない!」
「いや、そうなんだけど」
「ちょっとあんた! ヨルカを誰だと思ってるの」
「旧妹」
「旧妹ってなによっ!」
俺も何だろうかって思う。
多分その言葉の意味そのままなんだろうと思う。
新妹は新妻みたいな意味のニュアンスなんだろうか。
「ヨルカは大人気アイドルグループの序列1位のトップアイドルなんだから! 日本で一番可愛い女の子って言われてるわ」
夜華は中一でアイドルグループに入ってからメキメキと頭角を現し、あっと言う間にトップアイドルにまで上り詰めた天才だった。
クリクリした瞳と魅力的なルックス、長く伸ばした栗色の髪が印象的で歌も演技も上手く、将来は女優への道を確実なものとしている。
今、こんな所で駄弁ってるような状況じゃないんだよな。
「お兄ちゃん! こんな女よりどう見たってヨルカの方がいいでしょ。顔だってっ!」
夜華は姫乃の顔を指さす。
その対象である姫乃はゆっくりと微笑んだ。
「……」
夜華は言葉を失った。
外国の血を引き、学校一の姫の美貌はトップアイドルにだって負けてない。
芸能人である夜華が言葉を失うほどなんだ。やっぱり姫乃って滅茶苦茶可愛いんだろうな。
「ス、スタイルだって!」
夜華は姫乃の胸あたりを指さすが姫乃の膨らんだ胸元や細い手足を見て……言葉を繋げるのをやめる。
夜華もスタイルはいいんだが胸が貧しいんだよなぁ……。まるで成長していない。
最後に大声で叫んだ。
「ヨルカの方が背高いし!」
その言葉は何だかむなしいぞ!
でも。
「ガーン!」
姫乃には効果抜群だったようだ。身長気にしてたもんなぁ。
さてこの無意味な争いを終わらせよう。
「ああ、もういいから。行くぞっ!」
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