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太平洋の夢

【完結】太平洋の夢 第一巻 樺太の種

作者:水野 純也
最終エピソード掲載日:2026/09/27
【全19話/完結済】
一九三三年、国際連盟。四十二対一の絶望的孤立の中、一人の書記官が書いた「紙」が、破滅の歴史を書き換える。

【あらすじ】
一九三三年三月二十七日、日本は国際連盟からの脱退を宣言し、後の破滅へと続く道を歩み始めた――はずだった。
だが、全権・松岡洋右の鞄の中に、もし「別の提案」があったとしたら。

物語の真の分岐点は五十二年前、一八八一年のハワイ国王カラカウア来日まで遡る。伊藤博文と結ばれた史実にはない「日布親善協定」が、長い時を経て極東の島国に一つの選択肢を残していた。

時は昭和初期。世界恐慌の嵐が吹き荒れ、満洲事変によって日本の国際的孤立が決定的となる中、外務省の若き書記官・黒瀬誠一郎は、ジュネーブと上海で冷徹に世界を見つめていた。
数カ国語を同時に処理する異能の頭脳と、薬物で精神の均衡を保つ危うさを併せ持つ彼は、軍部が「銃」で次々と既成事実を作り、世論がそれに狂喜する様に絶望に近い危機感を抱いていた。このままでは、孤立した国家は間違いなく戦争へと向かう。

銃の速さに、紙と外交で勝つにはどうすればいいのか。
黒瀬は、迫害からの逃れ場所を探すユダヤ人女性ミリアムと共に、起死回生の策を練り上げる。それは、ハワイの日米共同統治、樺太全島のユダヤ民族への移譲、南洋の国際監視受け入れ、そしてアイヌの自治区設定という、世界の帝国主義の虚を突く「四点提案」だった。

リットン報告書への勧告が可決され、日本政府の脱退詔書渙発が数日後に迫る一九三三年のジュネーブ。
黒瀬は、十字架の殉教者となるはずだった全権大使・松岡洋右と、次席・佐藤尚武の懐に飛び込み、ひとつの「賭け」を持ちかける。東京の政府や暗躍する陸軍の監視網を欺き、連盟の演壇という世界最大の舞台で、本国未承認の提案をぶち上げるという極秘計画だ。

「銃の代わりに紙しか持たない外交官が軍と同じ土俵に立てる手段を、私は他に知りません」

緻密な史実考証の上に構築された、重厚なポリティカル・サスペンス。
これは、一枚の「紙」と「言葉」で戦争という運命に抗った者たちの、選ばれなかった歴史の物語である。

「太平洋の夢」のNoteを始めました。
小説の裏側——史実調査の記録、執筆の経緯、歴史の「if」への問いを書いていきます。
https://note.com/hal_miz
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