転校生君と生徒会からのお願い
そして放課後。僕は昼休みの約束を守るために生徒会室へと足を運んだのだが。
「で、一條さん。説明してほしいんだけど?」
バンッ!と長机を叩き、青筋を立てている赤茶髪の人。前回は自己紹介もなかったので名前を知ることがなかった。
そんな女子生徒さんは、頭突きでもするかのように顔を近づけて、静かに……だけど、怒りを抑えきれないといった声色で生徒会長さんに詰め寄っている。
「説明も何も。話した通りですけど」
対する生徒会長さんは、穏やかに人畜無害そうな笑みを浮かべて向けられた怒りを流している。
流石というべきか。普通は動揺すると思うんだけど。
「生徒会ですよ?一條さんが、あれだけこだわっていた誇りはどうしたのよ!」
「どうしたと言われても。何を怒っているのか、わかりませんけど?」
「一條さん!」
再びバンッと机に両手をついて、生徒会長を糾弾するかのように迫っている赤茶髪の人を見るに、よほど許せないことなんだろう。
「(どうしてこうなったかなあ……)」
現状を顧みるとやや現実逃避したくなる気持ちが溢れて、つい口から小さく零れだしてくる。
これで僕が原因でなければ、なんて思うものの。現実はそう甘くはないらしい。
彼女達、生徒会メンバーはそれぞれ信念というか、何か強い思いを抱いているのはなんとなく感じる。それこそ、生徒会長さんと僕が初めて話したあの廊下での出来事のように。激情をその仮面の下に秘めている事は、そりゃあもう痛いくらいに実感済みだ。
とはいえ。赤茶髪の彼女があそこまで怒る理由は、それこそ場違いな僕にはわからない。
そんな事を内心で考えていると、生徒会長さんはちらりと僕を見て凪いだ表情に一つ色をつける。それはよく見る人畜無害で人好きのする笑顔ではなく、西園寺先輩に向けていた物に酷似していた。
次の瞬間には再び凪いだ表情へと戻り、静かに赤茶髪の人へと語りかける。
「そう興奮することでもないでしょう。説明しますので、一度お茶でも飲んで落ち着きましょうか。私が淹れますので、華原さんはこちらに座ってください」
「会長!?わ、わたしが淹れます……!」
「いや、オレが淹れますよ!」
「いいえ。るいちゃんも佐原君も座ってください」
「なら、自分は茶菓子でも用意しましょうかね」
生徒会長さんが手で制して、湯呑みを人数分用意し始める。その横で長身の男子生徒が器を用意して、お菓子の袋をいくつか開け始めた。特に何も言わなかった辺り、男子生徒の行動に文句はないらしいなと考える。
待ってる間、周りの生徒会メンバーから僕に突き刺さる視線が気になっていたので、若干現実逃避気味なのは気の所為ではない。何かを言いたげで、でも言えない。そんな様子に居心地の悪さを感じる。
「はい、中山さんもどうぞ」
「ありがとうございます、生徒会長さん」
思考を回し、現実から目をそらし始めて数分。僕の目の前に湯呑みが置かれる。確か……汲み出し茶碗というんだっけか。よくお客に振る舞う時に出される湯呑みをマジマジと見る。
「……中山さん?毒なんて入ってませんよ?」
「そんな事心配してませんよ。……ほら、生徒会の人達に誤解されるじゃないですか」
「冗談です。誰かへと振る舞うために自分で淹れたのは久しぶりだったので、お口に合うか心配でつい」
生徒会メンバーが僕へと向ける視線に若干敵意が混じり始めて、内心では慌てるように否定する。わかってたけど、生徒会長さんは意地が悪い。
とはいえ、久しぶりに淹れたというのは本当のようで、生徒会メンバー……特に赤茶髪の人が怒りも何処へやらといった様子で驚いている。
断りを入れて、一口付ける。熱すぎず、むしろ温めのお茶だがとても美味しい。仄かな甘み……が錯覚かはともかく、僕にとっては好みの緑茶だった。
少しの間、穏やかな時間が流れていた生徒会室に、『注目』と声を上げた生徒会長によって再び緊張が走る。
「さて、華原さん、みなさん。生徒会長である私、一條愁歌の名において改めて宣言しておきます。中山奏さんを生徒会臨時役員として、『清掃ボランティア』へ参加していただきます」
いつも浮かべている人畜無害……いや、人好きのする笑顔ではなく、真面目な表情で、だけどどこか冷たい印象を受けるそんな顔をしている。
「だから、どうしてなの!」
