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■第82話:不気味な音色・小豆洗い! ……えっ、人を食う前に「小豆の胴割れ」と「交差汚染」の説教ですか?

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

それでは、本編をお楽しみください!


【場所:天界・管理室】

「……ふぅ。カモミールティーのおかげで、私の自律神経もすっかり整ったぞ」


神ドラマスは、優雅にハーブティーを傾けながら、非常に穏やかな表情でモニターを見つめていた。


画面の中では、王都の路地裏でお岩さんを美魔女に変えたヒナタたちが、城へ帰る途中で王城の裏手にある「古い井戸」のそばを通りかかっていた。


「さあ、いよいよあの妖怪の出番か。水辺で『ショキッ、ショキッ』と不気味な音を立てる妖怪、小豆洗いだ」


ドラマスは、少し身を乗り出した。


「姿を見せずに音だけで恐怖を煽り、『小豆を洗おうか、それとも人間を捕まえて食おうか』という恐ろしい歌で精神を削る陰湿な妖怪。ヒナタよ、この見えない恐怖と猟奇的な歌に、どう立ち向かう?」


【場所:人間界・王城の裏手の古い井戸】

深夜の静寂の中、井戸の方から奇妙な音が響いてきた。

……ショキッ、ショキッ、ショキッ。


「ひぃっ! な、なんの音ですかな!?」


セバスチャンがビクッと肩を揺らす。


『小豆とごうか……人取って食おうか……ショキ、ショキ……』


暗闇の井戸の陰で、ザルに小豆を入れて、鋭い爪を立ててガシガシと激しく洗っている小柄な坊主頭の妖怪――小豆洗いの姿があった。


「で、出たァァッ!! 人を食う気満々の妖怪ですぞ!!」


セバスチャンが震え上がる。


『ヒヒヒ……。俺様は小豆洗い。この音を聞いた者は、恐怖で身動きが取れなくなり、やがて井戸に引きずり込まれて……』


小豆洗いが不気味な笑い声を上げた、その瞬間。


「ちょっと待って!!!」


ヒナタの、深夜の井戸端に響き渡る「和菓子職人の親方ガチギレ」トーンが炸裂した。


『……えっ?』


小豆洗いの手が、ザルの上でピタリと止まる。

ヒナタは、四次元リュックをドンッと置き、鬼の形相で小豆洗いの手元ザルをビシッと指差した。


「あなた! そんな鋭い爪を立ててガシガシ力任せに洗ったら、小豆の皮が破れて『胴割れ(どうわれ)』を起こすじゃないですか!! 煮崩れして旨味が全部お湯に逃げちゃいますよ!! 小豆の扱いが雑すぎます!!」

『ど、胴割れ……? いや、俺様は妖怪として恐ろしい音を立てるために……』

「大体、その歌は何ですか!!」


ヒナタは、小豆洗いの鼻先まで詰め寄った。


「『小豆とごうか、人取って食おうか』!? 小豆(植物性の食材)と人間(生肉)を同じ調理場で、しかも同時進行で扱おうとするなんて、言語道断です! カンピロバクターやサルモネラ菌が小豆に移る『交差汚染(二次感染)』のリスクを全く理解していない!! 食中毒を起こす気ですか!!」

『こ、交差汚染……!? 食中毒……!?』


小豆洗いは、ヒナタのあまりにも論理的(?)かつ衛生観念に特化した怒声に、完全に圧倒されて尻餅をついた。


「そもそも、冷たい水で洗うだけじゃ美味しいアンコは作れません! 今日は僕が、究極の製餡せいあんメソッドを叩き込みます!!」


ヒナタは、四次元リュックから、「熱伝導率の極めて高い純銅製のボウルと鍋」「最高級の白ザラメ糖」、そして「不純物のない超純水」を取り出した。


「ヴァレリアさん、火加減の調節をお願いします! ゴズさん、小豆の選別を手伝って!」

「ふむ。剣ではなく火加減の微調整……魔力コントロールのいい修行になるな」

「【究極の渋切り(アク抜き)&ふっくら炊き上げ】!!」


ヒナタは、小豆洗いのザルを取り上げると、まず欠けた豆や虫食い豆を瞬時に弾き出し、純水で「優しく、撫でるように」小豆を洗った。


『な、なんて優しい手つきだ……。俺のガシガシ洗いとは、豆への愛情が桁違いだ……!』


小豆洗いが、その職人技に見惚れる。


「いいですか? 小豆は最初から砂糖を入れたら絶対に柔らかくなりません! まずはたっぷりのお湯で煮立てて、茹で汁を捨てる! これが『渋切り』です! アクとエグ味を抜く最重要工程ですよ!」


ヒナタの指導の下、銅鍋の中で小豆がふっくらと、しかし皮が破れることなく「踊るように」煮込まれていく。


「そして、豆が指でスッと潰れるくらい柔らかくなってから、白ザラメを2〜3回に分けて加える! これで、上品な甘さの極上つぶあんの完成です!!」


数時間後(※魔法で時間短縮しています)。

井戸端には、ツヤツヤと宝石のように輝き、湯気と共に圧倒的な小豆の芳醇な香りを漂わせる「極上のつぶあん」が完成していた。


ヒナタは、焼きたての最中もなかの皮にそのつぶあんをたっぷりと挟み、小豆洗いに差し出した。


『……こ、これを俺に?』


小豆洗いは、恐る恐る最中を受け取り、一口かじった。

サクッ……。とろぉ……。


『…………ぁぁぁぁぁっ!!!』


小豆洗いの目から、滝のような涙が溢れ出した。


『な、なんだこの、雑味が一切ない澄み切った甘さは……! 小豆一粒一粒の形がしっかり残っているのに、口の中でホロリとほどけていく……! 俺が今まで洗っていた小豆は、ただの石ころだったのか……!!』

「道具と食材を論理的に正しく扱えば、必ず美味しく応えてくれます! 人を食うなんて非衛生的なことはやめて、その情熱を『和菓子作り』に注いでみませんか?」


ヒナタが、満面の笑みで親指を立てる。


『ヒナタ親方ァッ!! 俺、今日から人食い妖怪やめます! 王都で一番の和菓子屋「あずき亭」を開いて、みんなを笑顔にするアンコを炊き続けます!!』


小豆洗いは、完全に妖怪から「純粋な和菓子職人の卵」へと生まれ変わり、銅鍋を大切そうに抱きしめながら、涙と鼻水で顔をグシャグシャにしてヒナタに深く頭を下げたのだった。


「……ゆ、勇者殿。陰湿な妖怪が……『交差汚染を恐れる、超一流の和菓子職人』になってしまいましたぞ……」


セバスチャンは、淹れたての緑茶をすすりながら、極上の最中を頬張って至福の表情を浮かべていた。


【場所:天界・管理室】

『…………』


神ドラマスは、空になったハーブティーのカップを静かに置いた。


『小豆洗いが……「胴割れ」と「交差汚染」のガチ説教を受け、銅鍋で極上のアンコを炊かされた……』

『「小豆(植物)と人(生肉)を同じ場で扱うな」って……妖怪の歌の歌詞にまで食品衛生法を適用するのか……』


ドラマスは、深くため息をつくと、猛烈に美味しい和菓子が食べたくなり、天界の御用達デパートへ「最高級どら焼き」を買いに走る準備を始めるのだった。

(第82話・完)


本日もお付き合いいただき、ありがとうございました!


ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!


皆様からの応援トラフィックが、毎日の更新の最大のエネルギーになっています!


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