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転校生君とゴールデンウィーク明けの学校

屁理屈っぽい奏君の心情。


これの1つ前の回でめちゃくちゃ恥ずかしい話ですが、『まぶす』に関して奏が思考していた点。あれ別に方言でもなんでもないんですね。いや、ほんとごめんなさい。か、勘違いした奏ということでここは1つ……

あー恥ずかしい……


「中山君、歩くの速いよ〜!」

「待って……」



2人が僕の後ろから着いてくる。さっき横に並ばれたけど、距離感が近過ぎて恥ずかしくて……手が触れるくらい近いのは流石にダメでしょ?パーソナルスペースを守って欲しい。キミ達みたいな陽の者の距離感ほんと駄目。

仮にさっきの僕を事情を知らない別人視点で見ると、二人の美少女と呼んでいい高校生を冴えない顔で髪も整えていない男子高生が両側に侍らせているのは……うん、世の不条理さに壁を殴りたくなるね。昔壁殴り代行ってのがあったけど、今もあるんだろうか。あるなら今月のお金を全て注ぎ込みたい。



「なんだか変な顔してるよ?」

「中山君が変な顔をしたり、考え込むのはいつもの事」

「それもそっかあ。昔からだよね、中山君」

「そこも良いところ」

「中山君を肯定するのはいいけど、盲目になっちゃダメだよ、彩愛ちゃん?」

「みぃちゃんにだけは言われたくない。この前も朝一緒に」

「わー!?その話は今しないでよ!」

「今のでどの話かわかったの?すごい」

「そんなにないもん!」



2人がコソコソ言い合っているのは良いんだけど、距離感が近いから結局聞こえてますよー?

なんだか僕には聞かれたくなさそうなので、離れればいいのにと思いながら話を聞いていないフリをしつつ、現実逃避という名の思考に溺れる。


今のこの2人、それと津田君は課外活動で僕に接触してきて、4人で話すのが当たり前という形で話をしに来ている。

小学生の頃からの友達という事で、僕に対しての距離感が近いのは理解できている。初日からやたらと近かったお隣さんも、班決めの時に林道君と話していた僕に対してグッと詰めてくる川瀬さんも。むしろ同性である津田君の方が距離感が遠いくらいだ。どうなっているんだ女子。


まあ、そんな事はどうでもいいけど。これから先、まだクラス替えまでは11ヶ月もあるわけだけど、今の状況をそのままにしていたら、いい加減なにか嫌な事がおきそうな予感がする。

多々良君はまだ一人で突っかかるくらいで実害もないし、なんならお隣さんを押し付けられるから丁度いいんだけど。多々良君がお隣さん狙いなのはもうわかっていることだから。

ただ、他のクラスメイトがどう思っているのかは流石に僕には分からない。その辺は新谷さんや林道君に頼めば聞いてくれるかもしれないけど……聞いてもらって何が変わる?結局離れるのが1番なんだよね。


例えば離れるにしても、事情をこの2人と津田君に話したとして、離れてくれるかというと多分そうならない気がする。そういう空気は読んでくれそうにないし、むしろ酷い目に合わないようにと常にくっついてくるんじゃないかと思う。そうなれば詰み。

人気者を近くに寄せている冴えない男子。それに、その人気者達が他の人との交流を後回しにしてしまい人間関係を希薄にしてしまうなんてことになる。そうなると、僕がヘイトを買いすぎてどうなるか……僕には予測できない。流石に嫉妬心から包丁やハサミでグサリとかはないだろうけど、……え、ないよね?不安になってきたよ僕。


どうにもネガティブ思考が先行して、これからの話をうまくまとめられないなあ。現状維持……いや、明確に僕と関わる理由がある林道君や新谷さんとの交流を深めて、3人からうまく離れるのが良さそうだね。

関わりを避ける為に誰かと関わりを持つなんて、皮肉なもんだね。



「むう、もう着いた」

「仕方ないよ、ずっと早歩きだったから」

「女子2人に話しかけられて逃げるなんて」

「ねー?」

「でも彩愛にはコレがあるからいつでも話せる」

「え、スマホ?」



お隣さんにはメッセージアプリのIDと電話番号は伝えているので、繋がってはいるのだけど。内緒にしてほしかったなあ?

