■第178話:死霊術師の宣戦布告! ……えっ、絶望の前に「C2サーバーの運用」と「APT攻撃(持続的標的型攻撃)」の説教ですか?
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
それでは、本編をお楽しみください!
【場所:天界・第1開発会議室】
「フフフ……。ヒナタめ、VPNやEDRを駆使して拠点を繋ぎ、見事に『防御陣形』を整えたな。だが、サバイバル・ホラーの真の絶望は、安全を確保した『その直後』にやってくるのだ!」
神ドラマスは、メインモニターを見下ろしながら、開発主任の天使に合図を送った。
「デプロイします。……対象(ヒナタ少年)に絶望を与えるために特別にビルドされた、アンデッド軍団の総指揮官。特級の悪意、『死霊術師リッチ』!!」
ドラマスは、邪悪な笑みを浮かべた。
「ただのウイルス(ボット)の群れなら、あの少年のロジックでいずれ対処されてしまうかもしれない。だが、知性を持った指揮官が軍団を『運用』し始めた時、それは単なるパンデミックから、高度な戦略を伴う『戦争』へと変わるのだ!!」
【場所:人間界・王都中央銀行(VPN接続中)】
「……よし。王宮の神官たち(EDRアナリスト)との安全な通信セッションも確立しました。これで王都内に、銀行、天文台、王宮を結ぶ『強固な防御クラスター』が構築されました」
ヒナタは、艶消しマットの iPad Pro を操作し、広域ネットワークのトポロジー(構成図)を確認しながら頷いた。
「おおお! 勇者殿の卓越した指揮のおかげで、ついに王都の反撃体制が整いましたな!」
セバスチャンが、Apple Watch でバイタルを管理しながら嬉し泣きしている。
しかし、その時だった。
『……ザザッ……ピーーーーッ!!』
突如として、VPNで構築されたセキュアなネットワークの「外部」――すなわち、王都中に設置されている公共の魔力拡声器や、広場の巨大な水晶時計など、あらゆるパブリックな通信デバイスから、耳をつんざくようなノイズが鳴り響いた。
「な、なんだ!? 外部からの強烈なジャミングか!?」
近衛騎士アーサーが大剣を構える。
直後、王都のすべてのパブリック・モニター(水晶)に、漆黒のローブを深く被り、青白い炎を宿した髑髏の顔を持つ化け物――『死霊術師リッチ』の姿が強制的にブロードキャスト(一斉送信)された。
『……ククク。聞こえるか、愚かなる生者どもよ。そして、小賢しい防御網を張って籠城しているネズミどもよ』
リッチの嗄れた声が、王都中に響き渡る。
『我が名はリッチ。この偉大なるアンデッド軍団(数万の死者)を束ねる指揮官であり、この王都を死の都へと変える死霊術師である。貴様らがどれほど足掻こうと無駄だ。我が魔力がある限り、死者どもは無限に立ち上がり、貴様らの拠点に波状攻撃を仕掛け続ける! 絶望に震え、我ら死者の軍勢に降伏するがいい!!』
「ひぃぃぃッ!! し、死霊術師!! あの無数の化け物どもを統率する、悪の指揮官ですぞ!!」
セバスチャンが震え上がった。
画面は切り替わり、王宮の最奥部にいる「国王」からのVPN通信(暗号化された極秘回線)が、ヒナタの iPad Pro に割り込んできた。
『……おお、勇者ヒナタよ。敵の総指揮官がついに姿を現した。奴がアンデッドを操っている限り、この王都に未来はない。我が王国の全権限をそなたに委ねる! どうか、あの死霊術師を討ち果たし、王国を救ってくれ!!』
「国王陛下からの直接の勅命……! ヒナタ殿、我々も命を懸けてあの指揮官の首を――」
アーサーが悲壮な覚悟で立ち上がった、その瞬間。
「ちょっと待って!!!」
ヒナタの、いかにもな悪のボスの宣戦布告を完全にデバッグする「凄腕インシデント・レスポンス・マネージャー(ガチギレ・トーン)」が、銀行の地下金庫室に響き渡った。
『……エッ?』
アーサーとセバスチャン、そしてモニター越しの国王までもがピタリと黙り込んだ。
ヒナタは、四次元リュックから顔を上げ、iPad Pro に録画されたリッチの「宣戦布告の映像」をビシッと指差した。
「あなたたち!! パブリックな設備を乗っ取って『俺がボスだ』と自己顕示欲を満たすだけのブロードキャスト(動画配信)をするなんて、典型的な『ハクティビスト(自己顕示型の愉快犯)』か、ただの『ランサムウェアの脅迫画面』じゃないですか!! しかも、あいつがアンデッドを『統率』しているということは、このパンデミックはもはや純粋なマルウェアではなく、『C2(コマンド&コントロール)サーバー』を介して遠隔操作される『巨大なボットネット(APT攻撃:持続的標的型攻撃)』だということです!!」
「し、C2サーバー……!? ボットネットによるAPT攻撃……!?」
アーサーは、邪悪な死霊術師の軍団を「ただの遠隔操作される迷惑なボットネット」としてエンジニアのロジックで一刀両断され、ポカンと口を開けた。
