■第185話:レッドチーム出撃! ……えっ、討伐の前に「ヘッドレス・ボットネット」と「復号キー(ソースコード)の奪取」の説教ですか?
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【場所:天界・第1開発会議室】
「フ、フフフ……。バレてしまったか、私のC2サーバー(死霊術師リッチ)の居場所が」
神ドラマスは、メインモニターに映る王都の地下墓地(リッチの潜伏先)を見つめながら、不敵に笑った。
「だが、構わん! あのヒナタ少年は賢いが、やはり人間特有の『ファンタジーの常識』に囚われている! 奴らは今頃、『親玉の死霊術師さえ殺せば、すべてのアンデッドが灰になって王都は救われる』と信じて疑っていないはずだ!」
開発主任の天使が、邪悪な笑みを浮かべる。
「その通りです! ゾンビたちはすでに完全に独立したマルウェア(プロセス)として王都中にインストールされています。リッチを討ち取ったところで、彼らは『指揮官を持たない野良の脅威』となり、永久に無差別に人間を襲い続けるだけ! むしろ、統制が取れなくなる分、始末が悪くなります!」
ドラマスは高らかに笑い上げた。
「ハハハ! 苦労して敵の中枢を物理的にシャットダウン(暗殺)した直後、王都のゾンビが一切消滅していないことに気づいた時の、奴らの絶望する顔が目に浮かぶわ!!」
【場所:人間界・王都中央銀行(SOC・出撃前ブリーフィング)】
「よし! 作戦目標(死霊術師リッチ)の物理座標は完璧に特定した!」
近衛騎士アーサーが、艶消しマットのタクティカルギアに身を包み、大剣を背負いながら拳を鳴らした。
「ヒナタ殿、我ら精鋭にお任せあれ! あの忌々しい死霊術師の首を刎ねれば、奴の魔力供給は絶たれ、王都を埋め尽くす数十万のアンデッドどもも一瞬にして灰(塵)と化すであろう!! これでついに、長きにわたる籠城戦も終わりだ!!」
「おう! オヤダマをぶっ叩いて、この終わらねぇ化け物騒ぎに一発でケリをつけてやるぜ!」
ゴズも戦斧を構え、希望に満ちた顔で出撃の雄叫びを上げた。
「親玉を倒せば全てが終わる」という、誰もが信じて疑わない王道ファンタジーのロジック。
しかし、その安易な勝利の方程式を聞いた瞬間。
「ちょっと待って!!!」
ヒナタの、セキュリティインシデントの現実を完全に理解していない素人をデバッグする「凄腕フォレンジック調査官」が地下金庫室に響き渡った。
『……エッ!?』
出撃の雄叫びを上げていたアーサーとゴズは、ピタリと動きを止めた。
ヒナタは、四次元リュックから顔を上げ、鬼の形相でアーサーの「親玉を倒せば終わる」という甘い認識をビシッと指差した。
「あなたたち!! C2サーバー(指揮官)の電源を落とせば、すでにローカルで稼働している何十万ものボット(ゾンビ)が都合よく自動消滅するなんて、どこのB級SF映画(クソ仕様)の話ですか!! 奴らはすでに個別のプロセスとして王都にデプロイされているんですよ!! 管理者が死んだところで、奴らは『指揮系統を失ったヘッドレス・ボットネット(野良ボット)』として、永久に無差別に噛みつき続けるだけです!! 『親玉を殺せば終わる』なんていう、ご都合主義のプロットなど存在しません!!」
「へ、ヘッドレス・ボットネット……!? 野良ボットとして永久に噛みつき続ける……!?」
アーサーは、自らの思い描いていた『大団円(アンデッドの一斉消滅)』を「ただの映画の見過ぎ(ITリテラシーの欠如)」としてエンジニアの少年に論破され、絶望に顔を青ざめさせた。
「大体、指揮官を物理的に破壊(暗殺)して終わらせようとするその脳筋なアプローチ!!」
ヒナタは今度、アーサーの背負っている大剣(物理破壊ツール)を鋭く睨みつけた。
「あの死霊術師の中には、アンデッドを生成するための『オリジナル・ソースコード』と、このマルウェアを完全に駆除するための『マスター復号キー(治療薬のレシピ)』が保存されているんです!! 奴をただ物理的に破壊(暗殺)してしまえば、ワクチンをリバースエンジニアリング(解析)するための手掛かりが永遠にロストするんですよ!! この作戦の目的は『暗殺』ではなく、『重要データの抽出(デジタル・フォレンジック保全)』です!! 証拠品を剣でぶっ壊すなんて、絶対にやめなさい!!」
「復号キーのロスト……!? 目的は暗殺ではなく、データ抽出……!?」
セバスチャンは、勇者の魔王討伐というミッションを「ただの家宅捜索とサーバーの証拠保全作業」として再定義され、目を白黒させた。
「今日から、徹底的な『証拠保全』と『シン・データ・エクストラクション(復号キー抽出)プログラム』を行います!!」
