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転校生君と部活の試合見学

普段よりほんの少し長めです。分割しようがなかった。



今日はゴールデンウィーク3日目。ゴールデンウィークとはいえ、妹とお出かけをしたくらいで平和な日を過ごしていた。

具体的には母さんと父さんのイチャイチャシーンの写真が10分ごとにメッセージで送られてきたり、新谷さん達の課外活動組グループでメッセージ削除祭りがあったり、お隣さんからのメッセージを3件に1回返信したり。


うん、平和だ。母さんと父さんの行動に対して、家族仲が良いのはいいことだよねと妹に言ったら、『かなにぃ…本当に思ってる?』なんてちょっと引かれたりしたし、お隣さんは僕からの返信があるたびにメッセージ連打してたけど。

お隣さんって実は怖い人なんじゃないかと最初から思ってるけど、連絡先交換は本当に止めたほうが良かったかもしれない。……僕が捻くれてるだけなのはわかってはいるけれど。


で、現在。

僕は林道君のお誘いにより、我が高校サッカー部の練習試合を見学に来て。サッカーなんてルールわかんないんだけど、一生懸命な林道君を応援している。

林道君って変な人ではあるんだけど、顔は整ってるし、髪型キマってるし、打算ありだけど僕にも話しかけるしで、同年代の中ではかっこいい枠にかもしれない。スポーツもできるし。

ただ勉強ができるはまだ未知数。中間テストもまだだからね。



「りんどーくん!がんばれー!」

「頑張ってくださーい」

「しゅーくーん!」



僕が張り上げた声に隠れて声を出す、確か櫻井咲希さんと、しゅーくんとかわいらしく声をあげる【ちみ姫】……知世みちるさんだ。

その2人がなぜか。本当になぜか僕を挟むように座っている。

確かに僕は林道君から2人を頼まれた。林道君の目的は今この場所にいる川瀬さんと親交を深めることであり、今両手が触れそうなくらいに近い2人は邪魔をしてしまうのでその引き止め役をと。


僕を挟むように座っている理由を必死で考えていると、林道君がシュートを決めたらしい。意外に見学者が多く、埋もれて見えてはいないが恐らく川瀬さんがいるであろう部分にピースサインを向けた後、こちらにもニカッと笑って同じようにしてきた。



「ふしゅ〜……しゅーくん、かっこいぃ……」

「みちるさん、頬を赤くしてとてもかわいらしいですね。気持ちはわかります。林道さんは素材がいいのですから、普段もあのくらい真剣に取り組んでくれたら、あたしですらころっといくかもしれません。ねえ、中山さん」



同意を求められましても。そこはどう反応すればいいんですかね、櫻井さん。

困ったように頬を人差し指で搔いてしまう。



「それにしても、中山さんが林道さんの応援に来ているだなんて予想していませんでした。こういったスポーツ観戦はお嫌いかと思っていたのですが」

「どういうイメージを持たれていたのかは気になるところだけど、まあ好き好んでこういう場所には来ないなあ」

「ではまたどういう風の吹き回しで?」

「キミたちと同じ……いや、似たような理由かな」

「では林道さんから誘われたと?教室であんな事言っておいて仲良くしているのですね」

「きいてた……そりゃあまあ聞いてるよねえ。僕も不思議なくらいだよ、林道君が仲良くしてくれるなんてさ」



林道君が僕と表面上仲良くする理由は、川瀬さんとの接点作りとあわよくば付き合えるように協力してほしいから仲良くしようぜ!って感じだからなんだけど。

2人がそんなことを知るはずもないか。なんて考えていると、隣のちみ姫さんがオドオドしながらも、どやや!って感じの顔で僕を見てきた。



「しゅ、しゅーくんは優しくてかっこいいのです……!おともだちさんが、しゅーくんのおともだちなのは当然なんでしゅ…っ!うぅ、噛んじゃいました……」



う、うーん……理屈が欠片もわかんないんだけど、幼馴染ってのは盲目的であれとか何か決まりでもあるんだろうか。櫻井さんの方に目を向けるとちみ姫さんを微笑ましげに見ている。