「つまり、敵は『魔法』で死者を動かしているのではなく、C2サーバーから『ビーコン(命令の定期通信)』を送ってゾンビ(ボット)を操縦しているんです!! 指揮官(サーバー管理者)が存在するということは、必ず『通信の痕跡』が残る!! すぐに倒しに行くなんて物理的に不可能です!! これから途方もない時間をかけて、奴の隠しているC2インフラを一つずつ特定し、論理的に遮断していく『果てしなきサイバーキルチェーン(脅威ハンティング)』を開始します!!」
ヒナタは、四次元リュックから、「光を反射しない艶消しマットブラック仕上げの、軍用・広域スペクトラム・アナライザ(通信傍受・解析用)」と、「エンタープライズ向け・脅威インテリジェンス・プラットフォーム(TIP)搭載の、マットブラック・マルチモニター・ステーション」を取り出した。
「ゴズさん! 銀行の屋上に設置した指向性アンテナに、このアナライザをバイパス接続して、王都中を飛び交う『微弱な死霊の魔力(C2サーバーからのビーコン通信)』をすべてキャッチして! ヴァレリアさん、その膨大なパケットデータを、私のTIP(脅威分析基盤)に神速で流し込んで!! 国王陛下からのミッション(特権IDの付与)は確かに受諾しました! これより、数ヶ月、いや数年に及ぶかもしれない『終わらないインフラ防衛戦』の幕開けです!!」
「ブモォッ!(おう! 姿を隠して遠隔操作で威張ってるだけの腰抜け管理者の通信(糸)を、全部見つけ出してやるぜ!)」
「ふむ。この漆黒の分析盤で、見えざる敵の『指揮系統』を時間をかけて丸裸にする……果てしなき諜報戦だな」
「【究極のサイバー・キルチェーン分析&シン・脅威ハンティング(長期防衛)プログラム】の開始です!!」
ヒナタの構築したマットブラックのマルチモニターに、王都中をうごめく数万のゾンビたちの「通信の糸」が、おびただしい数のデータログとして滝のように流れ始めた。
「敵の総指揮官(C2サーバー)は、何重にもプロキシ(踏み台)を噛ませて自分のIPアドレス(現在地)を偽装しているはずです! 今日明日の突撃で倒せる相手ではありません!! 奴の送信するコマンドの周期、トラフィックの偏り、そしてマルウェアのアップデート頻度……それらすべてのログを長期間にわたって収集・分析し、外堀から完全にインフラを物理切断してやります!!」
ヒナタの瞳には、一切の焦りも絶望もなかった。
あるのは、長期にわたるAPT攻撃(持続的標的型攻撃)を相手に一歩も引かず、冷徹にログを解析し続ける「天才インシデント・ハンドラー」としての、極めてロジカルで底知れぬ執念だけだった。
数週間後。
そこには、死霊術師の恐怖の宣戦布告にパニックになり、無謀な特攻を仕掛けて犬死にする騎士の姿はなかった。
艶消しマットのモニター群を睨みつけながら、リッチが発する無数のコマンド(魔力)を一つ残らず傍受・解析し、敵のインフラ(指揮系統)をジワジワと論理的に追い詰めていく「王室認定・最高情報セキュリティ責任者(CISO)」としてのヒナタと、彼を完璧にサポートする仲間たちの、泥臭くもロジカルな「終わらない日常(サイバー防衛戦)」の姿があった。
【場所:天界・第1開発会議室】
『…………』
神ドラマスは、メインモニターの前で、自分の仕掛けた「恐怖の宣戦布告イベント」が、ただの「敵にC2サーバーの存在とトラフィックログの解析材料を与えただけ(自爆行為)」であったことに気づき、頭を抱えていた。
『死霊術師の宣戦布告が……「自己顕示欲を満たすハクティビストの動画配信」と指摘され、ボットネットの管理者(C2サーバー)だと論破された……』
『直接対決による勇者の特攻は「物理的に不可能なリソースの無駄」と一蹴され、ログ解析による果てしなき脅威ハンティング(サイバーキルチェーンの破壊)を開始された……』
ドラマスは、深く、長く息を吐き出すと、もはや「絶望的な悪のボスの登場」すら「APT攻撃の開始とC2インフラの露出」として凄腕SEの少年によって完璧に論理的分析の対象とされ、数話では終わらない果てしなき長期戦へと持ち込まれたことに完全降伏し、通販サイトで「艶消しマットブラックの特大マルチモニター・アーム」と「APT攻撃対策・脅威インテリジェンスの専門書」を即座にポチり、自らの神殿のプロット構成を、ヒナタとの「数年単位での終わらないサイバー攻防戦」に耐えうる極めて綿密なインフラ設計へと作り直すための、真のデスマーチ(終わらない徹夜)を開始するのだった。
(第178話・完)
本日もお付き合いいただき、ありがとうございました!
ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!
皆様からの応援が、毎日の更新の最大のエネルギーになっています!