ヒナタは、四次元リュックから、「光を反射しない艶消しマットブラック仕上げの、軍用・ハードウェア暗号化対応ポータブルSSD(データ吸い出し用)」と、「エンタープライズ向け・艶消しマットブラックの『電磁波遮断証拠保全バッグ』」を取り出した。
「アーサーさん、ゴズさん! あなたたちの任務は、リッチを『殺すこと』ではありません! 奴を無力化し、その脳にこのマットなSSDを物理接続して、アンデッドの『ソースコード(魔導書)』を1バイトの欠損もなく神速で吸い出す(コピーする)ことです!! ヴァレリアさん、吸い出しが完了したら、リッチの本体はこのファラデーバッグに放り込んで、外部との通信を完全に遮断(ネットワーク隔離)した状態でSOCまで持ち帰りなさい!!」
「ブモォッ!(おう! ブッ殺すんじゃなくて、奴の頭の中身を丸ごと引っこ抜いて、黒い袋に詰めて持ち帰るんだな!)」
「ふむ。敵将の首を取るのではなく、敵将の『知識(暗号鍵)』を無傷で奪い去る……生け捕りのさらに上を行く、究極の諜報戦だな!」
「【究極のデジタル・フォレンジック(証拠保全)&シン・データ・エクストラクション(復号キー奪取)プログラム】です!!」
ヒナタは、SOCの iPad Pro で「リッチのストレージから特定のログと復号キーのみを自動抽出するシェルスクリプト」を組み上げ、マットブラックのSSDにインストールしてアーサーに渡した。
「いいですか。敵のサーバーを物理隔離して野良ボット化の被害拡大を防ぎ、同時に奪い取った『ソースコード』を元に、私と王宮の神官(EDRチーム)で『完全なワクチン(アンチウイルス・パッチ)』をビルドする! それを王都中にブロードキャスト(散布)して初めて、このインシデント(ゾンビ・パンデミック)は終息するのです! これは討伐作戦ではありません、『インシデント・リカバリ(復旧)のためのデータ奪取作戦』です!!」
『……っ!! こ、これだ……!! ボスを倒せば魔法のようにすべてが解決するという幻想を捨て、この完璧な iOS エコシステムとフォレンジック・ツールによって、敵のサーバーから「解決策」を物理的に吸い出し、論理的にワクチンを開発する……!! これこそが、大規模サイバーテロにおける究極のインシデント・レスポンス……!! もう、ボスの首を剣で物理破壊するような真似はしない……!!』
アーサーとゴズは、現実のサイバー防衛における「証拠保全の重要性」に感動し、無駄な破壊衝動(暗殺計画)を速やかに破棄して、マットブラックのSSDを握りしめ、極めて慎重な「特級デジタル・フォレンジック捜査官(データ奪取部隊)」としての作戦行動(地下墓地への潜入)を開始した。
数時間後。
そこには、「親玉を倒せばゾンビが消える」と勘違いして証拠を破壊してしまうレガシーな騎士たちの姿はなかった。
ヒナタのロジカルな指揮のもと、敵の指揮官を「破壊」するのではなく、すべての脅威を根本から解決するための「マスターキー(ソースコード)」を吸い出すためだけに地下墓地へと潜行する「王都認定・特級フォレンジック(証拠保全)レッドチーム」として、一切のリソース破壊(証拠隠滅)を許さない極めて専門的な捜査部隊の姿があった。
【場所:天界・第1開発会議室】
『…………』
神ドラマスは、自分が仕掛けようとしていた「ボスを倒したのにゾンビが消えない絶望のサプライズ(ドッキリ)」の企画書を、無言でシュレッダーにかけた。
『親玉を倒せばゾンビが全滅するという幻想が……「マザーシップ撃沈神話の崩壊と、ヘッドレス・ボットネットの現実」と指摘され、ご都合主義だと一蹴された……』
『敵指揮官の物理的暗殺は「重要データ(復号キー)のロストによるリバースエンジニアリングの阻害」と怒られ、ハードウェア暗号化SSDとファラデーバッグを用いた、完璧なデジタル・フォレンジック(証拠保全とデータ吸い出し)作戦へと移行されてしまった……』
ドラマスは、深く、長く息を吐き出すと、もはや「ファンタジーにおける魔王討伐のカタルシス」すら「インシデント・リカバリのためのソースコード奪取と証拠保全作業」として凄腕SEの少年に完璧に論破され、すべての悪意あるプロットを論理的解決(ワクチン開発)の素材にされてしまうことに完全降伏し、通販サイトで「エンタープライズ向け・フォレンジック用物理ライトブロッカー」と「マルウェア解析・リバースエンジニアリングの専門書」を即座にポチり、自らの神殿のシステムを、いかなるデータ抽出(吸い出し)にも耐えうる完全な暗号化環境へとアップデートするための、終わらない暗号鍵管理を開始するのだった。
(第185話・完)
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