納得いかないといった様子の赤茶髪の人は、再び長机をバンッと叩く。その音と気迫に、生徒会長以外の、もちろん事情がわからない僕を含めて肩をビクッと跳ねさせる。
「学外で行う『清掃ボランティア』に関しては、生徒会の活動の中でも特殊で、それこそ生徒会の役員のみで実績を上げる必要があるとこの前も結論付けたじゃない!」
「それに、臨時役員って……」
「そんなもの、認められないと思うけどな。オレも納得いかねえ」
「……」
赤茶髪の人だけでなく、他の生徒会メンバーも生徒会長を見るには少々厳し目の視線を向けている。長身の男子生徒だけは何も言わないが、目は口ほどに物を言うとはまあそういう事だろう。
居心地悪すぎて帰りたくなってきたな……
僕の帰りたいオーラを感じたのか、生徒会長さんは僕を見て一瞬だけ雰囲気を柔らかい物にしたような、そんな気がした。
まるで、私に任せておいてくださいと言いたげな……いや、僕は帰りたいだけなんですけどね?
「なるほど。あなた方は反対であると、そう言いたいんですね?」
「最初からそう言って」
「残念です」
食い気味に赤茶髪の人の発言を遮る。そんな生徒会長さんの声が、なぜだか氷のように冷たく感じて、僕はブルッと体が震えたのを感じた。
「生徒会は一生徒に区別無く寄り添うべきであり、私達の活動は同時に学校の代表として扱われます」
「そ、それは十分にわかって」
「いいえ、華原さん。それでは問いますが、学外での生徒会活動をする上でお手伝いいただくのに、中山さんがダメで椎名さんが良い理由は何故でしょうか?」
「何故もなにも、椎名さんに関しては一條さんが納得して手伝いをお願いしたじゃない!実績を考慮して、今後の活動にも関わってもらうって!」
「あれはあなた方が私の話を聞かなかった上に、既に手続きを撤回できない状況まで持っていっていたからですよ。確かに人手が欲しかったのは事実ですが、私は納得していません。実績を考慮して云々もあなた方が勝手に言い出した事で、私が話したように言うのはやめていただけませんか?」
どの口が、とは思うものの口には出さずに見守る。
感情的にならずに淡々と話す生徒会長さんと、明らかに気圧されているように見える赤茶髪の人を筆頭に他生徒会メンバー。
椎名朱璃さんは自主的に手伝っていると思っていたけど、それとは別で頼み事をされていたらしい。生徒会長以外が引き入れたくなるのは、まあわかるけど。テストの点数も凄まじいし、人望もあるみたいだし。
それでも生徒会長さんの意思を無視して頼んでいる事があったなんて。生徒会長さんの話を聞きたくなくなるのは分かるけど、生徒会メンバーに本性を悟らせてはないだろう事は受け答えでなんとなく察するので、なんだか椎名朱璃という存在に乱されているような……。
何か思考の端に引っ掛かりを覚えるけど、確証もないので一旦流すことにした。
「……部外者の分際でこんな事を言いたくはないんですが、手伝うなら手伝うで早く決めて欲しいんですけど」
ただ、このままでも良くないことは十二分にわかるので、敢えて止めるように話す。生徒会メンバーは手伝いを受け入れる事を渋っているために、当然というべきか、嫌な物を見るような目で僕を見る。お前から辞退しろよ、そんな声が副音声で聞こえてくるのも恐らく気の所為ではない。
ちょっと胸の辺りが気持ち悪くなってきたな……
「そうですね。このままだと決定事項に対して、時間を浪費するばかりで無意味ですし」
「まだ決定してないでしょう……。一條さんの独断で決めることはできないし、何より問題を起こしている生徒と椎名さんとはそもそも立場が違うという事を認めるべきではないかしら」
呆れたようにため息を吐く生徒会長さんに、赤茶髪の人がツッコミを入れる。周りの生徒会メンバーも言葉にはしないものの、納得していませんといった表情をしている。
問題って……あれか。生徒会長に引っ張られて不本意ながら抱きとめられた時のことか。不可抗力でしょ、アレ……
思わず頭を抱えたくなる衝動を抑えて生徒会長さんを見るが、特に表情に変化はない。
ふと、視線が僕の方に向いて、すぐに別の方へと移る。
「だそうですが、どう思いますか?」
生徒会長さんの視線の先、つまり僕の背後。振り向き見ると、生徒会室の入口にあたる扉の前には八宮先生がいた。
「八宮先生!?いつの間に……」
「なんだ、中山。気づいてなかったのか?少し前からいたんだが」