まあ無理か。仲良しには話したがるのが女子というものだよね。……偏見?そうかも。



「……あっ!彩愛ちゃん、ずーるーいー!」

「いいでしょ」



後ろのああでもないこうでもないというやりとりを聞き流しつつ、学校にいつの間にか到着したらしい。生徒はあまり居ないようなので本当に早い時間なのだろう。

部活の朝練だろうか。体育館の方面からドンッドンッという音が聞こえる。音からして球技系だろうか。



「中山君、聞いてる?」

「ん?ああ、ごめんね。なんにも聞いてなかったよ」

「もう!どうして彩愛ちゃんだけに連絡先教えてるのかな?」

「聞かれなかったから」

「え、じゃあ、聞いたら教えてくれた?」

「その時によるかなあ」



ぷくっと頬を膨らせるキラキラ女子さんはちょっと僕には直視できないかわいさがある。なんて心にも無いことを思いつつ、仕方ないなあとスマホを取り出すと目をキラキラさせている川瀬さんを幻視した。

大人しく電話番号とメッセージアプリの交換をする理由としては、いつでも繋がりを断ち切れるという事とメッセージのやり取りで満足してもらって、学校での必要以上の接触を避けられるかもしれないという期待からだ。

別に仲良くしようだなんて思ってないけど、川瀬さんに対しての印象は僕は悪くないし、林道君の目的の手助けになるはずだと信じている。

川瀬さんに僕のスマホを渡して入力等を任せていると、ほんの数分で完了したみたいだった。下駄箱前でやることじゃないね、これ。

今更ながら気づいたことに内心苦笑いしていると、川瀬さんからスマホが返ってきたので受け取る。…あれ?ちょっと、離してくれないと受け取れないんだけど?



「ねえ、中山君」

「なに、川瀬さん」

「津田君にも教えていい?」

「え?あー……」

「ううん、そうだよね。本人とやり取りしなきゃだめだよね。じゃあ、グループはどう?個人的なやり取りもないし、それならいいかな?」

「まあそれなら。キミ達への返信も基本グループを通せるし」

「それは個人で返してほしいな」

「か……中山君はあまり返してくれない」

「キミのはメッセージが多すぎるんだよ。もうちょっと自重してね」

「あれが限界。普段話しかけても無視するから、それくらい我慢してほしい」

「勘弁してよ」



メッセージアプリも3人のグループに入れられて、今度こそスマホを返してもらった。話し声も多くなってきたし、こんなところで2人と話していたら余計な誤解を生みかねないのでさっさと教室へ向かうことにした。



「ちょっと、中山君!」



待ってほしそうにしてたけど、上履きに先に履き替えない方が悪いよ?

2人を置いて教室に……の前にちょっとトイレに行っておこうかな。時間調整してから教室に行こうと考えて、2人に追い付かれずかつ怒られない程度に急いでむかった。






───────────────────────────





 

「おはよー」

「おはよう!昨日のドラマ見た?」

「見た見た!プロポーズミッションインポッシブルだっけ!あんな男の子に思われたいよねー」

「変なおじさんが現れて、男の子とその男の子が想いを寄せてた女の子を結ばせる為に過去に飛ばして、赤外線センサーが張り巡らされたお屋敷に潜入したり、花を届けるために飛行機を自分で操縦して、最後は飛び降りたり、すごかったよね!でも、あの秋刀魚を焼くシーンは緊張しちゃったよ」



教室に入ろうとしたらそんな会話がされてて、なんだそのドラマはって固まっちゃった。言ってることから全くなにも連想できなくてうまく飲み込めない。

テレビは基本的には響に権利があるので、見る機会が少ないのも影響してるのかな。自分の部屋だとゲームしかしないし。

流石に教室の扉の前で立ち竦んでる訳にはいかないので開けて入る。



「あ、中山君!おはよっ」

「なかやん、おはーっ」



中に入ると、席に着いている新谷さんと新谷さんの机に腰掛けてる上村さんが声をかけてきた。そういえばこの2人、廊下側の1番前の席だったね。いきなり声をかけられてびっくりしちゃった。



「新谷さん、上村さん、おはよう。朝から元気そうだね」

「昨日のドラマが大興奮物で、ね、かおり?」

「アレは凄いとしか言えない。なかやんは見なかったん?」

「あー、うん。リビングのテレビは妹が所有権をね」

「妹さんが?あれ、中山君の部屋にもあるって言ってなかった?」

「あれ、話してたっけ。自分の部屋のはゲームをする時しか使わないんだ」



新谷さんに僕の部屋のことがバレてる!って思ったけど、そういえばメッセージのやり取りをしてるときに、そんな話の流れになったような。知られてもあまり意味はないけど、新谷さんに対してはちょっと脇が甘くなってるのダメだな。



