転校生君と課外活動3
「ところで中山。なんでこんなにギャラリーが多いんだ?」
「キミが目立つからだよ、津田君」
肉や野菜を2台並べたバーベキューコンロで焼きながら、そんな話をする。周りにはなぜかうちの班員だけでなくて、別の班や別クラスの人達も来ていた。
なぜかって?学年でも有名どころ、憧れの存在らしい津田君やお隣さん、川瀬さんが同じ班でこの場所に集まっているからだよ。モテるって大変だね。
「ねえ、津田君。僕、この場から逃げ出していい?」
「駄目に決まってるだろ。ほら、いいからそこ焦げるぞ」
「はーい。あ、赤羽君が1番頑張ったから1番にあげるねー」
「マジか!ありがとな、中山!」
「どういたしましてー」
その場の雰囲気というものもあるかもしれないが、ちょっとテンションがおかしい自分に内心笑いながら焼き係を続ける。
苦手なはずの津田君にも対応できてるからテンションって大事。
焼きながら周りを見ると、お隣さんには多々良君を中心とした子が話しかけ、川瀬さんは僕らの近くで他の人への対応をし、新谷さんと先程どこかに行っていた上村さん、渡貫さんに上白沢さんは4人仲良く話しているので取り分けておいて、渡しておいた。赤羽君は今だけはお肉に夢中なようだ。
そういえばと津田君達の班の一人を探すと林道君と何かを話している。……あれ、ちみ姫さんも一緒だね。林道君は何かを二人から聞かれて困ったように視線をこちらに向けている。
「林道くーん!お肉焼けたよー!他のみんなも食べて食べてー」
仕方ないなあと林道君を呼び寄せると、他の二人も引き連れてきた。あれ、逃げたかったのじゃないのか。
「中山、あんまり大きな声で呼ぶなよ、注目されるだろ?」
「いいでしょ、別に。ほら、川瀬さんもこっち見てくれてるよ」
「おまッ」
「何赤くなってるの?川瀬さんと仲良くなりたいんでしょ?」
耳打ちで僕に話しかける林道君に同じく耳打ちで伝えると、頬が赤くなる。そんな僕らの様子をジーっと見ているちみ姫さんともう一人の女子。
「ねえ、林道君。ちみ姫さんと知り合いだったの?」
「ちみ姫?……あー、コイツの事か。幼馴染ってやつだな。そっちのはコイツの友達で俺たちの班員だな」
「へえ。幼馴染関係なんて都市伝説か何かだと思ってたよ」
コイツと呼びながら酷く優しい声音に驚きつつ、幼馴染という関係はよほど大切なものなんだなと羨ましくなるような気持ちになった。
自分にないものは全て眩しく見えてしまうね。これが隣の芝生は青く見えるってやつかな。
「自己紹介はいるか?」
「んー、まあ同じクラスだしね。あ、その前に3人とも、お肉どうぞ。玉ねぎやピーマン、パプリカあたりもいい感じだし食べてね。……って、ちみ姫さんは別の班だっけ。僕ので良ければ食べる?遠慮はいらないよ、林道君にツケとくから」
「なんでだよ!」
僕の言葉に林道君が反応してペシッと軽く頭を叩く。音は鳴ったのに痛くない様に叩くの地味にすごい。
そんな事をやってるからなのか、最初からそうなのかはわからないけど、僕の事をジッと見てくる。あんまり見られるとはずかしいんだけど……。
「それでえっと、自己紹介だよね?僕の事は別に覚えなくていいんだけど、中山奏です。林道君の席の後ろにいる関係でよくお話させてもらってるよ」
僕の言葉に特に反応せず、二人はやっぱりジーっと見てくる。
「ねえ、林道君。僕なんかしたかな?」
「いや、なにかしたわけじゃないとは思うが……なんだよ、言いたいことあんだろ?言わなきゃ中山には伝わんねえよ」
林道君の言葉にハッとなるちみ姫さんがあたふたし始めて、お友達さん?がそんなちみ姫さんの頭を撫でている。なんだこの人達。
撫でられて落ち着いたのか、ようやく口を開く。
「あ、あうぅ……しゅ、しゅーくんのおともだちさん……!」
「わっ、なになに!?近いし危ないよ!」
どいつもこいつもこのクラスの女子の物理的な距離の詰め方がおかしい。いつぞやのお隣さんみたいに身体をグッと近づけてくる。
林道君は『あ〜あ』って苦笑いしてないで止めて?バーベキューコンロ倒れちゃうから。