あの、お二人の間に僕いらないよね。今すぐ離れ……ちょっと?服を掴まないでほしいな、櫻井さん。あの、ちみ姫さんも……はい、わかりました。動きませんとも。

ダメだこの人達。林道君もいつもこの二人に振り回されてそうで大変そうだなあ……

気遣わしげに林道君を見ると、引きつった笑みを浮かべて口をパクパクさせる。なんだろうか。



「え、えっと、『なかやまがんばれ』?しゅーくんは何を言ってるの……?」

「よく気づいたね……そんなこと言ってたんだ」

「おしゃななじみですからっ!」

「から、です」



ドヤッてるところ悪いけど噛んでる噛んでると指摘しようとすると、櫻井さんまでドヤッと胸を張って追随する。

林道君いつもこのノリについていけて……ないな、課外活動の時に何か困ってたし。バスの中でも何か聞こえてた気がするし。


苦笑いをしている自分に気がついたのと同時に、2人から課外活動の時のように自分の心の奥底まで覗くような目で見られている事にも気がついて、気味の悪い感覚を覚える。

少しだけ右手をギュッとかたく握ってしまう。女子への緊張感ってもっと甘酸っぱいものなんじゃないのかな……



「……それで?愛しの幼馴染さんよりも優先して、キミたちがわざわざ僕を逃げられないようにする理由はなんだい?」

「いと…!あ、あうぅぅ〜……!」

「中山さん、あたしまでそう思っているかのように言って巻き込まないでください。赤面するみちるさんを見たいのは十二分に理解できますけれども」



ちみ姫さんが手で顔を覆って会話が出来ない状態になり、櫻井さんも少し早口で話してくる。おかしい、会話の切り口としては間違ってないよね?ここから重い話を聞けると思ってたのに見れたのは想いの方だったなんて。……って、違う違う。

くだんないこと考えてないで逸れた話を修正しないと。



「別に見たいわけじゃないんだけどね?理由が聞きたかっただけなんだよ」

「どうしてですか、みちるさんのかわいらしい姿を見たいって言わないとバケツで水をかけますよ。見たいって言うのであればホースで水をかけますけれど」

「酷い選択肢なんで黙秘するね。それにしても、林道君といい、櫻井さんといい、どうして僕に水をかけたがるの?」

「水も滴れば良い男に生まれ変われるかもしれませんよ」

「それって裏を返せば大した事ないって言われてるよね?あんまり話したことない割には、櫻井さんって僕に対して辛辣だよね……」

「褒めないでください、照れます」

「え、どこにそんな要素が……待って待って、褒めてないよ!……え、本当に頬を赤らめるの?やめてよ、怖いよ」

「まあそれはそれとして」



それとするんだ……と内心引きながら、話をする気になったであろう櫻井さんに、こちらも真剣になる。

ちみ姫さんもようやく落ち着いたらしく、こちらをジッと見ているのを感じる。



「あなたの本当はどこにあるんですか?」

「はい?」

「林道さんと話している時に、あたしとみちるさんであなたのことを観察していました。目を合わせたあなたが不快そうな顔をしていたのも当然気づいてはいましたが、すみません、これだけは譲れませんでしたから」

「うーん……よく分からないけど、僕が林道君に対して何かするんじゃないかってこと?」



まあそれは気になるだろうなとは思う。

僕の転校初日は人気上位の川瀬さんやお隣さんを気落ちさせ、次の日には2人の愛しの林道君が僕に話しかけてきて意気投合した。この時点で多分目をつけられてるよね、僕。

一週間後には林道君と僕が一緒の課外活動班になるはずが、多々良君の陰謀……は言い過ぎでも一悶着あって、林道君と離れて新谷さんの班へと移動。かと思えば林道君と一緒に課外活動に参加していたり。

振り返ると酷いね、これ。静かにしたいとはなんなのか自分。



「あなたの見た目上は、なにからなにまで普通です」

「なに?馬鹿にしてる?」



僕の質問には答えず、何かを探ろうとする目で上から下まで全身を隈なく、それこそ髪の毛の一本まで見られるような錯覚を起こすほどにじろりと見られた。

2人分の視線に晒された上に、人の事を普通だと言い切る櫻井さんに少し腹が立ち、つい反応してしまう。

だけど、頭を横に振り違うのだと表現する櫻井さん。



「しゅ、しゅーくんのおともだちさんの怒っているところを見たわけではないから、本当にそうかは言い切れないのです……!でも」

「あなたの瞳の奥にあるはずの感情が一切揺らがずに何一つ見えない。色がないとでも言えばよろしいのでしょうか」

「い、色?」

「人は必ず瞳の奥に感情の色を宿します。ああ、赤とか青とかの事ではなく、簡単に分けるなら喜怒哀楽のことですね。その色が私達には見えます」

「……なんか新手のセミナー勧誘か何か?それともラノベの読みすぎ?」

「好きに言って頂いて構いません。ともかく、あなたは今も私達に対して不信感や苛立ちを覚えている、そんな表情をしています」

「わかってるなら、やめてほしいところだね」



だからなんだよとつい声に乗せて怒りをぶちまけたくなるけど、林道君の目的がある以上は下手なことができないので我慢。



「あなたがその感じているものに対して、表情や声色は確かに変動しています。ただ……目だけは感情の波を感じないのですよ。つまり本心ではなんとも思っていないか、私達に壁を作っていて演技をしている……そもそも私達と関わる気がないのか。もし、仮に人と関わる気がないのであれば、どうして林道さんや新谷萌さん達と仲良くしているのですか?今もこうして対話をしている理由はなんでしょう?林道さんに何をするつもりなのでしょう?」



