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願わぬときに
この作品は、日々、並々に生きる人々の、日々、並々ならぬ出来事や思い出を綴った超短編小説集です。
「くそっ」と、汚い言葉をこぼし自暴自棄になる。家に向かう帰り道。繁華街のネオンと酔っ払いの楽しそうな声。俺だけが世界の終わりみたいな顔。
「私、妊娠したの」。遊びのつもりで付き合った子に突然そう告げられ頭が真っ白になった。たまにハメを外したくらいで不幸すぎる。本当に俺の子か? 38歳の俺が19歳の子と結婚? 考えても意味が分からなくて結局ひとりで酒に溺れた。そんな夜だった。
ドカン!
いきなり目が覚めるような大声が酔っ払った頭に直撃する。隣を歩いていた女の子が急に歌い出したのだ。泣きそうな声で幸せは願わぬときにやってくると歌った。やけに目に染みる。もしかしたら俺にも幸せがやって来たのかもしれない。自分を不幸だと思うこと自体が不幸だ。
家族になろう。気づけばそう決めていた。
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