「なかやん、スマホでもゲームしてるのにテレビゲームもするん?たまには外で体動かさんといかんぞー?」

「体育の授業だけで手一杯だよ」

「じゃあじゃあ!今度さ、うちらと遊びにいこーよ!」

「あの、上村さん、話聞いてた?僕、手一杯なんだよ」

「中山君の都合が良い日でいいよ?」

「……中間テスト終わってからでいい?」

「「「「テスト……!」」」」



僕の言葉に何故か反応する名も知らない男子生徒達とさっきドラマの話をしていたであろう女子生徒達。まだクラスメイトの顔と名前がうまく一致していないから許して。

それにしてもまだ中間テストなのに、そんなに嫌がるものかなと首を傾げる。



「なかやん……萎えるわー。シッシッ、優等生ちゃんは向こう行ってなさーい」

「話しかけてきたのそっちなんだけど……まあわかったよ」



新谷さんは苦笑いしていたけど、手を小さく振ってくれたのでこっちも振り返してみる。髪で隠れてしまって目がうまく見えないけど、口元は小さく微笑んでいたような、気がする。

そのことに少しだけ胸の奥の方がざわついて、誤魔化すように自分の席に向かう。


珍しくお隣さんは川瀬さんの方に行って話し込んでるし、ジッと見られなくて助かるなあなんて思ってしまう。



「おはよ、林道君」 

「おう、おはよう、中山。この前はありがとな」

「どういたしまして。僕はルール分かんないけど、林道君は頑張ってたね」



席について、カバンを机の横にかけたり、次の授業の準備をしながら、前の席に座っている林道君に挨拶をする。

何かに夢中になってたみたいで声をかけたらキョロキョロしていたけど、僕を見て挨拶を返してくれた。

……スマホを見てなにをニヤニヤしているんだろう?



「ああ、これか?川瀬さんがさ、この前の練習試合の後、一緒に写真を撮ってくれてさ。ほら」

「ふーん?どれどれ」



林道君のスマホを覗き込むと、確かに川瀬さんと林道君が並んでる写真が見られた。でも……



「林道君、これ……」

「言うな。わかってる」

「キミも大変だねえ」

「いい加減、幼馴染離れしてほしいもんだ」



反対側にはやけに距離の近いちみ姫さんとその隣に櫻井さんがいて、ちみ姫さんに至ってはぷくうと頬を餅のように膨らせている。

多分僕が帰ったあの後に詰められて色々言わされたんだろうな、林道君。それにしては声が優しいんだけど、もしかしてツンデレさんというやつかな?わかりにくいけど。



「いやあ、僕から見ると羨ましい限りだよ」

「……お前な、周りを見てみろよ。そっくりそのままその言葉返してやるよ」

「周りって……」



近くのクラスメイトがうんうんと頷いているのが解せない。というか君達、前も似たようなことしてたけど、林道君に雇われてるの?

新谷さんや上村さん、川瀬さんにお隣さんも興味ないふりして聞き耳を立てているんじゃありません。見ればわかります。

僕が嬉しがっていた様子なんて見せてないだろうに。まあ、傍目から見れば女子に囲まれていたクソ野郎ってところだろうけど。そんなに羨ましいなら代わってあげるよ。多々良君どうだい?背筋を震わせて怯えなくていいからさ。



「中山ポイントを投げ捨てる覚悟で言うけど、中山、目が据わってるぞ。多々良が困ってるだろ」

「おっと。お見苦しい物をお見せしてすみません」

「……中山、お前が敬語使うと気持ち悪いな」

「うっ……」



今日の林道君、容赦がない。もしかしてこの前、ちみ姫さん達に協力関係をバラした事に対して、根に持ってたりする?



「お、本鈴だ。またつまらない授業が始まるな。今日も1日ほどほどに頑張ろうぜ」

「うん。頑張ろう」



先程までガヤガヤと騒がしかったゴールデンウィーク明けでも関係なく、今日の時間割は全て埋まっている。長い1日になりそうで、ちょっと憂鬱だけど……はっ!?これが五月病!?

先生が何かを話している間、脳内で色々と考えていたこともあり、何を言っているのか頭に入ってきていなかった。

ふと、先生が呆れたように見ているのに気がついた。



「おい、中山。なに百面相しているんだ。さっさと並べよー」

「はい、八宮先生。……ん?並ぶ?」

「なんだ、今の話聞いてなかったのか?今から席替えのクジを引いてもらうから列ごとに呼び出しているんだけどな。そんなに1番前がいいなら真正面に中山はいてもらうが……」

「わあっ待ってください、クジ引かせてください!」

「そのつもりでその列を最初にしたのだが……」



席替えという事は、お隣さんがお隣さんじゃなくなるのか。

うん、それはありがたいな。あのチラチラ見られてる感じ、授業に集中できない。ただ、窓側じゃなくなるのはちょっとやだなあ……


自分のクジを引く番になり、てきとうにクジを掻き回し、これだという物を取り出す。

番号と場所を黒板で確認して……



いつも読んでいただきありがとうございます!

たくさんのマイリス、いいね、評価、本当にありがとうございます!

あと遅くなってしまいましたが、誤字脱字報告も1件いただいて、確認次第訂正しています。報告感謝です!

これからも良ければお話にお付き合いくださいませ。

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