「いや、気づけるわけないですよ。背中に目はついていないですし」
「中山の事だから気づいてくれると思ったんだがな」
「八宮先生、中山さん。お話はそのあたりで、さっさと本題に入りたいのですが」
「お、おう……すまないな、一條」
すみません、と僕も先生とともに謝り、生徒会長に視線を向ける。周りは『シン……』と静まるというか、声も出せずに固まっている。恐らく八宮先生の介入は予想外だったのだろう。
そういえば、最低限の介入しかしていないという話を八宮先生はしていたっけか。こういう話し合いでは事後報告で通していたんだろう事は、反応をみるに想像に難くない。
「まあ、なんだ。元々このボランティア活動に関しては、部活動に入っていない一般生徒にも、1名くらいは参加の呼びかけをしようかという話にはなっていたんだよ」
「であれば、この人じゃなくても良いと思いますが!」
「なんだってそんなに興奮しているんだ、華原。一応中山の担任としてはいい気はしないぞ」
「いや、ですけど!一條さんに飛びついてセクハラ紛いのことをしたような生徒ですよ!?私達が嫌がる理由もわかると思いますが?」
ついに嫌がるとか言い出したよ、赤茶髪の人。噂がかなり嫌な方向へ転がっているのは少し心に来るな……ある意味事実ではあるんだけど。
「ああ、正門前であったとかいう話か。生徒会メンバーが踊らされてどうするんだ」
「踊らされ……?事実でしょう?」
「確かに抱きとめられていたな。だがあれは、一條が中山の腕を引っ張り勢い余ってそうなったと知っているか?」
「しかし」
「少し聞き込みを行ったり、一條本人に確認も行ったのはそもそも生徒会だろう……しかしも何もない」
「……」
まあ、騒ぎにはなっていたらしいというのは色んな人の反応で知ってるし、なんなら八宮先生が僕に直接確認しにきている。
生徒会メンバーが聞き込みを行なっているのは知らなかったが、事実を知ってなお嫌疑をふっかけてくる噂の方を信じるとは……
「八宮先生?本当に生徒会って大丈夫ですか?」
「……信じてくれ、としか言いようがないな。一條や身内に対して少々過保護気味なところがあるようだから、そこは追々な」
「わかりました……」
「それより、中山のボランティア参加についてだが」
八宮先生が話を戻して、主題の話をし始める。
会議は踊る。されど進まず。とはこのことかな?いや、元の話からは逸れてはないし違うか。
違うところに思考を廻らせている僕の事に気づいているのかいないのか、八宮先生は僕の目をジッと見る。
「中山が良いなら、是非お願いしたい」
誰かが息を呑むような、そんな音が聞こえた気がした。
「生徒会長さんがわざわざ僕なんかに会いに来て誘ってくださったので、引き受けるつもりではありましたが……」
「そうか、あの一條がなあ」
遠い目をしている八宮先生の脳裏には、この前の土下座が浮かんでいることだろう。あれは僕もびっくりしたから……
と冗談はさておいても。一條愁歌という人物は生徒会の事に関して、何かしらのこだわりがあるようだったと記憶している。でなければ、僕は理不尽な目に合わなかっただろうし、西園寺先輩や生徒会長さんの連絡先を知ることはなかっただろうし、今こうしてこの場にはいなかっただろう。
よく考えたらそれも変な話だが、そこは閑話休題ということで。
「それは、どういう意味でしょうか。八宮顧問?」
「いや、まあ……それはいいだろう」
胡乱な目で見る生徒会長さんの追及に、コホンと咳払いをして、『ともかく』と続ける八宮先生。
「中山との接点がないであろうお前達の不安も分からなくはないがな。ここは先生を信じてほしい。中山の担任として、1教師として、先生の目は曇ってはいないはずだからな」
「私からもお願いします。強行しようとしたとはいえ、本来はあなた方の意見をしっかりと聞く立場なのに……。わがままを承知の上ですが、中山さんの参加を許していただけませんか」
「………………にな」
「ん?」
さっきから黙っていたお菓子を用意してくれた男子生徒の小さな呟きがよく聞き取れなかった八宮先生と僕、そして生徒会長さん。
そんな男子生徒や僕らをよそに、一つ息を吐いて、まるで気持ちを落ち着けるように胸に手を当ててるいちゃんと呼ばれていた女子生徒が、おずおずといった感じで手をこちらに差し出す。え、僕?