「し、しちゅ!…かんだ……しつれいしました……!わ、わたしはしゅーくんの幼馴染の知世みちるです……!し、しゅーくんが、いつも大変お世話になっていましゅ!」
「オマエは母親かよ!なんでそんな挨拶してんだ!?」
「林道さんうるさいですよ。中山さん、あたしはそこのみちるさんと親友だと自負している櫻井咲希です。どうぞよしなに」
「じふ?よしなに?……まあよろしくね」
そろそろ僕、人の名前覚えらんない……なんて内心の弱音はさておいて。自己紹介してる時に僕の目から一瞬も逸らさない二人がちょっと怖い。ちみ姫さんはオドオド系女子のはずなのに、その目は何か別の色を宿している気がしてさらに怖さが増す。
多分に林道君とよく話す僕の事を探ろうとしているのだろう。他の人と違って、奥底まで覗かれている感じがして気味の悪い感覚を覚える。
その気味の悪い感覚のせいか何かはわからないけれど、さっきまで動かしていた手は自分の意思に関係なくしばらく止まってしまう。
それを見たのか、思うところがあるのか津田君は僕の肩を叩き、話しかけてきた。
「中山、手が止まってるぞ」
「あ、ごめん。ちょっと疲れちゃって」
「そうか……そろそろ交代だな。多々良!それと秀……はいるか。焼きを交代してくれ」
多々良君だけが顔を顰めたが、約束通りなので輪を外れて津田君と交代してくれる。林道君は言わずもがな。赤羽君と一緒でその辺りは素直に動いてくれる。
僕、良い人らに恵まれてるけど、顔も性格も良くないのによく付き合ってくれてるよ。と内心自嘲しつつ、笑顔で林道君に託し、お肉少量と野菜マシマシでお皿に取り分けて津田君と話した通りその場を離れた。
──……が、ない……?
──そう……?しゅう……しん……
何かを小声で二人で話しているちみ姫さんとその友人の視線は、僕を値踏みしているような訝しんでいるようなで少し怖かったが、無視だ無視。
「どうした、中山」
「……幼馴染ってよくわかんないね」
「なに?幼馴染?」
「ああ、僕じゃないよ。林道君の……ほら、隣に2人いるでしょう?あの2人、僕のことを何故かずっと怪しんでるというか、変な目で見てくるんだよね」
「……なにかしたのか?」
「まさか。あの二人にも林道君にも何もしてないよ、多分」
みんなの輪から外れて端の方。みんなを離れた位置で見れる場所に陣取る僕ら。津田君のところに来たそうにしている女の子達には、僕の気持ち悪い笑みと近寄るなオーラでお引取り願った。ごめんね。
「どうだかな……って何だその顔」
「暇だから百面相してるの」
「暇って。まあいい、中山。せっかく2人きりなんだ。腹割って話さないか?」
「え、ごめん。僕そういうのじゃないんだよ。だからキミの気持ちには答えられ」
「違う!そのスススっと横に避けるのもやめろ!わかって言ってるだろ?」
「バレたか。……でもさ、何を話すの?」
話を避けるのに使うのはあんまり良くないと分かりつつ、津田君の話を聞きたくない僕としてはなるべく避けたかった。
だって。
「中や……奏。お前はどうして、俺達を避ける。何に怯えてる?引っ越す前、何があったら」
「まあ待ってよ。聞きたいことがあるのはわかった。でも今の僕には答えられない。だってその答えを僕は忘れてしまっている。記憶のどこかにはあるんだから、いつかはその欠片に触れられるかもしれない。でも、この1月で話してきて徐々にわかったんだ。僕が疑問に思っていた関係を思い出せない現象について。だからこれだけは言える。僕はキミたちが多分だけど、」
真剣な表情で、僕の心に土足で踏み込んで触れてこようとするそんなキミたちが
「憎くて嫌いなんだよ」
胸の奥で何かが割れてしまい、その破片が刺さったようなズキッとした痛みが走った感覚に疑問を持ったけどそれすらを無視して、目の前の彼に。聞き耳を立てている誰かさん達に。自分のいまできる最高の笑顔で笑いかけた。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
課外活動はあと1〜2話続きますが、一応後何話かで章分けで言うところの0ないし1章が終わります。