見学者達が歓声を上げているのが遠くに聞こえてしまう。林道君の方を見るとこちらを首を傾げて腕を組み見ており、何をしているのか疑問に思っている様子だった。



「もう一度聞きます」

「おともだちさん」

「「あなたの本当はどこにあるのですか?」」



示し合わせていたのか、なんなのかは分からないけど、彼女達は林道君を心配して僕に関わってきているのだろう。

愛されてるねえ、林道君。幼馴染って若干バカにしてた部分があるけれど、心配してくれる良い子達じゃない。



「僕が新谷さんや林道君と仲良くする理由は、勿論お友達……になりたいとかそんな理由じゃなくて、単純に僕と利害が一致しているから。キミ達や他の人と対話をするのは別に嫌じゃなくて好ましいんだよ?ただ……いや、なんでもない。ああ、少なくとも林道君は僕を利用する目的で僕と仲良くしているよ。目的自体は言えないけれど」

「それは……」

「……しゅーくん、川瀬さんのこと、まだ諦めてないんだね」

「え、理解がはやくない?」

「おともだちさんに関係して、利害が一致していて、今この場所におともだちさんと……向こうに川瀬さんがいる。さっきのゴールでも、先に向こうにポーズをしていた。あうぅ……おかしいなって思ったのに……気づきたくなかった……」



櫻井さんが言い淀んだ事をちみ姫さんが言い切るのに戦慄する。なんだこの2人、林道君に対する理解力が高すぎて怖い。

そしてごめん、林道君。僕と君の関係性を喋っちゃったよ。

練習試合が終わったのかホイッスルの音がする。林道君はどうやら川瀬さんの所に報告?話?に行く様子だ。



「ということで、僕は林道君の味方なんだ。おとなしくこのまま」

「理解できない」

「は?なに、ちみ姫さん」

「お、おともだちさんは……川瀬さんのこと、いいのですか……?聞いている話だと、引っ越し前から仲良くしていて、今もあんなに想ってくれているのに。班分けの時でも、みんなを断ってまで誘ってくれていたのに……どうしてそんなに離れたがるの……?」



どこか必死に僕に訴えかけているちみ姫さん。僕と川瀬さんを自分と林道君に置き換えて見てしまっているのだろうか。それとも林道君を取られたくないから川瀬さんを押し付けたいのか。

焦る気持ち自体には理解ができる。だけど、それだけだ。



「僕はさ、僕自身わかってないんだよ。どうしたいのか、どうしていきたいのか。ただ、記憶があっても思い出せずに覚えがない事を、友達だなんだとくだらない事を、さも当然のように伝えてくる川瀬さん達に嫌気が差している。それに、僕には……」



リセット症候群。病気でもなんでもないそれを僕がその衝動に折り合いをつけない限り、過去の何かに納得したところで、衝動自体は治まらずに結局繋がりを自分から切ることになる。大切な人にも、良くしてくれた人にも泥を塗りたくる行為だと理解もしてるし、衝動に警戒もしているけれど、抑えられないものなんだよ。これは理屈でもなんでもなく。それでも学校生活は普通に過ごせるんだから質が悪いよね。



「はは、理解できないって顔だね。そうだね、好意を無下にするなんて、こんなに捻くれてる人は多分そうそういないよ。ただ、一度切れた繋がりを戻そうとしてまた切ってしまうよりは……林道君と川瀬さんの間に新しい繋がりを作った方が幸せになれるんだよ。ちみ姫さんと櫻井さんには悪いけどね」



言い切った後に、ちみ姫さんと櫻井さんの反応を見ず、僕の方に寄ってきた人へと笑顔を向ける。

林道君は僕と2人との温度差が違うのを見て首をひねっている。ただすぐに興奮したような表情で話し始めた。



「中山、俺達勝ってきたぜ」

「見てたよ、大活躍だったじゃない」

「おう!みんなが応援してくれたんだ、当たり前だ!ありがとな、中山。それにみちるも咲希もいつも応援してくれてありがとう!」



ニカッと笑って僕らにお礼を言う林道君が眩しく見える。

僕以外の男子……多々良君以外はみんないいヤツだからみんながなにかするたびに僕の腐った心が浄化されそう。



「う、うん……しゅーくんの為だもん!」

「みちるさんが応援するのですからあたしも頑張って応援しました」

「二人はいつもそう言ってくれるな。サンキュー。今日はせっかくだし片付け終わった後になるけど帰りにさ、4人でなんか食べに行こうぜ」

「んー、せっかくのお誘いだけど、やめておくよ。妹と母さんに頼まれていた物があるんだ」

「そうなのか?残念……じゃあ中山はまた今度だな」

「うん、また今度」



ちみ姫さんと櫻井さんはこのあとに川瀬さんの事について追求するんだろうか。なんて考えながら、試合も終わったので帰ろうとすると林道君に耳打ちされる。



『今日は二人のこと、助かった。少しだけ前に進んだ気がする』

『それは良かった。ただ、林道君の目的がバレちゃったから頑張ってね?』



そうニコリと返して、またみんな学校でねと林道君達に声をかけてその場を後にした。



いつも読んでいただきありがとうございます!

そして、マイリスや評価、いいねがめちゃくちゃ増えていて驚嘆しております。いったいこの2日間で何があったのかはわかりませんが……本当にありがとうございます!

さらに感想もいただき感謝感激雨あられです!

読んでいてなんだこいつってなる部分が多い話ではあると思いますが、良ければ今後もお付き合いくださいませ。


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