2/7
俺の女神
この作品は、日々、並々に生きる人々の、日々、並々ならぬ出来事や思い出を綴った超短編小説集です。
60年前、女神が現れた。
俺は7人兄弟の次男として生まれた。平凡に暮らしていたが、15歳の時、両親と長男、祖父が病で死んで、突然一家の長になった。一年に4人の死人が出た俺の家は小さな村で金食い虫、疫病神と言われ村八分にされた。毎日必死に働いても生活費は足りなくて、吹雪の中に街へ出て、祖父が残した骨董品を一軒一軒売り歩いたこともあった。だけどそんな中、俺は女神に出会ったのだ。
女神だけが俺を支えてくれた。大人になっても俺の人生はあまり恵まれていなかったが、生きるのが辛いと思ったことは一度もなかった。それはいつもそばに女神がいてくれたからだ。ケンカもたくさんしたし、今は俺のことを分からなくなるほど年をとったけれど、俺はお前に感謝している。
だけどこの話は墓場まで持って行くつもりだ。なぜなら、妻を女神だと思っているなんて、小っ恥ずかしくて口が裂けても言えないから。




