■第154話:波間の怨念・平家蟹! ……えっ、挟む前に「人為選択(進化論)」と「レガシーシステムの完全移行」の説教ですか?
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それでは、本編をお楽しみください!
【場所:天界・管理室】
「……カチャッ。シニア神獣たちの甲状腺ホルモン値もオールグリーン。健康管理の徹底は、長期運用の絶対条件だな」
神ドラマスは、猫又のエピソードから学んだメディカルケアを神殿の全システムに適用し、一切の不安要素を排除した完璧な表情でモニターを見下ろしていた。
画面の中では、ヒナタたちが歴史の舞台となった海峡(壇ノ浦)の、波打つ夜の浜辺を歩いているところだった。
「ほう! 『え段』の第6弾、『へ』の刺客だな! その名は源平合戦の生き証人、平家蟹!」
ドラマスは、艶消しマットのモニターを指差してニヤリと笑った。
「海に沈んだ平家の武将たちの怨念が乗り移り、甲羅に『怒れる人間の顔』を浮かび上がらせた恐怖の甲殻類! 800年もの間、波の底で恨みを募らせ、近づく者をハサミで海底へと引きずり込む集団ホラー! この時代を超えた重すぎる怨念に、ヒナタのロジックはどう立ち向かうのだ!?」
【場所:人間界・夜の荒涼たる海辺】
「う〜ん、この浜辺は潮の香りが強いですねぇ。岩場は滑るので足元に気をつけてください」
ヒナタは、四次元リュックを背負い、夜の海面をLEDランタンで照らしていた。
カチッ……カチカチカチカチカチカチッ!!
「ゆ、勇者殿……! 波打ち際から、凄まじい数のカニの群れが……! し、しかも、その甲羅にはどれも『恐ろしい武将の顔』が浮かび上がっておりますぞ……!!」
宰相セバスチャンが、震える指で足元を埋め尽くすカニの軍勢を指差した。
『……憎ヤ……源氏憎ヤァァ……!』
数え切れないほどの平家蟹たちが、武将の顔をした甲羅を怒りに歪ませ(そのように見え)、鋭いハサミを天に掲げてカチカチと威嚇音を鳴らしている。
「ひぃぃぃッ!! で、出たァァッ!! 平家蟹の軍勢ですぞォォッ!! あのハサミで挟まれて、海の底へ引きずり込まれます!!」
セバスチャンが悲鳴を上げて後ずさる。
『我ラ平家ノ怨念! 800年ノ恨ミ、今ココニ晴ラサン! 貴様ラモ道連レニシテクレルワァァッ!!』
平家蟹の大群が、凄まじい執念と共にヒナタたちの足首を一斉に挟みちぎろうと殺到した、その瞬間。
「ちょっと待って!!!」
ヒナタの、800年の歴史的怨念を「生物学の講義室」へと強制連行する「進化生物学者&ITコンサルタント(ガチギレ・トーン)」が響き渡った。
『……エッ?』
平家蟹たちは、ハサミを振り上げたポーズのまま、波打ち際でピタリと固まった。
ヒナタは、四次元リュックをドンッと置き、鬼の形相で平家蟹の「武将の顔の甲羅」をビシッと指差した。
「あなたたち!! その甲羅の顔は武将の怨念でもなんでもなく、ただの『パレイドリア現象(ランダムな模様に顔を見出してしまう心理効果)』です!! 昔の漁師が『人間の顔に似たカニ(あなたたちの祖先)』を気味悪がって海に投げ返した結果、顔に似た遺伝子を持つ個体だけが生き残って繁殖した『人為選択(Artificial Selection)』の極めて論理的な結果(生存戦略)じゃないですか!! オカルトなんかじゃなく、見事な『遺伝的アルゴリズム』の勝利ですよ!!」
『じ、人為選択……!? 遺伝的アルゴリズムの勝利……!?』
平家蟹たちは、自慢の呪われたビジュアルを「ただの人類を利用した見事なダーウィン的進化論」として生物学的に称賛(?)され、ハサミをカタカタと震わせた。
「大体、その『800年前の恨みを晴らす』という行動!!」
ヒナタは今度、時代遅れの怨念を振りかざすカニの群れを指差した。
「800年も前にとっくにサポートが終了している『源平合戦』という古いOSを、未だに自分の中で稼働させ続けるなんて、リソース(カロリー)の極端な無駄遣いですよ!! そんな化石みたいな過去のデータに執着して、目の前の人間を無差別に挟もうとするなんて、内部ロジック(モチベーション)が完全に破綻しています!! ご都合主義な怨念設定に縛られず、さっさと現代の環境へとシステム(思考)を移行しなさい!!」
『レ、レガシーシステム……!? サポート終了済みのOS……!? いや、我らは滅びた平家の……』
平家蟹たちは、自らのアイデンティティたる深い恨みを「ただの古いサーバーにしがみつく非効率なエラー」としてITコンサルのロジックで全否定され、泡を吹いてへたり込んだ。
