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サイバークオリア ――人工知能はアイを得るか――  作者: 黒河純
第二章 ナノマシンの境界線
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事件解決

「――ということですユルドさん。あなたの息子さんに投与されたナノマシンの詳細はこちらに」

 今回の事件の依頼者――ユルドさんに入手したデータを手渡す。


 事件の翌日。俺と彼は祈崎市内のとある高架下で待ち合わせをし、結果を話していた。


「電脳化できなくなるナノマシン……息子の身体に、害はないんですね?」

「そのはずです。――それと、警察が今回のナノマシンを、政府公認の研究組織に調査するよう依頼したそうです。今すぐには無理でも、いつか息子さんも電脳化できるようになる……と思います」

 ナノマシンの専門家ではないので詳しいことはわからないが、気休めを言うくらいなら罰は当たらないだろう。


「そうですか……それがわかっただけでもありがたいです。ありがとうございました。――ああ、報酬をお渡しいたしますね」

 ユルドさんがDケーブルを取り出し、俺と接続。彼から多額のゴールドが振り込まれる。三分割したとしても、一ヶ月は生活に困らないだろう。


「確かに受け取りました。――余計なお世話かもしれませんが、これからどうするつもりですか?」

「そうですね……息子と一緒に、電脳化率の低い街へ行こうかと思います。非電脳者は、祈崎市では生きにくいですからね。本来は、来年息子も電脳化できる歳になるはずだったのですが……仕方ないです」


 確かに、電脳化していない人間に、この街は過ごしにくいだろう。このままここで暮らすよりも、どこか別の場所に移り住んだ方がいいのかもしれない。

 どちらにしろ、俺にできることはここまでだ。引き留める権利なんてない。


「そうですか……お気を付けて」


「はい。悠々自適に暮らします。ありがとうございました、便利屋さん」




 それから二日後。

 依頼主であったユルドさんは、疲れたような、でもどこか吹っ切れたような顔で、祈崎市から姿を消したらしい。


 目撃者の話では、小さな手を大切そうに握りしめていたとのことだ。

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