「噂は、その……怖いですけど。八宮先生と会長が、そこまで言うなら……えっと、よろしく、お願いします……」
「え、あ……うん。よろしくお願いします」
差し出された握手を求める手を取る。小さくて、ひんやりとしている彼女の手は、ほんの少し汗ばんでいるような気がした。というか若干震えてる気がして、相手の顔を見ると目を逸らされた。
「まるでお見合いみてえだな」
「〜っ!」
ボソリと呟いた佐原と呼ばれていた男子生徒の声に、バッと手を離して後退る。
いや、うん。そこまで嫌がられるとちょっと傷つくかな……。
「あのルイが、そう言うんなら仕方ねえ。オレもよろしくな」
「後輩がそう決めたなら自分も言うことはないですよ」
「……わかったわ。納得はしていないけど、先生もそう言うんですもの。ただし、少しでも怪しい動きをしたら即座に帰ってもらうから」
「「「えっ」」」
帰ってもらうという言葉に『お前マジかよ?』みたいな反応をする生徒会メンバーに嫌な予感は覚えつつも、とりあえず決まった事を喜ぶとしよう。
……おかしいな、僕は頼まれたからここにいるんだけど。
「その時は私が責任を持って家に帰します。……ありがとうございます、華原さん。みなさん」
安堵の表情を浮かべて、生徒会長さんがこの場にいる全員に対して一礼する。
「では中山さん。後程、連絡事項はお伝えしますので今日は解散としましょう」
「はい、よろしくお願いします」
たかがボランティアへの参加を決めるためだけに、1時間近く話す事になるとは。雰囲気も然ることながら、流石に敵意を向けられ続けて精神的に疲れてしまった。後で生徒会長さんからメッセージでも貰おうかと思っていたので、ありがたい申し出だ。
「当日はよろしく頼むな、中山」
「八宮先生がいるなら、心強いですね」
「いや、ボランティア先の責任者と話し合いがあるからな。実際はあまり関わらないぞ」
「え、困りますけど」
「中山なら先生が居なくても大丈夫だ」
「根拠なく言われても……」
生徒会室を出ようとする直前に先生に呼び止められたので話していたが、どうやら『孤独』と戦わないといけないらしい。
どうしたものかと思っていると、生徒会長さんが肩をポンと叩いてニコリとしながら顔を覗き込んできた。
「私が居るから大丈夫ですよ、中山さん」
「……頼りにしてます」
内心では1番信用できないのはあなたですよと言いたくなったが、堪えて違う言葉をぶつける。少し棒読みだったかもと思ったが、特に気にする様子はなかった。
「ほら、皆さんも帰りますよ」
「少し待ってください、まだ湯呑みを片付けて……あれ?」
「もう片しましたよ。はやくしてください、下校時間も近いんですから」
「いつの間に……流石会長。自分も見習わなければですね」
長身の男子生徒の独り言のような言葉は無視して、さっさと出てしまった生徒会長さんに付き従って、その場の全員が生徒会室から出た。
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その日の夜に、一條生徒会長さんからメッセージアプリを通して電話がかかってきた。
「それ、本当に言ってます?」
『ええ、勿論。良いじゃないですか、サプライズ』
「そういう問題じゃないんですよね……ボランティアなんですよね、頼み事って。行き先は内緒ってなんですか……」
『現地集合にしても良いのですが、せっかくなので』
「茶目っ気入れなくて良いんですよ、あなたの本性はわかっていますから」
『……』
「無言の圧力もやめてくださいね」