「今日から、徹底的な『レガシーOS(怨念)からの完全移行』と『シン・海洋生物学(最適化された生存環境)プログラム』を行います!!」
ヒナタは、四次元リュックから、「艶消しマットブラック仕上げの、完全水質管理・スマートオーバーフロー水槽」「殻の構造的完全性を高める、高カルシウム・プレミアム人工飼料」、そして「生物学の名著『進化の構造(マット装丁版)』」を取り出した。
「ゴズさん、カニさんたちが干からびないように海水を汲んできて! ヴァレリアさん、このマットブラックのスマート水槽を組み立てて、塩分濃度とpHをミリ単位の精度で神速チューニングして!!」
「ブモォッ!(おう! 昔の恨みで腹は膨れねぇからな! 新しい家だぞ!)」
「ふむ。この繊細な水流ポンプとフィルターを、水質に一切の濁りも生じさせぬよう完璧に接続する……城の堀の浄化と同じ理屈だな」
「【究極のレガシー脱却&シン・スマートアクアリウム(環境最適化)プログラム】です!!」
ヒナタたちの手により、浜辺にはスタイリッシュな「艶消しマットの巨大スマート水槽」が設置され、平家蟹たちはその完璧に管理された清浄な海水の中へと優しく移された。
『おおっ……!? な、なんだこれは……! 自動制御された水温と完璧な水質のおかげで、冷たい波の底で感じていた「過去の恨み(ストレス)」が、信じられないほどスゥーッと消え去っていく……! しかも、この高カルシウム飼料を食べると、俺たちの甲羅がみるみる強固になっていくぞ……!! 過去に執着するより、今の飯の方が100倍美味い……!!』
「はい! 古い恨み(レガシーシステム)から脱却できたら、その見事な進化の証(顔の模様)を、これからは人間の学びに活かしなさい!」
ヒナタは、水槽の前に生物学の解説パネルを設置した。
『……っ!! こ、これだ!! 無闇に人を挟んで怯えさせるのではなく、安全で極上の水槽の中から「人為選択が生み出した奇跡の進化」として、人間たちから称賛とプレミアム飼料を受け続ける……!! これこそが、最強の生存戦略……!!』
平家蟹たちは、自らの存在意義が「ホラー」から「科学的ロマン」へと完璧に再定義されたことに感動し、水槽の中で嬉しそうにハサミを振ってダンスした。
数日後。
そこには、夜の海辺で800年の恨みを語りながら人を海へ引きずり込む迷惑な甲殻類の姿はなかった。
艶消しマットのスマート水槽の中で極上のケアを受けながら、王都の海洋博物館で「王都認定・進化生物学の生きた教材(兼・人為選択のアンバサダー)」として、訪れる子供たちや学者たちから大人気を集めるスター軍団の姿があった。
『カチカチッ!(さあ見てくれ! この見事な遺伝的アルゴリズムの結果を! 古い怨念なんてとっくにアンインストール済みだぜ!)』
元・平家蟹たちは、一切の恨み辛み(バグ)を生むことなく、完璧な水質管理のもとで未来の科学に貢献していた。
「……ゆ、勇者殿。800年の歴史的怨念が……『人為選択の奇跡と称賛され、レガシーシステムを脱却して博物館の人気者』になってしまいましたぞ……」
セバスチャンは、ガラス越しにカニたちにプレミアム飼料を与えながら、その愛嬌のある動きにすっかり夢中になっていた。
【場所:天界・管理室】
『…………』
神ドラマスは、自分の神殿の奥深くで稼働していた、誰も使っていない「何百年も前の古いサーバー(レガシーシステム)」の電源を無言でブチ抜いた。
『平家蟹が……「怨念ではなく人為選択とパレイドリア現象」と指摘され、生物学的に称賛された……』
『800年の恨みは「サポート終了の古いOSへの執着」と怒られ、スマート水槽を与えられて海洋博物館のスターになった……』
ドラマスは、深く、長く息を吐き出すと、もはや「歴史に残る伝説の怨念」すら「進化論の証明とレガシーシステムからの移行遅れ」としてITコンサルのロジックで論破してしまうヒナタに完全降伏し、通販サイトで「艶消しマットブラックの最新型スマート水槽」と「進化生物学の専門書」をポチり、自らの神殿のあらゆる古いシステムを、最新の環境へと完全にマイグレーション(移行)させることを固く誓うのだった。
(第154話・完)
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ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!
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