『可愛くないことを言うからですよ。後輩のくせに生意気です』
「はぁ……。それで、日時と集合場所は?」
『24日、朝の5時に高校の正門前に集合です』
「……それ、本当に言ってます?」
『なんだか先程も聞いたような返答ですが、はい。ただ、遅刻しても大丈夫ですよ。私が残って正座でもしながら待っていますから』
「絶対にやめてくださいね?遅刻しても休んでも、後から聞いた人や生徒会メンバーに八つ裂きにされかねませんから」
『私の土下座を2回も見ているんですから、そんな細かい事はおっしゃらずに』
「細かい要素ありました!?」
『そもそも遅刻しなければ関係ないのですよ?』
「自分を使っての大胆な脅しはやめていただけないですか……」
『そんな事はどうでもいいんですけど』
「良くないですよ?」
『……』
「……」
『流石にやりませんよ』
「心臓に悪いんで、あまり変なこと言わないでくださいね」
『はい。……その、中山さん』
「なんでしょう?」
『先程は申し訳ございません。生徒会役員の反対意見は読めていたのですが、あれほどの反発を受けるなんて思いませんでした……』
「まあ、予想はしていたので気にしなくていいですよ。ところで、本当に僕で良いんですか?椎名朱璃さんの方が良かったのでは……」
『椎名さんにはこの前助けていただきましたから。それに……』
「それに?」
『なんとなく、こう……今ではないというか。今のうちから椎名さんと仲を深めても、生徒会にとっても、私個人にとっても、あまり良い事にはならなさそうというか』
「そうですかね。あれだけしっかり働いてくれそうな人ですけど」
『それは、まあ。……なんというか、勘ですかね』
「そんな曖昧な」
『曖昧なものを信じてみるのも人生というものですよ。中山さんを選ばせていただいた理由は単純で、後輩の中では私にとって1番信用できるからです』
「……意味がわからないですね」
『初対面だった頃の私からしてもそうだったかもしれませんね。なっちゃん……西園寺夏葉さんとの縁を繋げてくださったのは、あなたですから』
「そんな事しましたっけ?」
『私のつまらない嫉妬で危うく切りそうだった友人という繋がりを、確かにあなたは繋ぎなおしてくださいました。個人的には腹立たしい事もありますが……私、一條愁歌を知ってなおこうして話してくださっている。それ以上に私が信用する理由はいらないでしょう』
「いつかも言ったかと思いますが、過大評価が過ぎますよ」
『聞いたことなかったと思いますが、過大評価ではありませんよ』
「過大評価ですよ。僕はお二人のために動いたつもりはありませ──」
突然ガチャリと部屋のドアが開き、そちらに目を向けるとエプロンをつけた響がいた。どうやら僕を呼びに来たらしい。
「かなにぃ?ご飯だよ?」
「ああ、うん。すぐに行くよ。……というわけで生徒会長さん、すみません。ご飯に呼ばれたので切りますね」
『……わかりました。では、中山さん。当日はよろしくお願いしますね?』
「はい。よろしくお願いします」
やり取りの間、別に何も考えなかったわけではない。生徒会長さんがサプライズと話していたボランティア先について考えなくはなかったけど、聞いても教えてもらえないだろうなと聞くことを諦めていた。それだけだ。
耳から離して電話を切り、響の方をもう一度見ると、不思議そうな表情で僕を見ている事に気づいた。
「どうしたの?」
「ううん、なんでもなーい。はやく行こっ」
読んでくださり、ありがとうございます!




